競合物件分析をAIで回す賃料査定の比較表|管理担当が書く特典と採否の欄
管理担当と店長が、退去の決まった部屋の募集賃料をオーナーに出す前に作る、競合と自社の部屋を並べた比較表が題材です。
退去の決まった部屋に、比較表では周りより安い賃料を付けたのに、内見は入っても申込が決まらないことがあります。原因をたどると、競合の図面の備考に書かれたフリーレントが比較表に入っておらず、入居者が実際に払う額で比べていなかった、ということが起こります。比較表の転記をAIに回すなら、この読み落としが起きる欄をどこで人の手に戻すかを、先に決めておく必要があります。

先に結論
賃料査定の比較表は、図面と成約台帳からの転記と実質月額の計算をAIに任せ、礼金・フリーレント・広告料、割り戻す月数、競合の採否を管理担当が書きます。これらの欄が空の行は実質月額を並べず、オーナーに出す表から外します。
根拠の柱は自社の成約台帳で、募集中の部屋は別の行に分けて平均も別々に出します。成約台帳に特典の欄が無い会社は、比較表をAIで組む前に、直近の成約から欄を足すところから始めます。
提案の後は、申込までの日数が延びた部屋を店長が週ごとに数え、特典の欄が空のまま出していた部屋を管理担当へ戻して比べ直させます。
フリーレントの欄をAIの転記に任せない理由
AIが写せるのは図面の欄に並んだ値で、フリーレントや広告料は備考や賃貸借契約書の特約の文に埋もれていることがあるからです。転記がそこを読み落とすと、その行の実質月額ごと誤るため、比較表の8欄のうち特典・割り戻す月数・採否の3欄は原本を見た管理担当が書きます。
図の要点:賃料査定の比較表の1行に置く8つの欄の見本。募集か成約か、駅と徒歩の分、築年・面積・間取り・階・向き、賃料と管理費はAIが図面と成約台帳から写す。礼金・フリーレント・広告料と、割り戻す月数は管理担当が契約書と退去記録で確かめて書く。実質月額はAIが割り戻す月数で計算し、採否と外した理由は管理担当が書く。人が書く3欄が埋まった行だけ実質月額を並べる。
人が書く3欄が埋まった行だけ、実質月額を計算して並べる
- 募集か成約か
- 成約(自社の成約台帳の行)AI が下書き
- 駅と徒歩の分
- ○○駅 徒歩7分(図面の表示のまま)AI が下書き
- 築年・面積・間取り・階・向き
- 2016年3月・25.1平方メートル・1K・3階・南AI が下書き
- 賃料と管理費
- 80,000円・3,000円AI が下書き
- 礼金・フリーレント・広告料
- 礼金なし・フリーレント1か月(契約書で確認)人が確定
- 割り戻す月数
- 24か月(退去記録で入居期間を確認)人が確定
- 実質月額
- 約76,700円(管理費を除き、割り戻す月数で計算)AI が下書き
- 採否と外した理由
- 採用(同じ間取り・徒歩の差2分)人が確定
【説明用の架空の記入例】図の値は説明のために置いた架空の1行で、実在の物件や推奨する賃料ではありません。
欄を募集図面と成約台帳の両方から埋まるものに絞ったのは、空欄の多い表はオーナーへの説明に使えないからです。割り戻す月数は退去記録で入居期間を見ないと決まらず、採否は駅からの分や間取りの差を見比べて下す判断なので、どちらも図面を写すだけでは埋まりません。
AIに写させるときは、図面にある値だけを置き、無い欄は「要確認」と残させます。頼み方の最初にそう書いておかないと、AIは周りの行から推して空欄を埋めにかかります。徒歩の分を地図から推し量らせないのも、同じ理由です。
成約台帳や賃貸借契約書から写すときは、借主の氏名と連絡先の欄を外して渡します。部屋の条件と賃料だけで、比較表は埋まります。外しても、部屋番号と契約日から自社の台帳で借主に戻せる行は、店の側では個人データのままなので、渡す先の規約で扱いを確かめます。どの台帳をどこまで渡せるかは、帳票ごとに外部のAIへ入れてよい欄を決める表で先に決めておけます。
競合物件分析の根拠は成約に置き、募集は別の行に
