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契約・重要事項

重要事項説明書をAIで下書きする10欄の分け方|宅建士に残る記名と説明

売買の重要事項説明書を契約前にまとめて作り、転記の残業が続く不動産会社で、宅建士と契約事務と店長がAIに回す欄を決める場面の話です。

宅地建物取引業法は、説明書を交付して説明することを宅建士にさせる義務を業者に課し、宅建士には記名を求めていますが、下書きを誰が書くかまでは定めていません。転記をAIの下書きに回す余地はそこにある一方、店で線を引かないまま使い始めると、前回の説明書の金額が新しい書面に残るような誤りも防げません。

契約・重要事項 更新 9分 運営 株式会社BoostX

重要事項説明書のAI下書きと、宅建士が1欄ずつ照らす原資料

先に結論

重要事項説明書の作成でAIに任せられるのは、登記事項証明書や役所調査メモから欄へ写す下書きと、空欄や資料の食い違いの一覧までです。写した値には必ず資料名とページを添えさせ、宅建士が記名前に全欄を原本と照合します。

宅建士証を示した説明と書面への記名、質疑への回答は宅建士が担い、電子で提供する場合も変わりません。抵当権の抹消の予定、制限の当てはめ、滞納や大規模修繕の読み取りの欄も宅建士が判断して書きます。

管理費と修繕積立金の欄は前回の説明書から写させず、報告書が届くまで空けて返させます。転記と一覧のどちらから始めるかは、役所調査メモが説明書の欄の順にそろうかで選びます。

重要事項説明で宅建士にしか残せないのは記名と説明

第35条が宅建士本人の手に置いているのは、宅建士証を示して説明することと、交付する書面に記名することです。義務を負うのは宅地建物取引業者で、契約が成立するまでの間に、宅建士をして、記載事項を書いた書面を交付して説明させなければなりません。

記載事項は、登記された権利、法令に基づく制限の概要、私道の負担、飲用水・電気・ガス・排水の施設の整備状況などです。区分所有建物なら、管理や使用に関する事項が加わります。

条文 宅建士本人に置かれた行為 相手方が宅建業者のとき
第1項・第4項 宅建士証を示して説明する 説明と証の提示は要らない
第5項・第7項 交付する書面に記名する 記名は残る
第8項・第9項 承諾を得て電磁的方法で提供する 提供するのは業者

下書きを誰が書くかは、表のどの項にも書かれていません。欄への転記を下書きに回す余地は、この点にあります。

第35条の2の供託所等の説明は、業者に説明を求める条文で、宅建士がするとは書かれていません。説明書の様式にこの欄を設けている店なら、会社の登録事項から写す欄として下書きに入れられます。

第47条第1号が業者に禁じるのは、第35条第1項各号の事項などを故意に告げないことや、不実のことを告げることです。当たる場面は、契約の締結について勧誘をするときと、申込みの撤回や解除、取引で生じた債権の行使を妨げるときです。下書きをAIが作っても、書面の中身の責任を負うのは業者と記名した宅建士なので、照合を省く理由にはなりません。

IT重説と電磁的交付でも説明と提供は宅建士

第35条第8項は、相手方の承諾を得たうえで、記載事項を宅建士に電磁的方法で提供させることができるとしています。提供するのは宅建士のままです。このとき第5項の記名は適用されず、省令の措置で交付に係る宅建士を明示します。省令は、相手方が書面に出力できること、改変の有無を確かめられる措置があること、交付に係る宅建士が明示されることを、その方法の基準に挙げています。

オンラインで説明する場合も、宅建士証を示し、質問にその場で答えるのは同じ宅建士です。紙で渡しても電子で届けても、下書きと照合の位置は動きません。変わるのは送付の段取りで、承諾の取り方と送付の記録は契約事務の仕事になります。

重要事項説明書の下書きは欄ごとに資料名とページを付ける

下書きをAIに作らせるなら、写した値の横に資料名とページを必ず添えさせます。区分所有建物の売買の説明書では、資料から写せる欄と、写しても宅建士が読んで説明の言葉に直す欄が交互に並びます。

