不動産の生成AIツール選定と社内ルール|6帳票の入力可否と承認者の決め方
条項探しと可否表の下書きはAI、行ごとの可否は帳票の持ち主、標準の1本と規程は経営者が決める
生成AIの席は、会社が止められるかどうかで選ぶ。可否表の下書きはAIに任せ、行の可否を決める人と、退職日に席を止める手順を規程に書ける。

30秒でわかること
何が問題か
営業担当が個人の生成AIで返信を書くと、学習の設定も退職時の停止も会社の手を離れる。
何を見れば判断できるか
帳票ごとの入れてよい欄と止める欄、規約で読める8項目、会社が席を止められるかで決まる。
誰が何をすれば解決するか
総務担当が条項を原文と照らし、帳票の持ち主が行の可否を書き、経営者が1本と規程を承認する。
生成AIツールは可否表を守れる席から選ぶ
選定の基準は、機能や料金より先に、反響メールや物件台帳を入れたときの扱いと、会社がアカウントを止められるかどうかです。この2点を候補ごとの規約で確かめる作業に、生成AIの下書きを使います。
図の要点:規程づくりの4段の流れ。集める資料は候補の規約とプラン表、帳票の持ち主が集めた項目名。生成AIは確認項目ごとに条項を抜き出して番号を添え、可否を空欄にした表を作る。総務担当が原文と照合し、帳票の持ち主が行の可否を書き、経営者が標準の1本と規程を承認する。配るのは標準の席1本、部門ごとの可否表、利用規程と事務所ごとの席の台帳。
条項の抜き出しは、原文と全項目照合してから席と可否表に使う
集める資料
- 候補の規約とプラン表(保存したPDF)
- 帳票の持ち主が集めた項目名
生成AIが下書きする
- 確認項目ごとに条項を抜き出し番号を添える
- 帳票の項目を行にした表(可否は空欄)
照合と可否の確定
- 総務担当: 原文と照合、無い条項は提供元へ
- 帳票の持ち主: 担当する行の可否を書く
- 経営者: 標準の1本と規程を承認する
配るもの
- 標準の席1本と部門ごとの可否表
- 利用規程と事務所ごとの席の台帳
行ごとの可否が1行でも空いているうちは、表も席も配りません。帳票の持ち主は、物件台帳と反響メールなら店長、査定の行なら売買責任者で、迷う欄は経営者へ上げます。
候補に並ぶのは、ChatGPTやClaudeの法人向けプランの席と、Google WorkspaceやMicrosoft 365に付く生成AIです。反響管理や賃貸管理のシステムに付くAI機能も候補になります。
反響メールや物件台帳を入れる前提で読むと、法人向けの4つは入力の扱いを公式ページで説明しています。ChatGPTのBusinessとClaudeのTeamは、既定で会社のデータを学習に使いません。
反響の受信箱や募集図面を置くGoogle Workspaceは、顧客のデータを許可なくドメインの外で学習に使いません。Microsoft 365 Copilotも、Microsoft Graph経由のプロンプトと応答を基礎モデルの学習に使わないとしています。
学習の既定で差がつかないなら、決め手は反響メールと物件資料の置き場所です。反響の受信箱がGmailで、募集図面のPDFをGoogleドライブで回しているなら、Workspace側から試します。OutlookとTeamsで回しているなら、Microsoft 365側です。帳票を別のサービスへ移さずに済み、移したコピーを誰が消すかという決めごとも増えません。
反響メールと募集図面の置き場所を決めていない店は、単体の法人向けの席から比べます。SSO(会社のアカウントでまとめてログインさせる仕組み)と管理者の権限は、BusinessとTeamのどちらの料金表にも載っています。席の年額と月額の違いは、内見の段取りに法人向けの席を入れる費用で確かめられます。
営業担当が個人で登録した無料版や個人向けの有料版は、会社の管理画面から止められません。退職の日に会社の手でアカウントを閉じられないため、標準の候補から外します。
業務システムのAI機能は、見る所が変わります。返信文や物件紹介文を書く作業がシステムの中で終わるなら、単体の席を配るより、付属機能の設定を可否表に合わせるほうが先です。物件や入居者のデータをCSVで出せないシステムでは、単体の席に渡すたびに画面から手で写す作業が残ります。
可否表は帳票ごとに入れてよい欄と止める欄を決める
可否表の行は、部門ではなく帳票で切ります。「顧客情報は入力禁止」の一行だけでは、反響メールの希望条件まで入れられなくなり、現場は個人の席へ戻っていきます。
| 帳票 | AIに入れてよい範囲 | 止める欄 |
|---|---|---|
| 物件台帳・募集図面 | 町名までの所在、間取り、面積、設備、賃料や価格 | 所有者の氏名、鍵の番号や暗証番号 |
| 反響メール | 希望条件と質問の文面 | 氏名、電話番号、メールアドレス、勤務先、年収 |
| 査定の依頼メモ・査定書 | 築年、面積、成約事例の数値 | 所有者の氏名、売却の理由、ローンの残高 |
| 媒介契約書・重要事項説明書の下書き | 様式の項目名、特約の文例 | 当事者の氏名と住所、融資の審査の状況 |
| 本人確認書類のコピー | なし | 画像も記載事項もすべて |
| 入居者台帳・修繕の依頼 | 修繕の内容、設備の型番 | 入居者の氏名と連絡先、家賃の滞納 |
