この記事の要点
- 面談メモや音声からの記録起こしと、優先条件の並べ替えはAIに渡せます。
- 条件の確認と提案の方針、外部へ出す情報の範囲は営業担当と会社が決めます。
- 本メディアでは、記録の型を5項目に絞ってから始めるべきだと判断します。
ヒアリングを先に分解する理由は、ここで落ちた情報が後工程の全部に効くからです。時間は1件あたりの記録時間と面談から提案までの日数で測り、金は古い条件のまま提案して流れた案件の数で見ます(どちらも水準は置かず、自社の直近ひと月で測る前提として置きます)。リスクは録音の扱いで、面談には氏名・勤務先・家族の事情が入るため個人情報の保護に関する法律の対象になります。総務省「令和8年版 情報通信白書」では、業務類型別で「議事録・メール作成補助」の活用割合が約7割と示されており、記録起こしは性質の近い仕事です。
初回面談で「駅近は外せない」と言っていた顧客が、内見を重ねるうちに広さを優先し始める。顧客の条件は動くもので、動いた事実がどこにも残らないのが問題です。
条件の変化を追えないと、提案が過去の条件のままになります。記録を残す仕事を軽くすれば、提案の精度は自然に上がります。

ヒアリング記録とは何を残すもので、どこで失われるのか?
範囲を決めます。この記事でいうヒアリング記録とは、初回面談や内見時に聞いた希望条件を記録に起こし、優先順位を整理して顧客管理へ残すまでの成果物です。物件の提案と内見の調整は後工程として扱いません。
要点は三つです。
- ヒアリングは6工程に割れ、AIが担えるのは起こす・並べ替える・抜き出す・漏れを示すの4種類です。
- 聞き取りそのものと条件の確定は営業担当に残り、表情や言いよどみはAIに渡せません。
- 着手は記録起こしからで、2週間で測るのは記録の作成率・記録時間・面談から提案までの日数です。
担当は営業担当、起点は初回面談と内見です。入力は面談メモ・音声と、反響時に届いた希望条件で、出力はヒアリング記録と条件整理表になります。使うのは顧客管理(ツールまたはExcel)、物件台帳、面談メモ、録音です。
面談の件数と記録にかかる時間は、店舗の人数と来店数で変わります。数値は置かず、測る単位だけを表に示します。来店数が違えば、着手の順番も変わります。
面談の設定から条件更新までを6工程に割る
ヒアリングは「話を聞く」の一語に見えますが、着手から更新までを並べると6工程になります。量と時間の欄は公的統計に無いため、自社で測る単位だけを入れています。
- 1面談の場を設けるAIと人
- 2希望条件を聞き取るAIと人
- 3メモ・音声を記録に起こすAIと人
- 4優先条件と譲れる条件に整理するAIと人
- 5顧客管理へ登録し台帳と紐づけるAIと人
- 6条件の変化を追い記録を更新するAIと人
AIが担える人が決める
1
面談の場を設ける
担当: 営業担当 / 使うもの: 反響一覧、担当の予定表 / 量・時間: 反響から面談までの日数
- AIが解決すること
- 反響の内容から面談で聞く項目を用意する
- 人が決めること
- 面談の日程と担当
- 詰まるところ
- 予定が埋まり先延ばしになる
- 失敗したときの損失
- 聞き漏らしで再訪が要る
2
希望条件を聞き取る
担当: 営業担当 / 使うもの: 面談メモ、ヒアリングの項目 / 量・時間: 1件あたりの面談時間
- AIが解決すること
- 入れない(対面のやり取りそのもの)
- 人が決めること
- 聞く順番と深さ
- 詰まるところ
- 聞く項目が担当ごとに違う
- 失敗したときの損失
- 本音の条件に届かない
3
メモ・音声を記録に起こす
担当: 営業担当 / 使うもの: 面談メモ、録音、顧客管理 / 量・時間: 1件あたりの記録時間
- AIが解決すること
- メモや音声を決めた項目ごとの記録に起こす
- 人が決めること
- 記録内容の確認
- 詰まるところ
- 帰社後に回され忘れる
- 失敗したときの損失
- 記録が残らず記憶頼みになる
4
優先条件と譲れる条件に整理する
担当: 営業担当 / 使うもの: 条件整理表 / 量・時間: 整理にかかる時間
- AIが解決すること
- 条件を譲れる順に並べ替えて整理表にする
- 人が決めること
- 優先順位の確定
- 詰まるところ
- 優先順位が本人にも曖昧
- 失敗したときの損失
- 提案の軸がぶれる
5
顧客管理へ登録し台帳と紐づける
担当: 営業担当 / 使うもの: 顧客管理、物件台帳 / 量・時間: 登録までの日数
- AIが解決すること
- 顧客IDと物件IDの紐づけの抜けを挙げる
- 人が決めること
- 登録内容の確定
- 詰まるところ
- 顧客IDと物件IDが結ばれない
- 失敗したときの損失
- 過去の対応履歴が引けない
6
条件の変化を追い記録を更新する
担当: 営業担当・店長 / 使うもの: 顧客管理、対応履歴 / 量・時間: 更新の頻度
- AIが解決すること
- 内見後のやり取りから条件の変化を抜き出す
- 人が決めること
- 条件を更新するかどうか
- 詰まるところ
- 内見後の変化が残らない
- 失敗したときの損失
- 古い条件のまま提案し続ける
AIで消える工程:第3工程の書き起こしです。帰社後に記憶をたどって打ち込む時間が無くなります。
短くなる工程:第1・第4・第6工程です。聞く項目の用意、条件の並べ替え、変化の抜き出しが先に出そろいます。
新しく増える確認工程:第3工程の直後です。起こした記録を営業担当が読んで確定させる確認が加わります。本メディアでは、確定前の記録を提案の材料に使わないと決めるべきだと判断します。
図の見方は、色枠がAIの担う工程、灰色が営業担当が確定する工程、二重枠がその両方です。右上の三角は、落ちやすい工程を指します。
記録起こしは渡せても、条件の確認をなぜ人が行うのか?
