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賃貸管理のオーナー月次報告書をAIで作る範囲|数字は集計、論点は人

月次締めの後にオーナーごとの月次報告書を1件ずつ作っている賃貸管理会社の管理担当と、報告書の型を決める業務管理者の実務に合わせた内容です。

月次締めが終わると、管理担当は入金一覧と空室一覧の数字をオーナーごとの報告書へ移し、先月と違う所の一言を1件ずつ書き足します。修繕があった物件では対応記録を読み返すので、作業が進みません。報告書のどの欄を生成AIの下書きに回せるか、毎月の報告と法令上の報告は何が違うか、下書きを作らない物件はどれかを、帳票の欄に沿って確かめられます。

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オーナー対応の現場のイメージ写真

先に結論

月次報告書の欄は3通りに分けます。入金・送金・稼働の数字は賃貸管理システムの集計の値を入れ、AIには計算させません。AIに下書きさせるのは、前月との差の説明文と対応記録の要約です。今月オーナーに伝える論点と、どの連絡が苦情にあたるかは管理担当が書きます。

毎月の報告の中身と頻度を決めているのは管理受託契約で、法令が求めるのは1年を超えない期間ごとの管理業務報告書です。入金の消込が済んでいない物件と、集計の送金額が実際の送金額と合わない物件は、下書きを作らずに管理担当へ戻します。

月次報告書でAIに渡すのは、数字が締まった後の文

報告書の1枚を欄で分けると、生成AI(以下、AI)に書かせるのは、数字が確定した後に付ける文に限られます。数字の欄は賃貸管理システムの帳票から入り、論点の欄は管理担当が書きます。

図の要点:オーナー向け月次報告書の1枚を欄で分けた図。対象月・送金額、収支、稼働の欄には賃貸管理システムの集計の値を入れる。先月との違いと対応の記録の欄はAIが下書きし、今月お伝えしたいことの欄は管理担当が書く。

月次報告書の1枚。数字は集計の値、文はAIの下書き、論点は管理担当

対象月・送金額
賃貸管理システムの送金明細の値を入れる
収支(賃料・共益費・管理報酬・修繕費)
賃貸管理システムの集計の値を入れる
稼働(入居・退去・空室)
空室一覧と入退去の記録の値を入れる
先月との違い
差が出た科目と部屋についての説明文AI が下書き
対応の記録
対応記録の要約。苦情の印は管理担当が付けるAI が下書き
今月お伝えしたいこと
オーナーに伝える論点を管理担当が書く人が確定

「AI が下書き」の印が付いた欄は「先月との違い」と「対応の記録」で、どちらも文の欄です。自社の報告書の欄に同じ印を付けていくと、下書きに回せる欄がいくつあるかが分かります。

数字を集計の値のままにする根拠は、家賃などの金銭の管理のしかたにあります。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、賃貸住宅管理業法)の施行規則第36条は、分別管理の方法を定めています。受領した金銭がどの管理受託契約のものかを、自社の帳簿で直ちに判別できる状態で管理する方法です。オーナーへ報告する送金額や収支は、この帳簿の値です。

法令がAIに計算させることを禁じているわけではありません。ただ、AIに合計や差額を出させると、帳簿と違う値が報告書に載っても、文を読んだだけでは気づけません。数字は帳簿から写すだけにしておけば、照合する相手は賃貸管理システムの1か所で済みます。

数字の欄は、賃貸管理システムの帳票出力や表計算の差し込みで埋まるので、AIは要りません。AIの下書きが役に立つのは、先月と違う所に一言を書き足す作業と、対応記録を読み返して要約する作業です。

毎月の報告は契約、1年以内ごとの管理業務報告書は法令

賃貸住宅管理業法の施行規則第40条が求めているのは、管理業務報告書です。作成と交付の期限は、管理受託契約の締結日から数えて1年を超えない期間ごとに来ます。毎月の報告書の中身と頻度は、法令ではなく、オーナーと結んだ管理受託契約で決まります。