表の行ごとに、可否を確定する人も決めます。契約書類の行は宅地建物取引士と経営者、入居者台帳は賃貸管理の責任者が持ち、本人確認書類の行は経営者が決めてどの席にも入れません。
確定する店長や責任者が空いた行があると、規程を配っても可否の問い合わせが総務担当に集まります。返事を待つ間に、現場は個人の席で書き始めます。
止める欄のうち、反響の氏名や入居者の連絡先は、学習に使わない法人向けの席に限って入れてよいと決めることもできます。その場合は、該当する行に入れてよい席の名前を書き足し、次の節の確認を済ませてから運用に移します。反響の一次返信で氏名を渡すかどうかは、反響の一次返信で自動送信してよい文面と合わせて決めると、送る文面と入れる欄の線がそろいます。
売買の仲介と賃貸管理を兼ねる会社なら、可否表は部門ごとに分け、利用規程は1本のままにします。帳票も確定する人も重ならないため、1枚にまとめると賃貸管理の責任者が売買の行まで読むことになるからです。事務所が1つで全員が同じ帳票を触る会社なら、表も1枚で足ります。
氏名を入れる前に、提供元が中身を取り扱うかを規約で確かめる
氏名や連絡先を入れる行を作るなら、提供元がその中身を取り扱うかを、規約と契約の文面で先に確かめます。氏名を消した反響メールでも、反響番号や受信の日時、本文の言い回しから顧客管理の記録に戻せるなら、同じ確かめの対象に入ります。判断は3つに分かれます。
契約で提供元が中身を取り扱わないと定められ、アクセスも適切に絞られているなら、反響メールを入れても、法の言う提供には当たらない扱いです。提供元が取り扱うなら、利用目的の範囲で取扱いを任せる形なのかを契約の条項で読み、そう読めれば会社が委託先を監督します(第25条)。読めなければ第三者提供で、本人の同意を前もって得ます(第27条第1項)。
可否表の行を開けてよいのは、前の2つのどちらかだと規約で読めた席だけです。
個人情報保護委員会は、反響メールの氏名のような個人データを含む指示文を、本人の同意なく生成AIに入力する場面に注意を促しています。応答を出す以外の目的で扱われると、法に違反する可能性があるという指摘です。入力の前には、提供元がその個人データを機械学習に回さない点などの確認を求めています。次の項目が規約とプラン表で読めない席には、氏名の行を開けません。
- 入力を学習に使うか(既定の設定と、切り替えられる人)
- 入力と会話の保存場所と保存期間
- 解約や席の停止のときに削除されるか
- 再委託先があるか
- 海外のサーバや事業者へ移るか
- 会話を見られるのは誰か(アクセス権限)
- 管理者が操作の記録を見られるか
- 漏えいが起きたときの連絡の手順と期限
提供元やサーバが外国にあるなら、委託と読める契約でも、外国にある第三者への提供として同意を取るべきかを第28条で別に見ます。読み方は録音を文字起こしに回す前の規約の読み方にまとめてあります。
規程づくりで生成AIに下書きさせるのは条項探しまで
生成AIに任せるのは、物件台帳や反響メールに関わる条項を探して並べるところまでで、見つからない項目の扱いは総務担当が決めます。条項が見つからない項目が「定めが無い」のか「別の文書にある」のかは、提供元に聞くまで分からないからです。
総務担当が抜き出しを原文と照らすのは、要約の段階で「既定では」「管理者が設定した場合は」という条件が落ちやすいからです。条件が落ちると、切り替えが必要な設定を、切り替え済みと読み違えます。
試す業務は、反響対応・物件登録・業務処理状況報告書の3つが扱いやすい範囲です。材料には、氏名を消した反響メール、所有者の氏名と鍵の番号の列を外した物件台帳、売主の氏名を物件番号に替えた報告書の控えを使います。
出力の採否は、反響対応なら店長、物件登録なら物件担当、報告書なら売買責任者が記録します。そうしておくと、標準の1本を決める場で、どの業務なら置き換えられたかを業務の持ち主の言葉で説明できます。
利用規程に宅建業法の守秘義務と広告の決まりを書く
利用規程には、宅地建物取引業法の守秘義務と広告の決まりを、営業担当が自分で読める言葉で書き込みます。外部のサービスに文を貼り付けるのは、会社ではなく従業者の手だからです。
第45条は、宅建業者が業務上知った秘密を、正当な理由なく他に漏らすことを禁じ、業をやめた後も同じ扱いにしています。第75条の3は同じ義務を従業者に課し、従業者でなくなった後まで続けています。査定の依頼メモにある売却の理由や住み替えの資金の事情は秘密に当たりやすく、可否表で止める欄に入れた理由もここにあります。
物件紹介文をポータルや自社サイトに出すなら、第32条も規程に入れます。広告の中の所在・規模・交通の利便・賃料や代金は、事実と著しく違ってはならず、実際のものより著しく優良・有利だと人に思わせてもいけない、という条文です。
このため、生成AIが書いた紹介文は、物件担当が物件台帳と募集図面に照らしてから掲載します。掲載前に止める語と、止める役の決め方は、AIが生成した物件紹介文のチェックで確かめられます。
条文は、誰が入力の可否を決めるかを指名していません。可否表の確定する人と、規程の承認者は、会社が自分で書き込みます。どの業務からAIを入れるかで迷うなら、不動産のAI活用の基礎と選び方で業務ごとの向き不向きを先に見ておくと、試す業務の候補がそろいます。
