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契約・重要事項

不動産の売買契約書のAI下書きで崩れる特約の数字|10分の2と2年

自社が売主の買取再販と仲介を兼ね、前の案件の控えを手本に売買契約書を作っている不動産会社の、契約事務と宅建士の分担を扱っています。

前の案件で問題なく使えた特約は、次の契約の下書きにも手本として渡せそうに見えます。けれども業者が自ら売主で買主が個人の売買には、違約金と手付に代金の10分の2、契約不適合の責任に引渡しから2年という限度があり、業者間の控えはその限度を前提にしていません。下書きをAIに回す前に店で決めるのは、限度にかかる行を誰が読み、控えをどう分けておくかの2点です。

契約・重要事項 更新 8分 運営 株式会社BoostX

売買契約書のAI下書きは、特約の条文の限度を照らすところまで

先に結論

売買契約書の下書きでは、申込書と承諾条件の値の転記と、同じ種類の控えからの特約の候補出しをAIに回せます。違約金と手付の10分の2、契約不適合の引渡しから2年の行は、AIの印が付いたかどうかを問わず宅建士が数字で読みます。

取引を「業者が売主」「業者間」「売主が業者でない」に振り分けるのは宅建士で、候補が売主と詰めた条件に合うかは営業担当が確かめます。37条書面の交付は業者の義務で、宅建士の法定の役目は記名です。渡す人を記名した宅建士にするのは、店の決まりとして決めます。

手付解除や契約不適合でもめた後の合意書は、控えから候補を並べさせる対象に入れず、宅建士が弁護士へ回します。作成ソフトの文例がそろい、売主が宅建業者の取引を扱わない店は、文例を使い込むほうが先です。

業者間の控えを手本にすると特約の数字が限度を超える

業者間の買取の控えには、10分の2や2年の限度がかからない取引として書かれた違約金や契約不適合の条が入っていることがあります。申込書の受理から記名までの8つの工程では、宅建士が取引を3つの種類に振り分ける工程を最初に固め、特約の候補は同じ種類の控えだけから出させます。

図の要点:契約事務・宅建士・生成AI・営業担当の4者が受け持つ8つの工程。契約事務が申込書と承諾条件、登記事項証明書をそろえ、宅建士が取引を業者が売主・業者間・売主が業者でないの3種類に振り分ける。生成AIが値を様式の各条へ写し、同じ種類の控えから特約の候補を並べて10分の2超と2年未満に印を付ける。営業担当が候補を売主と詰めた条件と照合し、生成AIが重説と契約書の食い違いを一覧にする。宅建士が違約金・手付・契約不適合の行を数字で読み、記名して交付する。

取引の種類を先に決め、同じ種類の控えだけから特約の候補を出す

契約事務

宅建士

生成AI

営業担当

  1. 契約事務

    申込書・承諾条件・登記事項証明書をそろえる

    足りない書類は売主側へ催促

  2. 宅建士

    取引を3つの種類のどれかに振り分ける

    業者が売主/業者間/売主が業者でない

  3. 生成AI

    申込書と承諾条件の値を様式の各条へ写す

    前の案件の物件名が残る欄に印

  4. 生成AI

    同じ種類の控えから特約の候補を並べる

    10分の2超と2年未満に印

  5. 営業担当

    候補が売主と詰めた条件と合うか確かめる

    戻す違う候補は外し理由を書く

  6. 生成AI

    重説と契約書の金額・期日の食い違いを一覧に

    どちらを直すかは書かせない

  7. 宅建士

    違約金・手付・契約不適合の行を数字で読む

    戻す限度を超える特約は案から外す

  8. 宅建士

    記名した書面か、宅建士を明示した電磁的方法で渡す

    交付は業者の義務・渡す人は店の決まり。直した行の数を案件表の列へ

自社の控えの一覧で、業者間の買取の控えが何本あるかをまず数え、2つ目の工程の振り分けを受け持つ宅建士を決めます。賃貸の契約書(第37条第2項)は記載事項が少なく、上の流れのうち特約の限度を確かめる工程がありません。