報告 根拠 頻度と中身
毎月の月次報告書 自社の管理受託契約の定め 契約で合意した頻度と内容
管理業務報告書 賃貸住宅管理業法第20条・規則第40条 1年を超えない期間ごと・3事項
契約満了時の報告 同法第20条・規則第40条 満了後遅滞なく・同じ3事項

表の1行目と2行目以降は、別の書類として扱います。毎月の報告書に載せる項目は、自社の契約で定期報告の内容と頻度を定めた箇所を読んで決めます。管理業務報告書は、契約の締結日を起点に期限を管理します。

管理業務報告書とは、賃貸住宅管理業者が3つの事項を記載し、委託者に交付して説明する書面です。3つの事項は、報告の対象となる期間、管理業務の実施状況、入居者からの苦情の発生状況と対応状況です。収支や送金の明細は、この記載事項に入っていません。

毎月の報告を例に挙げている資料に、国土交通省の賃貸住宅標準管理受託契約書があります。この契約書は定期報告の内容と頻度を頭書に書く形で、コメントは、家賃の受領は毎月、建物・設備の維持管理状況は四半期ごとに報告する形を例に挙げます。国が示した例であって、義務ではありません。

法令の解釈を示した国土交通省の文書も、事項によっては1年より高い頻度での報告が望ましいとするに留めています。自社がオーナーに約束した頻度は、自社の契約書で確かめます。

令和7年度に国土交通省が168社(特定転貸事業者を含む)へ行った立入検査では、118社が是正指導の対象になりました。是正指導の事項別では、委託者への定期報告の義務違反が17件あり、令和6年度は20件でした。指導の例には、苦情や修繕といった報告事項が無いオーナーへの報告を省いていたものが含まれます。

報告する出来事が無かった期間も、管理業務報告書は作成して交付します。苦情の記録が1件も無い期間なら、苦情の欄は消しません。説明用の架空の記入例を挙げると、欄に「対象期間中の苦情なし」と書く形です。

毎月の報告書の「対応の記録」に苦情の印を残しておくと、管理業務報告書の苦情の欄を書くときに該当の連絡を抜き出せます。連絡を受けた時点で印を付ける手順は、入居者の連絡の分類と緊急度の決め方に沿って決められます。

第20条の定期報告は、管理受託契約の委託者に対する賃貸住宅管理業者の義務です。サブリースの特定賃貸借契約では、維持保全の実施状況を賃貸人へ報告する内容と頻度を、契約前の重要事項として書面に記載して説明します。

前月比の説明文はAI、報告する論点は管理担当

「先月との違い」の欄では、AIが前月との差を説明する文を下書きし、管理担当がその理由を対応記録と照合します。「対応の記録」の欄では、AIが要約し、どの連絡が苦情にあたるかを管理担当が決めます。

欄 下書きの中身 管理担当が決めること
先月との違い(収支) 差が出た科目の説明文 理由が対応記録と合うか
先月との違い(稼働) 入退去による増減の文 空室が続く部屋を論点にするか
対応の記録 対応記録の要約 苦情にあたる連絡かどうか
今月お伝えしたいこと 下書きさせない 伝える論点と書く順番

AIの下書きがある行でも、管理担当はすべての文を元の集計と対応記録に照合してから確定します。下書きが無い「今月お伝えしたいこと」は、管理担当が物件とオーナーの事情を踏まえて書きます。

苦情の判定を管理担当に残すのは、苦情かどうかが文面だけでは決まらないためです。国土交通省の解釈は、単純な問い合わせに記録と報告の義務はないとしています。一方で、苦情を伴う問い合わせは記録し、対処の状況も含めて報告する必要があるとしています。

同じ設備の連絡でも、問い合わせで終わったのか、不満の申し出を伴っていたのかは、対応した管理担当が判断します。AIの要約は、その判断の材料を読みやすくするところまでです。