比較表の根拠の柱は、自社の成約台帳に置きます。募集賃料はポータルや募集図面に出した希望の値で、まだ決まっていない値だからです。
募集中の値には偏りもあります。決まらない部屋ほど、同じ賃料のまま掲載が長く残ります。募集は「いま並んでいる相手」として別の行に分け、平均も募集の行と成約の行で別々に出します。混ぜた平均は、決まらない部屋の高めの賃料に引っ張られます。
成約賃料は、礼金やフリーレントの条件と組にして残さないと、後から比べる材料になりません。成約台帳に特典の欄が無く、条件が賃貸借契約書にしか無い会社なら、比較表をAIで組むより先に、直近の成約から特典の欄を台帳に足します。
売買の査定書でも、成約事例の欄が欠けると下書きは外れます。見分け方は外れた原因を根拠欄から見分ける表にあります。
募集賃料と価格査定の工程には、自動で査定額を出すサービスや、相場と履歴を集めるサービスも出回っています。画面で比較相手の部屋まで辿れるなら、その部屋を比較表の行に移して根拠に回せます。辿れないなら、査定額は目安の1行として表の外に置きます。オーナーに「なぜこの賃料か」と聞かれたとき、答えになるのは比べた部屋の行だからです。
特典は契約の月数で割り戻して実質月額で比べる
フリーレント・礼金の付いた募集は、契約の月数で割り戻した実質月額の列で比べます。この比較表では、契約期間に払う賃料の合計に礼金を足し、契約の月数で割った値を実質月額とします。
表の上で高く見える部屋が、実は安いことがあります。仮に、賃料80,000円でフリーレント1か月の部屋を2年契約で見ると、払う賃料は23か月分の1,840,000円です。月に直すと約76,700円で、仮に置いたフリーレントの無い77,000円の部屋と比べると、入居者の負担はこちらが軽くなります。
割り戻す月数は、管理担当の判断が入る計算です。2年契約なら24か月で割るのが素直ですが、単身向けで入れ替わりの早い建物では、実際の入居期間はもっと短いことがあります。その建物の退去記録で入居期間を確かめ、短ければその月数で割った値も横に並べます。短い月数で割るほどフリーレント1か月の重みは大きくなり、付けるかどうかの話をオーナーの手取りの数字で進められます。
駅からの徒歩の分も、そろえてから比べます。募集図面の徒歩の分は、不動産の表示に関する公正競争規約の施行規則にしたがい、道路距離80メートルを1分として出した値のはずです。地図で道路距離を測り直した行は、同じ決まりで分に直してから並べます。
フリーレントを見落として出した提案のやり直し方
やり直すのは、部屋を受け持つ管理担当です。空だった競合の特典の欄を原本で開き直し、実質月額を計算し直した比較表で、オーナーに説明し直します。
見落としは、内見は入るのに申込が決まらない部屋に表れます。比べ直すと、競合にフリーレントが付いていて、実質では競合のほうが安かった、という形です。
オーナーへの説明で避けたいのは、賃料だけを下げ直す提案です。実質で負けている理由が特典なら、賃料を据え置いてフリーレントを付ける組のほうが、契約期間を通じた手取りの減りが小さい場合があります。どちらが小さいかは、割り戻しの列を並べれば、オーナー自身が比べられます。
比較表の余白には、空欄だった列と開き直した日を書きます。次の査定で同じ列が空なら、提案に進まない目印になります。続けてよいかを決める数は、申込までの日数が延びた部屋のうち、特典の欄が空のまま提案していた部屋の件数です。たとえば、ひと月続けて0件なら比較表を更新の話し合いにも持ち込み、1件でも出た週は、実質月額をAIに計算させる前に成約台帳の特典の欄を埋め直します。
自社管理の部屋を競合に入れるかはオーナー構成で決まる
入れるかどうかは、管理物件のオーナー構成で逆になります。1棟を1人のオーナーが持つ建物では、自分の部屋どうしで賃料を下げ合う提案になりかねません。部屋ごとにオーナーが違う分譲マンションを多く預かる会社なら、条件の最も近い行が手に入り、根拠が厚くなります。