生成AIが印を付けなかった候補も、違約金・手付・契約不適合の行は宅建士が数字で読みます。10分の2を「2割」や金額で書いた特約は、AIに印を付けさせる条件に当てはまらないまま残ることがあるからです。

特約の候補を出させるときの材料は、合意条件の一覧と使う様式、それに同じ種類に区分した過去の特約文です。控えに無い言い回しを新しく作らせないことを、指示の最初に置きます。

当事者の氏名と住所の欄は下書きでは空けておき、契約事務が申込書から写す形にすれば、生成AIに渡す材料から個人の情報を減らせます。物件の所在や契約日から当事者に戻せる材料は残るため、個人データとして扱う点は変わりません。

申込書をそのまま外部の生成AIに読ませる店は、規約を先に読みます。事業者が申込書の中身を取り扱わない旨を契約で定め、アクセスも制限されているなら、提供に当たりません。扱う定めなら、契約事務の目的に限って預ける委託に当たるかを規約の条項で読みます。当たれば店が預け先を監督し、当たらなければ第三者提供として買主の同意を取ります。

国外の事業者には第28条も関わります。見分ける順は商談の録音をAIに回すときの判断と共通です。

不動産の契約書AIは、下書きとレビューのどちらに使うか?

作成ソフトの様式で作る売買契約書なら、先に役立つのは下書きです。条項の骨組みは様式が持っていて、崩れやすいのは各条に入る値と、様式の外に足す特約の2か所だからです。

レビューは、出来上がった契約書をサービスにかけて抜けや不利な条項を挙げさせる使い方です。合うのは、様式の無い覚書や、相手方が用意した契約書を受け取る場面です。相手方から戻ってきた修正版なら、前の版と条ごとの差分を並べさせるだけでも、どこが変わったかを目で追う時間が減ります。

国土交通省が媒介業務のデジタルサービスを業務の工程ごとに並べた一覧にも、契約関連書類の案文作成(一部自動入力)が載っています。案文の側から入るサービスがすでにある以上、店で詰めておく点は、どの工程の値を誰が確かめるかです。

作成ソフトの特約欄に文例がそろい、売主が宅建業者の取引を扱わない店なら、生成AIに候補を探させる段階に向きません。文例を使い込むほうが早く済みます。数字の限度を確かめる作業が要るのは売主が業者の契約で、個人の売主と買主を仲介するだけの店にはその仕事が生じないからです。

37条書面の記載事項と、業者が売主の特約の限度

37条書面では、定めがあるときに書く金銭・解除・違約金などの事項を生成AIに印を付けさせる対象にし、書面には宅建士が記名します。このうち違約金・手付・契約不適合の特約には、業者が自ら売主で買主が業者でないときだけ、数字の限度がかかります。

定めがあるときに書く事項をAIの印の対象にし、宅建士が記名する

宅地建物取引業法第37条第1項は、売買契約を結んだ業者に、記載事項を書いた書面を遅滞なく交付させます。渡す先は、自ら当事者なら相手方、媒介なら契約の各当事者です。

必ず書くのは、当事者の氏名と住所、物件を特定する表示、代金とその支払の時期と方法、引渡しの時期、移転登記の申請の時期です。既存の建物なら、構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項も入ります。

代金以外の金銭、解除、損害賠償額の予定や違約金、ローンが成立しないときの措置、天災の負担、契約不適合の責任、公租公課の負担は、定めがあるときに書く事項です。案件ごとに変わる額と期日は、この後ろの群に入ります。

書面を作ったら、業者は宅建士に記名させます(第3項)。相手方の承諾を得れば、書面に代えて電磁的方法で提供でき、そのときは交付したものとみなされます(第4項)。省令は、その方法の基準として、相手方が出力して書面を作れること、記載事項が改変されていないかを確かめる措置、交付に係る宅建士が示されることを挙げています。

