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建設業の出来高請求をAIで下書き|部分払金の上限式と入金消込の分担

公共工事や約款を使う民間工事で毎月部分払を請求している建設会社の、工事事務・経理・工事部長を念頭に置いています。

前払金の割合を引き忘れた部分払の請求書は、上限を超えて発注者から戻され、そのぶん入金が遅れます。月末には差のある入金の消し込みも重なり、工事事務と経理の手が止まります。約款の上限式と仮の試算、入金の消し込み、月末の未請求残を材料に、計算と照合のどこまでをAIの下書きに回し、どこから先を工事部長と経理が確定するかが、ここで扱う問いです。

管理部門 更新 7分 運営 株式会社BoostX

建設業の出来高請求、部分払金の計算と入金消込をAIに渡す線引き

先に結論

部分払金の上限の試算、請求書の記載事項の欠けの指摘、入金を請求台帳の行と照合する作業は、AIの下書きで足ります。今月どの工事をいくら請求するかは工事部長が決め、差のある入金をどの請求で消すかは経理が1件ずつ決めます。

前払金の額と受けた日が台帳に無い工事は、AIに計算させる前に工事事務が欄を埋めます。欠けたまま出た試算は控除の無い額になるので、工事部長が計算へ差し戻します。

上限の計算より先に回すのは、月末の未請求残の仕分けです。確認待ち・回数待ち・請求漏れの疑いに分ければ、損の大きい出し忘れから見つけられます。

前払金の割合を引き忘れた請求書は、上限を超えて戻される

部分払の請求書が戻される誤りは、式そのものより、前払金の割合や前回までの対象額を入れ忘れる入力の側で起きます。約款第38条第6項の式は、出来形に相応する請負代金相当額に、約款で定めた割合から前払金の割合を引いたものを掛けます。

部分払金の上限 = 請負代金相当額 ×(約款で定めた割合 − 前払金額 ÷ 請負代金額)

割合の欄には、約款の注の例のとおり「十分の九」のように契約ごとの値が入ります。仮に、請負代金額1億円、前払金4,000万円、割合十分の九の工事で、1回目の確認で出来形に相応する額が3,000万円と認められたとします。この仮の試算での上限は、3,000万円×(0.9−0.4)で1,500万円です。

前払金の割合を引き忘れた試算では、3,000万円×0.9で2,700万円の請求書ができます。上限を超えるので、発注者から戻されます。

2回目は同じ条の第7項が適用され、既に部分払の対象になった額を差し引いてから式に入れます。同じ工事で累計の出来形に相応する額が7,000万円になったとすると、3,000万円を引いた4,000万円に(0.9−0.4)を掛けて、上限は2,000万円です。累計のまま式に入れた試算は3,500万円になり、ここでも上限を超えます。

上限の計算に要る値は、工事事務が請求台帳からそろえる

割合・回数・前払金・出来形の額は、工事事務が請求台帳から、下の図の最初の区分「入力」としてそろえます。約款を使わない民間工事は、請負契約書の支払条項から割合と回数を読み取ってから、同じ流れに載せます。

図の要点:出来高請求を入力・AIの計算と照合・人の確認・出力の4つの区分に分けた図。工事事務が支払条項の割合と請求回数の上限、前払金の額、確認の通知書の出来形の額と前回までの対象額、銀行の入金明細をそろえる。AIが上限式で部分払金の上限を出し、請求書の記載事項の欠けを示し、入金を台帳の行と照合して差に理由の候補を付ける。工事部長が請求する工事と額を決めて控除の漏れを計算へ戻し、経理が差のある入金をどの候補で消すかを1件ずつ決め、工事部長が協力会社への支払額と日を決める。出力は発注者指定の様式の請求書と、消し込み済みの請求台帳・仕訳・支払予定表。

控除の漏れは工事部長の確認で計算へ戻す

工事事務がそろえる入力

  • 支払条項(割合・請求回数の上限)と前払金の額
  • 確認の通知書の出来形の額と、前回までの対象額
  • 銀行の入金明細

AIの計算と照合

  • 上限式で今回の部分払金の上限を出す
  • 請求書の記載事項の欠けを示す
  • 入金を台帳の行と照合し、差に理由の候補を付ける

工事部長と経理の確認

  • 工事部長: 請求する工事と額を決め、控除漏れは計算へ戻す
  • 経理: 差のある入金をどの候補で消すか1件ずつ決める
  • 工事部長: 協力会社への支払額と支払日を決める