図の要点:区分所有建物の売買の重要事項説明書の下書き10欄。登記された権利、用途地域・建ぺい率・容積率、飲用水・電気・ガス・排水、管理費・修繕積立金、解除・違約金、供託所等の6欄は、資料名とページを付けてAIが写す。抵当権の抹消の予定、制限の当てはめ、滞納・大規模修繕の予定、記名の4欄は宅建士が書く。管理費の欄は報告書が届く前は空欄のまま。

資料名とページの無い欄と「人」の欄から、宅建士が原本を開く

登記された権利(第1号)
抵当権と登記名義人(証明書のページと取得日)AI が下書き
抵当権の抹消の予定
決済日に抹消する旨(売主と金融機関に確認後)人が確定
用途地域・建ぺい率・容積率(第2号)
役所調査メモの値(窓口と日付を併記)AI が下書き
再建築や増築への制限の当てはめ
窓口の回答と都市計画図から宅建士が書く人が確定
飲用水・電気・ガス・排水(第4号)
上下水道の台帳写しと供給事業者の回答AI が下書き
管理費・修繕積立金(第6号)
調査報告書の金額と発行日(届く前は空欄)AI が下書き
滞納・大規模修繕の予定
報告書を宅建士が読み、説明の言葉に直す人が確定
解除・違約金(第8号・第9号)
売買契約書の案の条番号と金額AI が下書き
供託所等(第35条の2)
保証協会の名称と所在地(会社の登録事項)AI が下書き
記名
全欄を原本と照合した宅建士が記名する人が確定

「AI」の欄も、宅建士が原本と照合する対象から外れません。資料名とページの付いた欄は照合が速く終わるだけで、確かめる欄の数は下書きを入れる前と同じです。

「登記事項証明書の2ページ」のように資料名とページが付いていれば、宅建士は記名前にそのページを開き、値を確かめれば足ります。付いていない欄は、どの資料から来た値かが分からず、資料を最初から探し直すことになります。空欄を推し量って埋めた値や、制限に当たるかを言い切った文が混ざると、どの欄から疑えばよいかも分からない状態です。

【説明用の架空の記入例】下書きの3つの欄が、次のように返ってくる形です。

  • 用途地域・建ぺい率・容積率

    第一種住居地域・建ぺい率〇〇%・容積率〇〇%(役所調査メモ1ページ、市の都市計画課の窓口で聞き取り)
  • 管理費・修繕積立金

    空欄(重要事項調査報告書の到着待ち)
  • 排水

    上下水道の台帳では公共下水、役所調査メモでは浄化槽(値が割れたため両方を残し、宅建士が窓口で確かめる)

資料どうしで値が割れた欄は、どちらかを選ばせず、両方の値と資料名を並べて返させます。上下水道の台帳と役所調査メモで排水の値が食い違ったときに、どちらを正とするかは宅建士が現地と窓口で確かめる事柄だからです。

下書きの材料に入れない書類もあります。売主と買主の本人確認書類、住宅ローンの審査書類、申込者の勤務先は、どの欄にも使いません。

登記事項証明書には所有者の氏名と住所が載るため、外部の生成AIに入れる前に規約と契約を読みます。規約で相手が登記の中身を取り扱わないと定め、中を見られる人も絞られているなら、個人データを渡したことになりません。中身を扱う相手なら、説明書を作る用途の範囲で任せる委託と読めるかを規約の文言で見極め、読めない契約では第三者提供として、所有者本人の同意を先に得ます。

海外の事業者なら第28条も関わります。見分ける順は面談の録音を送る前に規約で読む8項目と同じです。

AIやビデオで重説を代わりに行う形は国の整理に無い

説明そのものを代わりに行う形は、国の整理にありません。国土交通省は令和2年5月、一方的にビデオを流すだけでは重要事項説明とは認められないと回答しました。ビデオを観た消費者等の質問に宅建士が適時適切に答えるなど、理解が確保され、消費者の保護が十分に図られる場合には、ビデオの活用は差し支えないとしています。