交付前に確定させた電子の書面は、AIに読ませて誤記が見つかっても、その場で直させません。直すなら確定前の案に戻り、宅建士が読み直してから確定し直します。重要事項説明書の欄を原資料と突き合わせる作業は、重説の10欄の分け方と記名前の照合に続きます。

業者が売主の特約にある数字の限度は10分の2と2年

限度がかかるのは、業者が自ら売主になり、買主が業者でない売買契約です。第78条第2項は、第37条の2から第43条までを、宅地建物取引業者どうしの取引には適用しないと定めています。

特約 業者が自ら売主・買主が業者でないとき 業者間・売主が業者でない取引
違約金・損害賠償の予定(第38条) 合わせて代金の10分の2まで かからない
手付の額(第39条第1項) 代金の10分の2まで かからない
手付による解除(第39条第2項・第3項) 買主に不利な特約は無効 かからない
契約不適合の責任(第40条) 不利な特約は不可・引渡しから2年以上は可 かからない

「業者が自ら売主・買主が業者でないとき」に当たる契約だけ、宅建士が違約金と手付の行を代金の額と割り算して確かめます。業者間や売主が業者でない取引で同じ手間をかける必要はなく、振り分けを誤ると確かめる相手を取り違えます。

業者どうしの取引で外れる条には第38条から第40条が含まれますが、第37条の書面は残ります。ローンのあっせんの定めがあれば、成立しないときの措置も、数字の限度こそ無いものの書面に書く事項です。

第38条第2項は、10分の2を超える部分だけを無効とします。定め全体が消えるのではなく、超えた分が効力を持たない形です。解除の場面で初めて気づくと、請求する違約金の額が契約書の数字と食い違い、買主との話がこじれます。

前の案件の控えの取り違えにAIの印は付かない

前の案件の契約書を手本に渡すと、物件名や引渡し日のように案件ごとに変わる値が、印の付かないまま残ることがあります。控えの文章が整っているほど、読み手は数字と固有名詞を読み飛ばします。

仮に、前年の業者間の買取の契約書が、区分の付かないまま候補に使う控えに入っていたとします。その違約金の条が代金の10分の2を超える割合で書かれていれば、自社が売主の個人向けの契約でも候補の先頭に来かねません。前に通った文言だからと宅建士が数字を読み飛ばせば、そのまま記名に進みます。

見つかったら、記名した宅建士が、同じ控えを出どころにした候補を使った契約を、案件表に残した契約番号で洗い直します。違約金の条の扱いは買主に説明し直し、その控えは候補に使う控えから外して、外した日と理由と業者間の区分を控えの一覧に書き足します。

条文や様式が改まったら特約の控えを見直す

第40条は、民法第566条に規定する期間を引用したうえで、引渡しから2年以上とする特約だけを例外にしています。民法の側が改まれば、宅地建物取引業法の条文が同じでも、AIに印を付けさせる基準が変わります。作成ソフトの様式が改訂されたときも、候補に使う控えと様式の条番号がずれるでしょう。

控えの一覧には、特約文ごとに「引いた条文」と「使った様式の版」の列を持たせておきます。改正や様式の改訂の知らせが届いた日に、その2列から見直す文言を探せるからです。見直した控えだけを候補に使う控えへ戻し、戻すまでの間はその特約を候補から外します。改正の知らせを受け取る係と2列を直す係は、宅建士の中で先に決めておきます。

【説明用の架空の記入例】特約文: 違約金は売買代金の100分の30とする/区分: 業者間/引いた条文: 宅地建物取引業法第78条第2項(第38条が適用されない取引)/使った様式の版: 自社様式の第3版/候補に使う範囲: 業者間の取引だけ。自社が売主で買主が個人の契約には使わない

