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賃貸管理の問い合わせ分類はAIにどこまで任せるか|区分表と緊急の線

入居者の連絡が電話・メール・アプリに分かれて届くと、翌朝の対応記録で同じような連絡が担当ごとに別の区分に入り、急ぎかどうかの印も付いたり付かなかったりします。分類をAIに任せる前に決めておくのは、区分の切り方と、緊急かどうかを誰が何を根拠に確定するかです。区分の表と緊急度の判断表、AIの案を止める条件までを順に示します。

賃貸管理 7分 運営 株式会社BoostX

賃貸管理の現場のイメージ写真

先に結論

入居者の連絡の分類でAIに渡せるのは、対応記録への書き起こしと、振り分け先で切った区分の案、緊急度の案までです。緊急度「すぐ」の確定と修繕業者の手配、オーナーへの事後の通知は管理担当が持ちます。国の標準管理受託契約書が、オーナーの承認を待たずに動く判断と事後の書面での通知を、管理業者の側に置いているからです。

管理担当が直した区分の件数が週を追って増える区分は、業務管理者が区分表の定義を直します。「すぐ」の連絡を1件でも取りこぼした区分は、AIの案を止めて管理担当の分類に戻し、決まりを直してから再開します。

分類と緊急度の案までAIに、確定は管理担当が持つ

AIの仕事は、連絡を対応記録の1行に起こし、区分と緊急度の案に根拠の一文を添えるところで終わります。その案を確定し、業者を呼ぶかどうかを決めるのは管理担当です。

図の要点:入居者の連絡の受付から手配までを、AIの下書きと管理担当の確定に分けた図。管理担当が連絡を受けて受付時刻と部屋番号を控え、AIが対応記録の1行への書き起こしと、5区分の案・緊急度の案に根拠の一文を付ける。区分と緊急度の確定、修繕業者の手配、オーナーへの通知の要否は管理担当が決める。

AIが出すのは案と根拠の一文まで。「すぐ」の確定から先は管理担当

管理担当

AIの下書き

  1. 管理担当

    電話・メール・アプリの連絡を受け、受付時刻と部屋番号を控える

  2. AIの下書き

    連絡を対応記録の1行に書き起こす

    本文に無いことは「未確認」と返す

  3. AIの下書き

    5区分の案と緊急度の案に、根拠の一文を付ける

    足りない項目も並べる

  4. 管理担当

    区分と緊急度を確定する

    戻す案と違えば直し、理由を記録に残す

  5. 管理担当

    修繕業者の手配と、オーナーへの通知の要否を決める

図の中で管理担当の行に入っている仕事は、AIの案がどれだけ当たっていてもAIの側へ移しません。移すのは、AIの下書きの行の作業だけです。

線をここに引く根拠は、管理受託契約の緊急時の定めにあります。国土交通省の賃貸住宅標準管理受託契約書は、第11条で緊急時の業務を定めています。災害や事故などで緊急に行う必要があり、オーナーの承認を受ける時間的な余裕がない業務は、承認を受けずに実施できます。その場合、管理業者は速やかに書面で、業務の内容と費用の額をオーナーへ通知します。

承認を待たずに動くかどうかの判断と、その後の通知の責任は、管理業者に残ります。AIの案は判断の材料にはなっても、判断した者として記録には残せません。標準のひな形と自社の契約の文言が同じとは限らないので、緊急時の条項は自社の契約で先に読んでおきます。

賃貸住宅管理業法は、営業所ごとに業務管理者を置き、その営業所の業務の管理と監督に関する事務を行わせると定めています。区分表と緊急度の定義を決めて直すのは業務管理者、日々の連絡を確定するのは管理担当、と分けておくと、法が置いた役割とずれません。

入居者の氏名や部屋番号を外部のAIサービスへ渡す前に、そのサービスの契約で入力した情報の扱いを確かめます。入力してよい情報の決め方は生成AIの社内ルールの記事にあります。

内容の分類は振り分け先で5つに分ける

区分は、連絡の内容の名前ではなく、次に誰が動くかで切ります。

区分 振り分け先 AIに集めさせる項目
設備 修繕業者(手配は管理担当) 箇所・症状・写真
騒音・近隣・使い方 管理担当が当事者と話す 時間帯・頻度・場所
契約・更新・解約 契約担当 契約の種類・期日・希望
家賃・敷金・精算 経理 対象の月・金額・入金日
入居者が自分で解決 案内の文を返す 規約や案内の該当箇所