出力

  • 発注者指定の様式の請求書
  • 消し込み済みの請求台帳、仕訳、支払予定表

前払金の額と受けた日が請求台帳に無いまま計算させると、控除の無い額がそのまま出てきます。図に無いこの欠けは工事部長の確認より前に止めたいので、工事事務がAIに渡す前に、その工事の行に前払金の2つの欄が埋まっているかを確かめます。

上限額の計算は請求台帳の側に置き、会計ソフトには確定した請求と入金だけを渡します。会計ソフトは入金と請求書を照合する道具で、前払金の控除や前回までの対象額を持たない製品もあるからです。

出来高請求は確認の請求から14日の枠で進む

部分払は、請求書からではなく、出来形の確認の請求から始まります。約款第38条の順番では、受注者がまず出来形部分と搬入済みの工事材料の確認を発注者に請求し、発注者は請求から14日以内に検査して結果を知らせます。

確認の結果が届いて初めて、部分払を請求できます。発注者は部分払の請求から14日以内に支払うため、計算を誤った請求書が戻れば、その分だけ入金が後ろへずれます。約款には工期中に部分払を請求できる回数の上限を書く欄もあり、回数を使い切った後に確認の請求を出しても部分払にはつながりません。

どの約款を使うかは契約で決まります。建設業法第19条第1項第5号は、出来形部分に対する支払を定めるなら、その時期と方法を請負契約書に書くよう求めています。支払の時期と方法が契約書に書かれているかは、工事請負契約書の記載事項を15項目で照合する手順で締結前に確かめられます。

確認の請求を出すのは現場代理人で、出来高調書と工程表から、確認を求める出来形をまとめます。請求台帳には、確認の請求日・結果の通知日・請求日・入金日の4つを同じ行に置き、14日の枠を超えた行はそのまま発注者へ問い合わせる材料にします。

請求書の記載事項と写しの保存

請求書の記載事項は、消費税法第57条の4第1項が基準です。発行する側の名称と登録番号、取引の年月日、取引の内容、税率ごとに区分した合計額と適用税率、消費税額等、交付を受ける事業者の名称が並びます。同条第6項で交付した請求書の写しか電磁的記録を保存する義務もあるため、送った請求書の置き場所まで台帳に書いておきます。

協力会社への支払は入金から1月以内

協力会社への支払期限は、建設業法第24条の3第1項が決めています。発注者から出来形部分の支払を受けた元請負人は、その日から1月以内で、かつできるだけ短い期間のうちに下請代金を支払います。入金日が確定しないとこの期限の数え始めも決まらないため、入金日の欄は経理が当日のうちに埋めます。

差のある入金はどう消し込むか?

振込手数料が引かれた入金、2つの工事分がまとめて入った入金、別の取引と相殺された入金。AIが付けるのは理由の候補までで、どの候補で消すかは経理が1件ずつ決めます。

毎回同じ額の手数料が引かれる発注者なら、請求台帳の発注者の欄に手数料の額を書いておきます。経理は、候補の差額と欄の額を照合して確定します。

初めての発注者の入金や、相殺の取り決めがある相手の入金は、候補を採る前に発注者の担当に確かめます。月末の残高の手戻りが少なくなるからです。外れた候補には理由を1行残し、外れが続く発注者から台帳の欄を足していきます。

個人の施主の入金明細を照合に回すとき

民間の個人の施主から入金がある会社なら、入金明細の振込依頼人名は個人データで、金額と日付も請求台帳と照合すれば施主に行き着きます。照合に使う生成AIサービスの運営会社が明細を取り扱わない約束を契約で交わし、運営側で見られる人も限られていれば、明細がサーバに残っても提供には当たりません。

運営会社が明細を扱う契約なら、照合のためだけに扱いを任せる約束かを経理が規約で確かめ、そうであれば預け先を監督します(個人情報保護法第25条)。委託の枠を外れれば第三者提供に入り、振込依頼人の同意なしには渡せません(第27条)。規約で読む点は作業員名簿のAI転記で押さえた確認の順にならい、読み終えるまでは個人の施主の入金を照合に回さず、経理が手で消し込みます。