どちらにするかは、比較表の列の定義に1行書いておきます。担当が替わっても、オーナーへの説明が食い違いません。
管理担当が2人以上いる会社では、競合に採る範囲も列の定義として、比較表を組む前にまず書きます。駅から何分まで、築年の差は何年まで、同じ間取りに限るか。1人で回している会社なら、範囲は本人の中でそろっているため、書き出すのは引き継ぎのときで間に合います。
扱う部屋の種類でも、要る列が変わります。駅前の単身向けは競合の数が多く、徒歩の分と築年で絞れば足ります。家族向けは競合が少ないぶん、駐車場の有無や広さの差を補う列が要ります。
採否を残した比較表は更新の賃料改定でも開ける
募集のときに採否を残した比較表は、数年後の更新で賃料を見直す話し合いでも開き直せます。借地借家法第32条第1項は、建物の借賃が近傍同種の建物の借賃に比べて不相当となったときなどに、当事者が将来に向かって増減を請求できると定めています。
一方、価額の意見に根拠を求める宅地建物取引業法第34条の2第2項は、売買と交換の媒介契約の条文です。空いた部屋の募集賃料をオーナーに提案する場面は、この条の対象の外にあります。条文が求めていなくても管理担当が根拠の行を残す理由は、この更新の場面にあります。
比較表の列の定義と転記の仕組みは、管理担当だけで作れるか
管理担当が1人で、成約台帳に特典の欄がすでにある会社なら、列の定義もAIへの頼み方も本人の手元で直せます。外部の支援を考え始めるのは、管理担当が店をまたいで何人もいて、競合に採る範囲と割り戻す月数の決め方を本部が列の定義として配るときです。
届く募集図面の書式がまちまちな会社では、備考と特約の読み取りから成約台帳への転記までを仕組みにする必要が出ます。この読み取りと転記の工程を組むのは、AIエージェント開発が受け持てる仕事です。
列の定義を見直すのは、同じ部屋で2人の管理担当が別々に組んだ比較表の採否が食い違ったときです。駅からの分・築年の差・間取りのどの行で割れたかを確かめ、その範囲を列の定義に書き足します。
明日から始める3ステップ
担当 管理担当
比較表より先に、直近の成約から礼金・フリーレント・広告料の欄を成約台帳に足し、賃貸借契約書の特約を見て埋める
次へ進む目安次に退去が決まった部屋の周りの成約で、特典の欄がどの行も埋まっている
担当 店長
比較表の列の定義に、競合に採る範囲(駅からの分・築年の差・間取り)と、同じ建物の自社管理の部屋を入れるかを1行ずつ書く
次へ進む目安次の比較表を2人の管理担当が別々に組み、採った行が一致した
担当 店長
週に1回、募集開始から申込までの日数が延びた部屋を数え、特典の欄が空のまま提案した部屋を管理担当へ戻す
次へ進む目安戻す部屋が0件の月が出たら、比較表を更新の賃料改定の話し合いにも持ち込む
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作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問生成AI研修
出典
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第34条の2第2項e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 借地借家法(平成3年法律第90号)第32条第1項e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 国土交通省「不動産媒介(売買・賃貸借)業務において活用されるデジタルサービス一覧」国土交通省 確認日 2026.09.28
- 不動産の表示に関する公正競争規約施行規則 第9条第9号(徒歩による所要時間)不動産公正取引協議会連合会 確認日 2026.09.28
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