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AIで従業員アンケートの自由記述を分析|テキストマイニングで課題を可視化

公開 2026.02.19 ・ 最終更新 2026.10.06 ・ 読了目安 約14分

たとえば、社員300人の会社で年1回の従業員満足度調査を締め切ったとします。回答は240件、そのうち自由記述欄に何か書かれていたのは150件です。人事担当の2人がCSVを開き、1件ずつ読んで「上司との関係」「待遇」「仕事量」と分けていくと、途中で手が止まる回答に出会います。ある課長の名前と言動を具体的に書いた回答や、通院していることを打ち明けた回答です。これを件数に入れてよいのか、AIに読ませてよいのか、まだ誰も決めていません(人数と件数は、説明のために前提として置いた数です)。

生成AIでアンケートの自由記述を分析するとき、AIに任せられるのは、1件ずつの分類の案と要約の案、報告に載せる原文の候補出しまでです。限界は4か所あり、どれも担当が見落としやすく、人が線を引くところです。部署別に結果を出す最小人数、AIに入れる列と使うサービス、数えずに相談窓口へ回す回答、施策と従業員への回答の4つです。以下、締切から施策の回答までを7段階に分け、AIが入る段階と人が決める段階を同じ番号で並べて整理します。

30-SECOND SUMMARY忙しい方へ|この記事の結論
  1. AIが返すのは、自由記述1件ずつの分類と20字ほどの要約の案までです。数える前に、人が「その他」の回答と、特定の人の言動や健康に触れた回答を読み直します
  2. 人が引く線は4つ。部署別に出す最小人数、AIに入れる列とサービス、数えずに相談窓口へ回す回答、施策と従業員への回答です。どれも調査票を配る前に決められます
  3. 無料のAIで試すなら、作った例文や個人が分からない回答に限ります。本番の従業員の回答は、入力を学習に使わないことを確かめたサービスに入れます

従業員アンケートの自由記述は、なぜ読まれないまま次の調査が来るのか

自由記述が読まれずに残るのは、量が多いからだけではありません。読む・分ける・数える・選ぶの4つを人事担当が手で回していて、そのどれにも小さな判断が混ざっているからです。判断の持ち主が決まっていない作業は、締切の後に後回しになります。

選択式のスコアは「どこが低いか」まで、自由記述は「何が起きているか」

選択式の設問は、職場環境の満足度が5段階で3.2、のようにどこが低いかを示します。なぜ低いのかは示しません。空調なのか、上司との関係なのか、仕事量なのか。その中身が書かれているのが自由記述欄です。

一方で、自由記述には書いた人の事情がにじみます。部署や担当、その時期の出来事が書かれていれば、同じ部署の人には誰の回答か見当がつきます。分析の素材として価値が高い分、扱いを間違えたときに回答者が受ける不利益も大きくなります。

いまの流れ:締切から施策の回答まで7段階

冒頭の前提(回答240件・自由記述150件・人事担当2人)で、いまの流れを7段階に分けます。所要時間は会社ごとに違うため表には書かず、後で自社で測る項目として扱います。

段階 担当 入力 出力 判断
1 配信 人事担当 前回の調査票 全社員300人への調査依頼 何を聞くか(前回のまま)
2 回収・締切 人事担当 調査ツールの回答 回答240件のCSV なし
3 匿名化 人事担当 CSV 氏名の列を消した一覧 どの列を消すか(その場で決める)
4 読み分け 人事担当2人 自由記述150件 分類を書き込んだ表 どの分類に入れるか(読む人ごとに違う)
5 集計 人事担当 分類を書き込んだ表 カテゴリ別の件数 どの回答を数えるか
6 報告 人事責任者 件数と、選んだ回答5件 経営会議と部門長への資料 どの声を代表として出すか
7 施策と回答 経営層・部門長 報告資料 打ち手と従業員300人への説明 何をやり、何をやらないか

時間が消えるのは段階4です。150件を2人で読むと、読み終える頃には前半の分け方がぶれていて、同じ内容が別の分類に入ります。手が止まるのは段階3と段階5で、氏名以外の列をどこまで消すか、特定の人の言動が書かれた回答を数えるかが、その場の担当の判断に任されています。段階7は、次の調査の時期になっても従業員に何も返さないまま終わりがちです。

手が止まるのは、読む量より「誰が線を引くか」が決まっていないところ

段階4の手間はAIで小さくできます。段階3と段階5の判断は、AIを入れても消えません。むしろAIに入れる前に決めることが1つ増えます。AIに渡してよい列と、渡してよいサービスです。