AIについては、令和7年4月の規制改革推進会議の作業部会で、国土交通省が補助ツールとしての活用に可能性があるとし、個別の事案ごとに検討する方針を示しました。同年6月13日に閣議決定された規制改革実施計画を受け、国は補助ツールの基本的な考え方と具体例を整理し、宅地建物取引業の所管団体へ周知しています。この周知は、購入者等の利益の保護が確保されることが前提です。

国の実証事業では、生成AIを使った取引支援サービスの存在は確かめられたものの、効果はさらに検証が必要という段階です。同じ作業部会の資料には、ビデオ重説を実施している会社の課題として、口頭での補足が多く、全体の説明時間が長くなるという声も載っています。

定型部分の読み上げを補助に回すかは、店の取引を見て決めます。質問が後半に集まる賃貸の重説なら、所管の行政庁や顧問弁護士に確かめたうえで試す余地があります。相手方が宅建士の口からの説明を求める売買なら、補助を挟まないほうが説明は早く終わるでしょう。

賃貸で質問が続くのが契約の後、入居してからの設備や鍵の問い合わせなら、重説の補助より先に管理システムの拡張と社内検索のどちらから試すかを比べる番です。重説の補助を入れても、入居後に届く問い合わせの数は減らないからです。

35条書面の作成で手が止まるのは資料待ちと照合

手が止まるのは、資料の到着を待つ間と、記名前の照合の作業です。申込を受けてから説明の日までに、契約事務と宅建士は次の6つの作業を順に進めます。

  1. 登記事項証明書と公図を取る

    (契約事務)。抵当権の多い物件ほど権利の一覧づくりに手間取り、抹消前の抵当権を落とすと説明から漏れます。
  2. 役所で法令上の制限を聞く

    (宅建士)。聞いた内容は手書きの役所調査メモに残り、当てはめを誤ると再建築の可否の説明が抜けます。
  3. 重要事項調査報告書を管理会社に頼む

    (契約事務)。発行を待つ間に作り始めると、前回の金額が欄に残ります。
  4. 作成ソフトの欄へ写す

    (宅建士)。前回のデータを上書きする書き方では、別の物件の値が紛れ込みます。
  5. 記名前に原資料と照合する

    (宅建士)。照合する欄が人によって違うと、誤記のまま記名と交付に進みます。
  6. 宅建士証を示して説明する

    (宅建士)。質問が後半に集まり、理解の確かめが足りないまま契約に進むおそれがあります。

下書きが縮めるのは4の転記の時間で、5の照合と6の説明にかかる時間はそのままです。宅建士がひとりで売買と賃貸を回し、重説が月に数件という店では、参照元を確かめる手間が転記の短縮を上回ることもあります。その店は下書きを入れる時期に向かず、前回のデータを上書きしない作り方へ替えるほうが誤りは先に減ります。

同じ金額と期日は、この後に契約書(第37条書面)へも写します。契約書の作り方は売買契約書の下書きと特約の限度で、決済までの流れは契約・重説の業務ハブで確かめられます。

前回の説明書を流用すると管理費の欄が残る

前回の説明書を手本に渡すと、報告書が届く前の管理費と修繕積立金の欄に、前回の金額が入ったまま下書きが出てきます。仮に、同じマンションの前回の説明書を渡し、重要事項調査報告書が発行待ちのまま下書きを作ったとします。文章としては読めるため、照合で見落とせばそのまま記名と説明に進む流れです。

防ぐ仕組みは様式の側に置きます。金額の欄は前回の書面から写させず、報告書の発行日が下書きの作成日より古ければ、その欄を空けたまま返させます。宅建士の目に頼る前に、誤った値が欄に入らない形です。

手本に渡すかどうかは、同じ建物の取引の多さを見て選びます。同じマンションの取引が年に何件もある店なら、共用部分や管理規約の記載を写す手本として役に立ちます。年に一度あるかどうかの建物では、金額と日付を消した様式から作るほうが安全です。