修繕費が前月より増えた月を例に、渡す材料、AIの下書き、管理担当の作業を並べます。対応記録を外部のAIサービスへ渡すのは、入力してよい範囲を社内で決めた後です。

【説明用の架空の記入例】

  • AIに渡す材料

    当月と前月の科目別の集計、当月の対応記録(部屋番号・日付・対応の種類)
  • 指示に入れる条件

    金額は渡した値を写して計算しない。材料に無いことは「未確認」と返す
  • AIの下書き

    修繕費が前月より増えました。給湯器の交換1件によるものです。
  • 管理担当の照合

    修繕費の値を集計と、給湯器の交換を対応記録と見比べる
  • 管理担当が足す論点

    同じ棟に同じ型の給湯器が残っていることを伝えるか

下書きに書かせるのは「何が起きたか」までで、オーナーに何を相談するかは書かせません。同じ型の給湯器の話を今月の報告書に書くか、次の面談に回すかは、オーナーとのやり取りを知る管理担当が決めます。修繕の提案や募集条件の見直しなど、報告の後に続く業務の記事は、オーナー対応のAI活用に並んでいます。

入金の消込が済まない物件は下書きを作らない

下書きに回してよい物件の条件は、入金の消込が済み、集計の送金額が実際にオーナーへ送った額と一致していることです。どちらかが欠けた物件はAIへ材料を渡さず、管理担当が消込と送金額を先に確かめます。

締まっていない数字から書いた文は、数字が動いた時点で文ごと誤りになります。「修繕費が増えました」という下書きを確定した後で修繕費の計上が翌月へ移ると、数字を直しても文が報告書に残ります。

対応記録が空の月に修繕費が計上されている物件も、同じ扱いにします。AIは材料に無い理由を書けないので、指示のとおりなら「未確認」と返します。管理担当が修繕の内容を対応記録に入れてから、下書きを作り直します。

消込が済んでいるかどうかは、賃貸管理システムの消込の状態を物件単位の一覧に出して見分けます。一覧を出せない会社では、管理担当が締めの日に物件ごとの確認欄へ印を付け、印のある物件だけを下書きに回します。

下書きを使い続けるかは、管理担当が直した件数を欄ごとに数えて判断します。締めのたびに、「先月との違い」と「対応の記録」のそれぞれで、下書きを書き直した報告書の件数を記録します。3回の締めを通して件数が増えていく欄は、業務管理者が報告書の型か渡す材料を見直します。見直しても減らなければ、その欄の下書きをやめます。

AIのサービスが使えない締めの日は、管理担当が説明文を自分で書きます。数字の欄は賃貸管理システムから入るので、報告書の送付は止まりません。

入居者の氏名と滞納額は、渡す範囲を先に決める

下書きの材料になる対応記録には、入居者の氏名、部屋番号、滞納の金額が入っています。説明文と要約に入居者の氏名は使わないので、渡す材料は部屋番号・日付・対応の種類・金額に絞ります。

氏名の列を外しても、部屋番号と金額は自社の台帳で入居者本人に行き着くので、個人データとして扱います。絞って減るのは、提供元に渡る項目の数です。

外部のAIサービスに入力してよいかは、契約の中身で扱いが3つに分かれます。個人情報保護委員会のQ&Aは、クラウドサービスについて、提供に当たらない場合を示しています。提供元が個人データを取り扱わない旨が契約で定められ、アクセスも適切に制限されている場合などです。生成AIサービスへの入力がこれに当たるかは、利用するサービスの契約と設定で確かめます。