読む手間だけを見てAIを入れると、段階3の線が決まらないまま回答がAIに渡ります。匿名の約束は、誰も気づかないところで崩れます。

生成AIによるアンケート分析とは?任せる分類・要約と、人が引く線

生成AIによるアンケート分析とは、自由記述の1件ずつにAIが分類と要約の案を付け、人がその案を確かめてから数える進め方のことです。単語の出る回数を数える従来のテキストマイニングと違い、「上司に相談しても返事がない」と「報告が一方通行になっている」を同じ分類に寄せられます。その代わり、AIの案はもっともらしい形で外れることがあるため、数える前の確認が欠かせません。

AIを入れた後の7段階:AIが返すのは段階4の案だけ

同じ7段階で書き直すと、AIが入るのは段階4だけです。増えるのは段階1の線決めと、段階5の読み直しです。

段階 担当 AIが受け取るもの・人の入力 AIが返すもの・出力 人が確かめること
1 配信(増える) 人事責任者・人事担当 4つの線の案 線を書いた調査票の説明文 約束どおりに守れる線か
2 回収・締切 人事担当 調査ツールの回答 回答240件のCSV なし
3 匿名化 人事担当 CSV AIに入れる列だけの一覧(少人数の部署は合算) 氏名以外で人が分かる列が残っていないか
4 分類と要約の案 AI 自由記述150件と、人が決めた分類の一覧 1件ずつの分類・20字の要約・判断できない印 次の段階でまとめて見る
5 読み直しと集計(増える) 人事担当 AIの案 カテゴリ別の件数と、数えずに回す回答の一覧 「その他」の回答と、人の言動・健康に触れた回答
6 報告 人事責任者 件数表と原文の候補10件 経営会議と部門長への資料 原文から書いた人が分からないか
7 施策と回答 経営層・部門長 報告資料 打ち手と従業員300人への回答 やらないことも含めて返すか
従業員アンケートの自由記述を締切から回答までの7段階に分け、いまの流れとAIを入れた後の流れを並べて、AIが入るのは段階4だけで、人が線を引くのは段階1・3・5・7だと示した図
AIの案がそのまま報告へ流れる段階はありません。手が増えるのは配信の前と、数える前の2か所です

AIに入れる前に決める:匿名性と個人情報の線

個人情報保護法では、氏名が無くても、他の情報と容易に照合して特定の個人が分かるものは個人情報に含まれます。部署名と入社年と自由記述の出来事がそろえば、社内では誰の回答か分かることがあります。氏名の列を消しただけでは、匿名にしたことにはなりません。

もう1つは健康の話です。病歴は要配慮個人情報にあたり、取得には原則として本人の同意が要ります。回答に「通院している」と書かれていた場合、それを分析の素材としてAIに入れるか、入れずに外すかは、人事責任者が決めることです。

生成AIのサービスに個人情報を含む文章を入れる場合、個人情報保護委員会は、利用目的の範囲内かを確かめること、入力した内容をサービス側が機械学習に使わないことなどを確かめることを注意点に挙げています。調査票に書いた利用目的が「職場環境の改善のため」なら、AIで分ける作業もその範囲で行うことになります。

決めること 人が引く線の例 決める人
部署別に出す最小人数 例として、回答者5人未満の部署は上の組織と合算する(人数の線は自社で決める) 人事責任者
AIに入れる列 自由記述と、合算した後の部署だけ。年代・入社年・役職は入れない 人事責任者
使うサービス 入力を学習に使わないことを契約か設定で確かめた法人向けのもの 情報システムの担当
健康に触れた回答 AIに入れる前に人が外し、外した件数だけを記録する 人事責任者

無料のAIで試すなら、従業員の回答は入れない

AIでアンケート分析を無料でと探している段階なら、試すこと自体は無料のサービスで足ります。試す材料は、自分で作った例文50件や、個人が分からない形で公開済みのアンケート結果です。分類の案がどの程度ぶれるか、要約が20字に収まるかは、それで分かります。

本番の従業員の回答を、入力の扱いを利用規約で確かめていない無料のサービスに入れるのは別の話です。入力した文章が学習に使われる設定のままだと、利用目的の範囲を超えて扱われるおそれが出ます。試す段階と本番の段階で、使うサービスを分けておきます。社内でAIの無断利用をどう止めるかは社内の無断利用を止める境目を整理した記事で扱っています。

分類の一覧は人が先に決め、AIには「判断できない」を許す

分類は、選択式の設問と同じ並びで人が先に決めます。たとえば職場環境・上司との関係・仕事量・待遇・成長の機会・会社の方針・その他の7つです。選択式と同じ分け方にしておくと、スコアの低い設問と自由記述の件数を横に並べて読めます。