説明の後で管理費や修繕積立金の違いに気づいたら、宅建士と店長がすぐ相手方に連絡し、重要事項調査報告書の正しい金額を伝えます。訂正の経緯は契約の記録に残します。

転記と食い違いの一覧のどちらから入るかは資料で選ぶ

欄への転記と、空欄や食い違いの一覧のどちらから始めるかは、役所調査メモと資料のそろい方で選びます。資料が作成ソフトの欄の順にそろう店なら、転記から入って構いません。役所調査メモが手書きで欄の順もばらばらな店は、先に食い違いの一覧だけを出させ、その間にメモの様式を説明書の欄の順にそろえます。

どちらから始めても、照合で直した欄の名前は宅建士が控えの余白に残します。残しておけば、手本にした控えと空欄から作った控えで、1通あたり何欄を直したかと、どの欄の直しが多いかを後から比べられます。

続けるかは、四半期ごとの1通あたりの直した欄の件数で決めます。手本にした側の件数が空欄から作った側を下回る欄だけ手本から写し続け、上回った欄は次の四半期から空欄の様式で埋めます。管理費と修繕積立金の欄は、比べる前から手本の対象に入れません。

役所調査メモの様式がそろった店から、転記の仕組みを外部と組む

宅建士がひとりで重説が月に数件の店は、外部と組む前に、前回のデータを上書きしない作り方と役所調査メモの様式を店の中で整えれば足ります。様式を直すのが宅建士本人なので、直した欄の件数を見ながら手本の範囲を変えていけます。

外部と組む話が出るのは、売買の取引が多く、登記事項証明書・役所調査メモ・重要事項調査報告書から作成ソフトの欄へ写す作業を、毎回の手作業から外したい場合です。資料の読み取りから、資料名とページを添えた欄への転記までを仕組みにするのは、AIエージェント開発が扱う仕事です。

組む前に様式へ書いておくのは、登記事項証明書を外部に渡せるかを規約で読む順と、資料どうしが食い違った欄を両方の値で返させる約束です。後者が無いと、上下水道の台帳と役所調査メモで値が割れた欄でも、AIはどちらかの値を選んで埋めてきます。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 宅建士

    役所調査メモが説明書の欄の順にそろうかを見て、転記と食い違いの一覧のどちらで下書きを始めるかを決める

    次へ進む目安次の売買1件で、決めた側の下書きを使って記名まで進めた

  2. 担当 契約事務

    管理費と修繕積立金の欄を前回の書面から写さず、報告書の発行日が作成日より古ければ空けて返す様式に作り替える

    次へ進む目安報告書が届く前の下書きで、2つの金額の欄が空いたまま出た

  3. 担当 契約事務

    四半期の終わりに、手本にした控えと空欄から作った控えに分け、1通あたりの直した欄の件数を比べて宅建士へ渡す

    次へ進む目安直しの多い欄を手本から外し、次の四半期は空欄の様式で埋めると決めた

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出典

  1. 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)(第35条第1項・第4項〜第9項・第35条の2・第47条第1号) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  2. 国土交通省「重要事項説明におけるAIの活用可能性について」(規制改革推進会議 デジタル・AIワーキング・グループ 資料1-4・令和7年4月9日)ビデオ重説への回答(令和2年5月)・対応の方向性・大手不動産会社へのヒアリング結果 国土交通省 確認日 2026.09.29
  3. 国土交通省「不動産業:不動産分野におけるDXの推進」(補助ツールの整理と周知・規制改革実施計画の記述) 国土交通省 確認日 2026.09.29
  4. 国土交通省「不動産媒介(売買・賃貸借)業務において活用されるデジタルサービス一例」(資料[2]) 国土交通省 確認日 2026.09.28
  5. 宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)(第16条の4の8第2項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  6. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)・Q12-3(外国にあるサーバへの保存) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
  7. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条・第27条第1項・第5項第1号・第28条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28

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