限度の数字に関わる行で直しが1件でも出た案件は、記名をいったん止め、別の宅建士がその行だけをもう一度読んでから記名します。翌営業日に回すなど、読み直す宅建士が決済日の都合に押されずに読める時間を取ります。

同じ控えから直しが続くときは、宅建士がその控えを候補から外し、区分と引いた条文の列を付け直します。限度に関わる行の直しが0件のまま一定の期間(たとえば3か月。長さは宅建士どうしで決める)続いたら、区分を付けた控えをほかの宅建士にも広げます。

手付解除でもめた後の合意書は弁護士へ回す

いつもの売買契約書の下書きと、手付解除や契約不適合で買主ともめた後の合意書づくりは、分けて扱います。後者は争いのある中身をどう書面にするかという仕事で、控えから候補を並べさせる対象に入れません。法務省は令和8年8月21日、生成AI等を使った法務業務支援サービスについて、令和5年のガイドラインを補う新しいガイドラインを出しました。

争いがあるかどうか、いわゆる事件性は、契約の目的や当事者の関係、契約に至る経緯などの事情を考えて、個別の事案ごとに判断されるとしています。同じガイドラインは、法的紛議が現に顕在化している案件などで和解契約書のような書面を作ることを、事件性のある法律事務に当たると考えられる例に挙げています。

ガイドラインはサービスを提供する側についての整理ですが、店の側でも、争いの見えない決済日の変更の覚書と、もめた後の合意書は分けておけます。迷ったら宅建士が弁護士に回すと決めておけば、現場がAIの候補を見てその場で判断せずに済みます。

買取再販の本数が増えたら、様式への転記を仕組みにする

買取再販の本数が増えると、申込書と承諾条件の値を様式へ写す作業と、重説と契約書の金額・期日を突き合わせる作業が、案件ごとの手作業として積み上がります。この2つの作業を作成ソフトの入出力に合わせて組む仕事は、AIエージェント開発の対象になります。

控えの区分付けは、この開発の外に置きます。控えのどれが業者間の取引で書かれたものかは、契約の当事者を読んだ宅建士が決めます。AIの印が付かなかった「2割」のような書き方を、印を付ける条件へ足していく見直しは、宅建士とAI顧問で進める形が取れます。

自社が売主の契約が月に数件の店は、転記を仕組みにするほどの量ではありません。区分を付けた控えを汎用の生成AIに添える形から始めます。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 宅建士

    控えの一覧に「業者間」「一般の買主」の区分の列を足し、手元の特約の控えに1本ずつ区分を付ける

    次へ進む目安区分の付いていない控えが、候補に使う控えに1本も残っていない

  2. 担当 契約事務

    次の自社売主の案件で、申込書と承諾条件の値を様式へ写す下書きを回し、当事者の氏名と住所の欄は空けたまま宅建士の確認に回す

    次へ進む目安下書きに前の案件の物件名や引渡し日が残っていないことを、1件ずつ確かめて渡せた

  3. 担当 記名する宅建士

    記名の前に直した行の数と、そのうち第38条〜第40条の限度に関わる行の数を、案件ごとに案件表の列へ入れる

    次へ進む目安限度に関わる行の直しが0件のまま、宅建士どうしで決めた期間(たとえば3か月)が続いたら、区分を付けた控えをほかの宅建士も使う

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出典

  1. 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第37条第1項・第37条第2項〜第4項・第38条(損害賠償額の予定等の制限)・第39条(手付の額の制限等)・第40条(担保責任についての特約の制限)・第78条第2項(適用の除外) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  2. 宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)(第16条の4の12第2項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  3. 法務省「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」(令和8年8月21日)(事件性の判断・注13) 法務省大臣官房司法法制部 確認日 2026.09.28
  4. 国土交通省「不動産媒介(売買・賃貸借)業務において活用されるデジタルサービス一覧」(資料[1]) 国土交通省 確認日 2026.09.28
  5. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
  6. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条・第27条第1項・第5項第1号・第28条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28

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