AIへの指示には、どの分類にも当てはまらないときは「その他」、意味が取れないときは「判断できない」と返すよう書いておきます。「その他」が目立って増えたら、AIの読み違いより先に、分類の一覧が自社の言葉に合っているかを疑います。

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AIの分類結果を「組織課題マップ」にする前に、人が読み直す回答

AIの案を件数にする前に、人が読み直す回答は3種類あります。「その他」と「判断できない」が付いた回答、特定の人の言動が書かれた回答、健康や家庭の事情に触れた回答です。後の2つは、件数の1件として扱うより先に、対応が要るかどうかを決めます。

数えずに相談窓口へ回す回答:特定の人の言動が書かれたもの

労働施策総合推進法で、事業主には、職場のパワーハラスメントについて労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制の整備などが求められています。自由記述に「ある課長に毎朝、皆の前で怒鳴られる」と書かれた回答が1件でもあれば、それは職場の雰囲気についての1件ではなく、相談に近い申告として読む必要があります。AIはこの回答を「上司との関係・否定的」に正しく分けるかもしれません。正しく分けられても、件数の1件にしてしまえば、申告は表の中に埋もれます。

ここには、決めきれない点が1つ残ります。匿名で集めた回答を、相談窓口の担当に回してよいかです。回せば対応はできますが、匿名の約束と食い違います。回さなければ、申告を読んだのに何もしなかったことになります。どちらを取るかは調査票を配る前に人事責任者と相談窓口の担当で決め、「特定の人の言動に関する記述は、相談窓口の担当者に共有することがあります」のように説明文に書いておく方が、締切の後で迷わずに済みます。個別の扱いに迷う場合は、社会保険労務士や弁護士など労務の専門家に確かめてください。

重要度×緊急度は、件数と部署の人数を並べてから置く

残りの回答をカテゴリ別に数えたら、重要度と緊急度の2軸に置きます。重要度は、そのカテゴリの否定的な回答の件数と、自由記述全体に占める割合で見ます。緊急度は人が決めます。退職の相談が続いている部署か、同じ内容が前回の調査にもあったかなど、AIが知らない社内の事情で決まるからです。

置き場所 緊急度:高 緊急度:低
重要度:高 すぐ手を打つ(例:上司との関係で、1年前の調査にも同じ記述がある) 計画して直す(例:評価の仕組みへの不満)
重要度:低 様子を見る(例:福利厚生の要望が1つの部署に偏っている) 次の調査で見る(例:社内行事への要望)

件数を並べるときは、部署の人数も横に置きます。10人の部署の3件と、80人の部署の3件は、同じ3件ではありません。この並べ方まで済んだものが、組織課題マップです。

経営層・部門長への報告で、AIの要約をそのまま渡さない箇所

報告で人が選ぶのは、原文と打ち手の案です。AIの要約は件数表の見出しを作るのには向いていますが、要約だけを並べた資料では、読む人に職場の様子が伝わりません。

経営会議には件数表と原文、AIの要約は見出しにだけ使う

経営会議に出す資料は、次の4つで組みます。

  1. 3行のまとめ:自由記述の件数、否定的な回答が多い上位2つのカテゴリ、数えずに相談窓口へ回した件数
  2. カテゴリ別の件数表:肯定・否定・どちらでもないの件数と割合(数字は自社の集計で埋める)
  3. 原文3〜5件:人が選び、言い回しから書いた人が分からないかを確かめたもの
  4. 打ち手の案:重要度と緊急度がともに高いカテゴリから2つまで

冒頭の前提なら、まとめの1行目は「自由記述150件、うち2件は数えずに相談窓口へ回した」のようになります。3つ目の原文は、AIに「代表的な回答を選んで」と頼むより、人が選ぶ方が安全です。AIは文章としてまとまった回答を選びやすく、短く強い一言を落とします。言い回しに出来事や時期が残っていれば、意味を変えずに一般的な言い方へ直してから載せます。

打ち手のたたき台はAIに作らせても、決めるのは経営層

AIの要約は、打ち手のたたき台を作るときにも使えます。ただし、どの打ち手をやるか、予算と担当を付けるかは経営層の判断です。AIの案を「AIが勧めた施策」として会議に出すと、決めた人のいない施策になります。

部門長には自部署の分だけ渡し、少人数の部署は合算する

部門長に渡すのは、自部署の件数と原文だけです。他部署の結果を並べても、自部署の打ち手にはつながりません。回答者が線より少ない部署は、上の組織と合算した数字を渡し、その部署だけの原文は出しません。部門長が自部署の自由記述を読めば、書いた人に見当がつくことがあるからです。