工程を割ると、線の引き方が決まります。起こす・並べ替える・抜き出すは作業なのでAIへ、確認する・提案の軸を決めるは判断なので人に残ります。
境目で効くのは第2工程です。顧客が口にした条件と、実際に動く条件は違います。表情や言いよどみから本音を読むのは対面の仕事で、ここにAIは入りません。
第3工程には別の注意があります。面談の録音に含まれる情報は個人情報保護法の対象です。録音の同意、外部のサービスへ渡す範囲、保存の期間を先に決めます。
総務省「令和8年版 情報通信白書」は、業務類型別で「議事録・メール作成補助」の活用割合が約7割、導入効果を実感した割合も同じ類型で約7割と示しています。記録起こしは近い性質の仕事ですが、不動産のヒアリングそのものの値ではありません。自社で測って置き換えます。
着手するのは第3工程の記録起こしです
着手する工程は、判断か作業か、データが揃っているか、失敗の損失がどれくらいかで選びます。この3点を当てると第3工程が残ります。
第3工程は作業で、入力は面談メモか音声です。誤っても記録を直せば済み、顧客に届く前に気づけます。反対に第2工程は判断と関係の仕事で、AIを入れる工程ではありません。
録音の同意が取れない会社なら、第3工程はメモからの起こしに限ります。メモが箇条書きで残っているなら、それだけでも項目ごとの記録に起こせます。メモも残らない会社なら、聞く項目を5つに絞るところが先です。
2週間で追うのは記録率と提案までの日数
試行は6つの段で回ります。
- 直近ひと月の面談を数え、記録の作成率、1件あたりの記録時間、面談から提案までの日数を記録します。
- 記録に残す項目を5つに固定します。エリア、予算の幅、入居や引渡しの時期、人数、譲れない条件です。
- 録音の同意と保存の期間を決めます。同意が取れない面談はメモからの起こしに回します。
- 面談後に営業担当がメモか音声を渡し、AIが項目ごとの記録に起こします。担当が読んで確定させます。
- 記録された面談と、されなかった面談を毎週数えます。残らない曜日が見えてきます。
- 2週間後に同じ3つの数字を並べ、続けるか項目を減らすかを決めます。
測る3指標は、時間・誤り・発見時期に対応します。記録時間が時間、記録の作成率が抜けの出方、面談から提案までの日数が結果の出方です。同じ担当の前後で比べると、差が読めます。
本番で決める保存の範囲と承認
承認は第3工程の確定です。営業担当が起こした記録を読んで確定させる形を動かしません。下書きのまま提案に回すと、誤りが条件整理表へ残ります。
記録は、元のメモか音声、起こした記録、確定版、確認者、日付を残します。保存の期間と削除の方法も同時に決めます。顧客から開示や削除を求められたときに応じられる形にしておきます。
例外は先に決めます。相続、離婚、勤務先の事情が絡む面談は、要約の対象から外して担当が直接書きます。言葉の選び方で意味が変わる領域だからです。
条件が整理されても提案が外れるのはなぜか?
起きやすい失敗は、記録は整ったのに提案が外れることです。原因は、第6工程の更新が回らず、初回の条件のまま提案し続けることにあります。内見の後は条件が動くという前提を運用に入れていない会社で起きます。
防ぎ方は、内見の直後に条件の変化を拾う工程を固定することです。変化が無い場合も「変化なし」と記録します。空欄と「変化なし」は別の情報です。
本メディアでは、残す項目を5つに固定してから記録起こしを始めるべきだと判断します。理由は、項目を決めずに会話を要約させると案件ごとに粒度が変わり、店長が並べて読めないからです。前提は、聞く項目が会社として揃っていることです。揃っていない会社なら、面談の項目表を作るところが先になります。
本メディアでは、条件整理の結果から物件を機械的に当てて提案することは勧めません。理由は、条件の優先順位が面談の中で動き、記録は時点のものでしかないからです。前提は、提案の前に営業担当が条件を確かめられることです。確かめる時間が取れない体制なら、抽出は候補の提示までに留めます。
音声を外部へ出せない会社の進め方
ヒアリング記録にAIを入れない方がよい条件は三つです。録音の同意の取り方が決まっていない会社、顧客管理が無く記録の置き場所が無い会社、聞く項目が担当ごとに違う会社です。
この状態でAIを足すと、起こした記録の置き場所がなく、確認だけが増えます。同意と置き場所と項目の3つが決まれば、記録起こしは最初の1業務として回しやすい工程になります。
出典
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」生成AIの業務利用状況 総務省 確認日 2026.09.22
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22