退職の日に生成AIの席を止め、従業者名簿とそろえる
宅建業者は、事務所ごとに従業者名簿を備えます。名簿には従業者でなくなった年月日を書き、最終の記載をした日から10年間保存します。一方、会社が契約した生成AIの席は、誰かが管理画面で止めない限り、退職の翌日も同じ会話履歴を開けるまま残ります。
そこで、名簿に退職の年月日を書く作業と、管理画面で席を止める作業は、同じ日に総務担当がそろえて行います。止める前に、その担当が作った共有の指示文や反響の返信の型を後任へ移します。退職時の秘密保持の誓約書には、生成AIに入力した内容も対象に含むと書き足します。
止め忘れは、名簿と台帳を並べれば見つかります。見つかった席は会話履歴を確かめ、2四半期続けて出るなら、名簿に退職日を書く人と席を止める人が別々になっていないかまで戻って見直します。
個人のアカウントで回っている業務の一覧は、可否表の最初の行と試す業務の候補を兼ねるので、規程を書き始める前に総務担当が店長から聞き取っておきます。
明日から始める3ステップ
各店長に、反響の返信と物件紹介文をいまどのサービスで書いているかを聞き、個人のアカウントで回る業務を書き出す
- 担当
- 総務担当
- 次へ進む目安
- 全店の答えがそろい、書き出した業務が可否表の行の候補になった
受け持つ帳票の行に入れてよい範囲と止める欄を書き、迷う欄は経営者へ上げる
- 担当
- 店長・売買責任者
- 次へ進む目安
- 可否表に空いた行が無くなり、経営者が標準の1本と規程を承認した
退職の手続きの一覧に席の停止の行を足し、名簿に退職日を書く日に管理画面で席を止める
- 担当
- 総務担当
- 次へ進む目安
- 四半期の終わりに席の台帳と従業者名簿を見比べ、止まっていない席が0件だった
この記事の見方を、自社に当てはめる
- 得られるもの
- 反響の返信・物件登録・入居者の連絡・オーナー報告・追客・重説の転記のどれを社内で最初に試すかが、理由とあわせて1つ出る
- 所要時間
- 約1分(6問)
- 登録
- 結果を見るまで登録は要りません
- 押した後
- 答えるとその場で、最初にAIへ任せる1工程と、人が確かめる所、2週間の試し方が出ます。資料として受け取るときだけ、会社名・お名前・メール・役職を入力します。
出典・参考資料9件
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第45条・第48条第3項・第75条の3・第32条(誇大広告等の禁止)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 宅地建物取引業法施行規則(昭和32年建設省令第12号)(第17条の2)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条・第27条第1項・第27条第5項第1号・第28条第1項)e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53(クラウドサービスの利用)個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
- OpenAI「ChatGPT 料金」(Business の学習の扱いと管理機能)OpenAI 確認日 2026.09.27
- Anthropic「プランと料金」(Team プランのデータの扱いと管理機能)Anthropic 確認日 2026.09.28
- Google「Google Workspace の生成 AI におけるプライバシー」Google 確認日 2026.09.28
- Microsoft Learn「Microsoft 365 Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」Microsoft 確認日 2026.09.28
編集・監修体制BoostX編集部
BoostX編集部(株式会社BoostX)が、官公庁・業界団体などの一次情報を原典で確かめて書いています。下書きにはAIを使い、編集担当者が内容と出典を確認してから公開しています。
更新履歴
最終更新
診断の案内を、6つの業務のうち社内で最初に試す1つが理由とともに出る、と言い切る形に書き直した
すべての更新履歴3件
- 診断の案内を、6つの業務のうち社内で最初に試す1つが理由とともに出る、と言い切る形に書き直した
- 題を「不動産の生成AIツール選定と社内ルール、帳票ごとの入力可否から決める」から、探す人の言葉に近い題に改めた。規程づくりの流れの図を最初の節(席の選び方)へ上げ、記事の最初に、どの帳票から可否を決めるかと、誰が確定するかの要約を置いた。宅建業法の出典名をそろえ、個人情報保護委員会の新着を開き直して確認日を更新し、止め忘れたときの戻し先を締めに足した
- 構成を6つの節に組み直し、可否表を3列にして確定する人を本文へ移し、工程の図を規程づくりの流れの図に置き換えた。委託と第三者提供の区別、規約で確かめる8項目、広告の条文(宅建業法第32条)と個人情報保護委員会Q&Aの出典を追加し、長い文と段落を分けた