部門長向けの資料は、自部署の上位3つのカテゴリ、それぞれの原文、打ち手の案、次の調査までの期限の4つで足ります。期限を書くのは、段階7で従業員に何を返すかを部門長自身が決めるためです。採用や労務まで含めて人事の仕事をAIでどう分けるかは人事の仕事全体を生成AIで見直す記事で扱っています。

次の調査までの回し方と、社内だけで決めきれない境目

回し方で決めるのは2つです。同じ分類の一覧を使い続けることと、毎回同じものを測ることです。分類を毎回作り直すと、前回との比較ができなくなります。

年1回の本調査と間の短い調査で、同じ分類と同じ指標を使う

年1回の本調査の間に、設問を絞った短い調査を90日ごとに挟む場合も、自由記述の分類の一覧は本調査と同じものを使います。AIへの指示文も同じものを保存しておき、変えたときは変えた日と中身を残します。測る指標は3つに絞ります。

指標 単位 測る人 次の調査で見ること
締切から報告までの日数 日 人事担当 前回より短くなったか
人が直したAIの分類の件数 件/1回の調査 人事担当 減っているか(減らないなら分類の一覧を見直す)
従業員への回答までの日数 日 人事責任者 段階7が抜けていないか

2つ目の、人が直した件数を測るのは、AIの案をどこまで信じてよいかを自社の回答で確かめるためです。この数字が減らないうちは、段階5の読み直しを省けません。

AIに任せない方がよい条件

次のどれかに当たるなら、AIに任せず人が全件を読む方が安全です。自由記述が数十件しかなく、部署が小さく、書いた人に見当がつく場合。匿名と言いながら、記名の設問が同じ調査票に混ざっている場合。AIに入れる列と使うサービスを決める人がいない場合です。3つ目に当たるときは、決める人を置くことが先になります。

社内だけで決めきれない境目

社内だけで線を引こうとすると、止まりやすいところが3つあります。重いのは、数えずに相談窓口へ回す回答の扱いです。匿名の約束と申告への対応のどちらを取るかは人事だけでは決めにくく、相談窓口の担当や労務の専門家を交えて決めることになります。

次に、使うサービスの確認です。入力を学習に使わないか、データをどこに保存するかは契約と設定で決まり、人事担当だけでは確かめきれないことがあります。分類の一覧は、選択式の設問と自社の言葉に合わせて何回か回してみないと固まりません。

3つのうち2つに当てはまるなら、線の設計と分類の一覧づくりだけを社外の目を入れて決め、読み直しと施策の判断は社内に残す分け方があります。人事・労務の仕事にAIをどう入れるかの全体像は人事・労務の効率化のページにまとめています。

ビフォーアフター:自由記述を生成AIで分けると、報告の場はこう変わる

人事担当が手で読み分ける場合

  • 人事担当2人が150件を読み分け、分け方は読む人ごとに違う
  • 特定の上司の言動が書かれた回答も、仕事量や人間関係の1件として数えられる
  • 報告に載せる原文5件は担当の印象で選ばれ、部署が小さいと書いた人に見当がつく
  • 従業員には、次の調査まで何も返らない

4つの線を決めてからAIで分ける場合

  • AIが150件に分類と要約の案を付け、人事担当2人は「その他」の回答と、人の言動・健康に触れた回答を読み直す
  • 部署別の数字は線より少ない部署を合算し、原文は人が選んで言い回しを確かめてから載せる

違うのは、配信前の線と数える前の読み直し

使う調査票も、回答する社員も同じです。違うのは、配信の前に4つの線が決まっているかと、AIの案を数える前に人が読み直す段階があるかの2点だけです。経営会議は、読み分けの苦労を報告する場から、件数と原文を見て打ち手を2つに絞る場に変わります。何をやるか、従業員に何を返すかの判断は、どちらの場合も経営層と部門長に残ります。

この記事のまとめ

  • 次の調査を配る2週間前までに、部署別に結果を出す最小人数と、AIに入れる列の2つを人事責任者が決め、調査票の説明文に書きます
  • 特定の人の言動が書かれた回答を相談窓口の担当へ回すかどうかも、配る前に相談窓口の担当と決めて説明文に入れておきます
  • 今回の調査から、人が直したAIの分類の件数と、締切から報告までの日数を記録しておくと、次の調査で比べられます

監修者|生成AIの導入から定着まで伴走する専門家が確認しています

吉元大輝(よしもとひろき)

株式会社BoostX 代表取締役社長

AI顧問・FDE型AI伴走支援・AIエージェント開発など、生成AIの相談から構築・現場定着までを一社で支援。業務可視化から効果測定まで、企業のAI活用を実務レベルで前に進めている。

2026年10月

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