提供元が取り扱う契約なら、委託と言えるかを契約で確かめ、言えなければ本人の同意が要る第三者提供として扱います。

提供に当たらない場合でも、個人情報保護法第23条の安全管理措置は自社の義務として残ります。委託にあたる場合は、第25条により委託先を監督する義務も加わります。

規約で読む条項と、入力の可否を決める人の置き方は、不動産会社の生成AIの社内ルールと6帳票の可否表が参考になります。滞納の金額と督促の経過を材料に入れるかは、業務管理者が決めます。入れない会社では、滞納の欄は管理担当が賃貸管理システムの値を見て書きます。

報告書の型と集計の出力を社内でそろえられるか

先月オーナーへ送った報告書を並べ、型が何種類あるかを業務管理者が数えると、社内で進められる範囲の見当がつきます。型が1つで、賃貸管理システムからオーナー・物件単位の集計を表で出せる会社は、契約しているAIサービスと報告書の型だけで下書きまで進められます。

外部の手が要るのは、出力の形をそろえる作業が社内で終わらない会社です。オーナーごとに型が違う、集計を表計算で作り直している、消込の済みと未済を一覧で出せない、のどれかに当たる場合です。外部には、報告書の型、集計の出力の見本、消込の状態の出し方を渡し、出力を1つの形にそろえる部分を頼みます。

報告書づくりの前後の業務でAIを使える所は、不動産会社の業務別のAI活用記事から探せます。

社内で始める場合の最初の作業は、管理担当が先月の報告書を1件選び、欄ごとに数字・説明文・論点の3色で塗り分けることです。説明文の色がほとんど無い報告書は、AIに回せる量も少なくなります。その場合は、下書きより先に、型へ「先月との違い」の欄を足すかを業務管理者が決めます。

効果は、管理担当が締めのたびに記録する2つの値で確かめます。1オーナーあたりの作成にかかった時間(分)と、送付が送金日より後になった件数です。3回の締めを通して作成時間が縮まらなければ、説明文は管理担当が書く形に戻します。

型を1つにそろえるときは、オーナーごとに足してきた項目を一律に削らないようにします。国土交通省の解釈は、法令の記載事項以外の事項も、賃貸人の求めに応じて報告することが望ましいとしています。求めのあった項目を書く欄を型に残しておけば、そろえた後も、オーナーごとの約束を管理担当が同じ1枚で果たせます。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 管理担当

    先月オーナーへ送った月次報告書を1件選び、欄ごとに「集計の数字」「説明文」「論点」の3色で塗り分ける

    次へ進む目安塗り分けた報告書を業務管理者が読み、AIに下書きさせる欄の名前を報告書の型に書き込んだ

  2. 担当 業務管理者

    自社の管理受託契約で定期報告の内容と頻度を定めた箇所を読んで報告書の型と見比べ、賃貸管理システムから消込の済み・未済を物件単位で出す方法を確かめる

    次へ進む目安契約で約束した報告の項目が型にすべて入り、消込が未済の物件の一覧を締めの日に出せる

  3. 担当 管理担当

    次の締めから、消込が済んだ物件だけ説明文と要約の下書きを作り、1オーナーあたりの作成時間(分)と欄ごとの直した件数を記録する

    次へ進む目安3回の締めの記録がそろい、直した件数が毎回増えた欄を下書きの対象から外した

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出典

  1. 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)第20条(委託者への定期報告) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.13
  2. 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則(令和2年国土交通省令第83号)第40条第1項・第36条(財産の分別管理) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.13
  3. 国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」第20条関係1(2)・第20条関係1柱書・2・第30条関係2(6) 国土交通省 確認日 2026.10.13
  4. 国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」頭書(8)・第15条・コメント第15条関係 国土交通省 確認日 2026.10.13
  5. 国土交通省「【詳細版】賃貸住宅管理業者等への全国立入検査結果(令和7年度)」立入検査の結果(法第20条関係) 国土交通省 確認日 2026.10.13
  6. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第23条・第25条・第27条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.13
  7. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」Q7-53・Q7-54(クラウドサービスの利用) 個人情報保護委員会 確認日 2026.10.13

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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