5つの区分は、どれも振り分け先が1つに決まるように切ってあります。区分が決まった時点で、次に連絡を受け取る人が決まります。どの区分にも入らない連絡は「その他」に置かず、管理担当が引き取って区分表に足すかどうかを決めます。

たとえば、同じ夜に「上の階の音がうるさい」がアプリに、「給湯器にエラーが出てお湯が出ない」が電話で届いたとします(説明用の仮の場面です)。翌朝の対応記録で、前者が担当によって「騒音」「苦情」「生活ルール」に分かれ、後者は「設備」でも急ぎかどうかの印が無いままです。区分を内容の名前で付けていると、こうした割れ方が起きます。

「騒音」「苦情」「生活ルール」は、どれも管理担当が当事者と話す連絡です。振り分け先で切れば、表の2行目の1つの区分に収まります。

ある入居者アプリの提供元は、過去3年間・約27万件の問い合わせを解析し、274種類のFAQと30種類のフォームを作ったと2026年5月に発表しました。設備の故障なら箇所・症状・写真、騒音なら時間帯・頻度・場所を集めるとしています。

入居者が自分で答えにたどり着くための細かさと、社内で次に動く人を決める区分は目的が違います。社内の区分は5つに留め、細かくするのは集める項目の側です。

緊急の線はオーナーの承認を待てるかで引く

「すぐ」は、災害や事故などで、オーナーの承認を待つ時間が無い連絡です。標準管理受託契約書の緊急時の業務の定めを、そのまま緊急度の一番上に使います。

緊急度 線の引き方 例
すぐ 承認を待てない災害・事故 天井からの水
当日 暮らしに欠かせない設備が止まった 冬の夜の給湯器のエラー
翌営業日 当日中に動かなくても困らない 更新料の問い合わせ

「当日」と「翌営業日」の境は、契約にも法令にも定めがありません。業務管理者が自社の物件で決め、例を表の横に書き足していきます。

AIには、緊急度の案と、そう判断した根拠を本文の言葉で一文書かせます。

【説明用の架空の記入例】

  • 受付

    1月の平日22時40分・アプリ
  • 記録の1行

    給湯器にエラー表示が出てお湯が出ない、水は出ている
  • 区分の案

    設備
  • 緊急度の案

    当日(根拠: 水漏れや焦げ臭いにおいの記載が無い)
  • 未確認

    エラーの番号、写真

管理担当は、この1行を賃貸管理システムの対応記録の画面で確かめてから確定します。案が「当日」でも、管理担当が「すぐ」に上げるのは構いません。逆に「すぐ」の案を下げるときは、下げた理由を記録に残します。

「すぐ」と確定したら、管理担当は業者の手配に入り、事後にオーナーへ書面で内容と費用を通知します。AIが止まった夜や、案が「未確認」だらけの連絡は、管理担当が同じ2つの表を見て手で分類します。表が紙でも使える形なら、AIを止めても受付は止まりません。

自動回答から外す語の一覧は、入居者の問い合わせAIの比較で扱っています。

同じ部屋の2回目は前の記録と並べて分類する

同じ部屋から同じ区分の連絡が2回目に来たら、AIには前の対応記録を並べて出させ、区分と緊急度は管理担当が見直します。騒音や設備の不具合は、1回ずつ読むと軽く見えても、続けて読むと扱いが変わるからです。

2回目の連絡は、前の記録と並べてから管理担当が確定する

  1. 連絡を受ける

    電話・メール・アプリ

    人

  2. 記録の1行に書き起こす

    未確認の項目も残す

    AI

  3. 区分と緊急度の案を出す

    根拠の一文を付ける

    AI

  4. 同じ部屋の前の記録と並べる

    同じ区分の直近の記録

    AI

  5. 区分と緊急度を確定する

    2回目なら見直す

    人

  6. 振り分け先へ回す

    修繕業者・契約担当・経理など

    人

上の階の音の2回目なら、管理担当は前回どちらの部屋と話したかを読み、次は相手の部屋へ連絡するかを決めます。給湯器のエラーが修理の後にまた出たなら、新しい業者を探す前に、前回修理した業者へ戻すかを決めます。どちらも、1件だけを見ていては出てこない判断です。

この照合は、対応記録が部屋単位で賃貸管理システムなどに電子で残っていることが前提です。電話の内容が手帳や担当者の端末のメモにしか無い会社では、AIが前の記録を見つけられません。その場合は、分類より先に記録の置き場所を1つにします。

分類の誤りは人が直した件数と取りこぼしで測る

管理業務報告書には、入居者からの苦情の発生状況と対応状況を書くと、賃貸住宅管理業法の施行規則第40条が定めています。分類のときに苦情の印を付けておけば、報告書を作るときにその印で該当の連絡を抜き出せます。印を付けるかどうかは、区分と同じく管理担当が確定のときに決めます。

苦情の印は5区分とは別に付けます。設備の連絡でも、対応の遅れへの不満が書かれていれば苦情になり得るからです。

令和7年度の国土交通省の立入検査では、賃貸住宅管理業者と特定転貸事業者の168社のうち118社が是正指導を受けました。委託者への定期報告の義務違反は17件(前年度20件)で、苦情や修繕などの報告事項が無いオーナーへの報告を省いた例が挙げられています。苦情が無かった期間も報告は省けず、印が1件も無いことが「苦情なし」と書く根拠になります。

AIの案の当たり外れは、週ごとに区分別で2つの数を数えて確かめます。1つは管理担当が区分を直した件数、もう1つは「すぐ」の取りこぼしで、AIが「当日」以下と出し、後から「すぐ」だったと分かった連絡の数です。

直した件数が週を追って増える区分は、業務管理者が区分表の定義か、集める項目を直します。取りこぼしが1件でも出た区分は、AIに案を出させるのをやめ、管理担当の分類に戻します。取りこぼしは入居者の暮らしと建物の損害に直結するので、直した件数より重く扱います。

AIの案を再開する前に、取りこぼした連絡を直した決まりで流し直し、「すぐ」と出ることを確かめます。

分類表の手入れを社内で回せるかで外部を決める

営業所ごとに区分の名前が違い、対応記録が電話のメモや担当者の端末に分かれて残っている会社は、AIを入れる前の記録の一元化から外部の支援を使う方が早く進みます。区分表を作っても、前の記録と並べる照合が動かないからです。

対応記録が部屋単位で賃貸管理システムに入っていて、業務管理者が週ごとの2つの数を見て区分表を直せるなら、社内で回せます。外部に頼むとしても、方式や製品を選ぶところの手伝いで足ります。

方式ごとの違いは入居者の問い合わせAIの比較にあります。ほかの賃貸管理の業務は賃貸管理の業務一覧から読めます。

夜間の受付を外部のコールセンターに委託している会社では、緊急度の案を最初に見るのが委託先の受付担当になります。「すぐ」の確定を委託先に任せるのか、転送を受けた管理担当が持つのかを、委託の取り決めに書いておきます。書いていないと、承認を待たずに動いた判断を誰がしたのかが記録に残りません。

委託先が受けた連絡も、区分を直した件数と「すぐ」の取りこぼしの件数を、社内と同じ表で週ごとに数えます。委託先が受けた連絡と社内で受けた連絡とで、どの区分の案が多く直されているかを比べられるからです。賃貸管理のほかにAIを使える業務は、不動産の業務別の記事一覧から探せます。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 業務管理者

    直近1か月の対応記録を5区分に振り直し、どの区分にも入らなかった連絡と、担当によって区分が分かれた連絡を書き出す

    次へ進む目安自社の振り分け先の名前と、区分ごとに集める項目が入った分類表ができた

  2. 担当 管理担当

    自社の管理受託契約の緊急時の定めを読み、オーナーの承認を待たずに動いた過去の連絡を『すぐ』の例として判断表に並べる

    次へ進む目安すぐ・当日・翌営業日の3つの緊急度それぞれに自社の連絡の例が付いた判断表を、夜間の転送先の担当が持っている

  3. 担当 管理担当

    AIの区分案と緊急度案を確定するたびに、直した件数と『すぐ』の取りこぼしを区分別に記録する

    次へ進む目安4週分の集計から、案を使い続ける区分と人の分類に戻す区分を業務管理者が決めた

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出典

  1. 国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」第11条(緊急時の業務) 国土交通省 確認日 2026.10.10
  2. 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)(第2条第2項・第12条・第20条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.10
  3. 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則(令和2年国土交通省令第83号)(第40条第1項第3号) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.10.10
  4. 国土交通省「【詳細版】賃貸住宅管理業者等への全国立入検査結果(令和7年度)」立入検査の結果(法第20条関係) 国土交通省 確認日 2026.10.10
  5. パレットクラウド「入居者アプリ「パレット管理」、27万件のお問い合わせデータを解析し274種類のFAQと30種類のフォームを開発」(PR TIMES)(プレスリリース本文) 株式会社パレットクラウド 確認日 2026.10.10

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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