月末の未請求残を3つに分けて数える

未請求残は、累計の出来形と請求済みの額の差です。ただし、請求できる額と同じではありません。

請求台帳の列 入れる値 月末に見る点
請負代金額・前払金額・割合 請負契約書と前払金の入金記録 上限式の材料がそろっているか
出来形に相応する額の累計 確認の通知書 前回からの増分
部分払の対象額の累計 過去の請求台帳 2回目以降の控除に使う
4つの日付 確認の請求・通知・請求・入金 14日の枠を超えた行
未請求残 累計の出来形と請求済みの差 確認待ちか、回数待ちか、請求漏れか

【説明用の架空の記入例】

  • 請負代金額・前払金額・割合

    1億円・4,000万円・十分の九(最初の章の仮の試算と同じ工事)
  • 出来形に相応する額の累計

    7,000万円(2回目の確認の通知書)
  • 部分払の対象額の累計

    3,000万円
  • 4つの日付

    確認の請求 6月2日/結果の通知 6月12日/請求 未記入/入金 未記入
  • 未請求残の印

    通知は届いているのに請求日が空いているので「請求漏れの疑い」

日付は書き方を示すための架空の値です。この行なら、工事部長は確認の通知書と照合して、出し忘れか、今月の請求に回す予定かを決めます。

表の最後の行が、月末に工事部長が判断する所です。未請求残には、確認の結果を待っている分、請求回数の上限で次回に回す分、請求を出し忘れている分が混ざっています。AIには未請求残の行を「確認待ち」「回数待ち」「請求漏れの疑い」に分けて印を付けさせ、工事部長が全行の印を契約書類と照合します。

この仕分けは、計算式を入れる前でも台帳の4つの日付がそろえば回り、損の大きい請求漏れから先に見つけられます。「請求漏れの疑い」の件数と本当に出し忘れていた件数の差はAIの印の正確さを表し、差が大きい月は印の付け方より台帳の日付の欠けを疑います。

消込の外れが発注者ごとにばらつく会社は、照合を外部と組む

上限の試算、記載事項の点検、未請求残の仕分けは、工事事務と経理が請求台帳を生成AIサービスに渡す形で社内で回せます。どれも台帳の列から計算と印付けができ、確定は工事部長と経理の手に置いたままにできるからです。

その前提は、請求台帳が工事番号で1枚にまとまっていることです。台帳が現場ごとの表計算に分かれている会社では、前払金や前回までの対象額を工事番号で探せず、会計ソフトの消込を広げてもAIに試算させても控除の漏れが残ります。入金を会計ソフトの銀行連携でほぼ取り込めている会社は、台帳をまとめた後でその消込機能を広げるのが近道です。

部分払の定めが無く、完成時の一括払いで終わる工事が中心の会社は、上限額の計算にAIを入れても使う場面がほとんどありません。入金の照合だけを先に試します。案件ごとの粗利と出来高を毎月見比べる運用は、実行予算の予実管理で使う数字と同じ工事番号でつながり、受け取る側の協力会社の請求書の保存は、協力会社請求書の受付台帳と電子保存の業務です。

経理が外れた候補に残す理由の1行は、外部と組むかを決める材料になります。理由が手数料の額や相殺の取り決めのように台帳の欄で吸収できるものなら、欄を足すだけで済みます。発注者ごとに理由がばらばらで、照合のたびに経理が発注者の担当へ確かめる月が続くなら、銀行明細と請求台帳をつなぐ消込の仕組みを、AIエージェント開発のような外部の開発と比べます。

上限額の計算をAIへ渡すのは、出し忘れが0件の月が続いてから(たとえば2か月続いてから)にします。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 工事事務

    請求台帳の工事ごとの行に、確認の請求・通知・請求・入金の4つの日付と、前払金の額と受けた日を埋める

    次へ進む目安進行中の全工事で、4つの日付と前払金の2つの欄が空いた工事が0件になった

  2. 担当 工事部長

    月末の締めで、未請求残の行に付いた3種類の印を、注文書・約款・確認の通知書と1行ずつ突き合わせる

    次へ進む目安出し忘れを疑った件数と、実際に出し忘れていた件数の2つが台帳の欄外に並んだ

  3. 担当 工事部長

    出し忘れが0件の月が続いたら(たとえば2か月)、上限額の試算をAIに渡し、工事事務が台帳の値で検算する

    次へ進む目安AIに渡した最初の月の、発注者から戻された請求書の件数が台帳に残った

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出典

  1. 公共工事標準請負契約約款(令和7年12月2日改正)(第38条第3項・第5項・第38条第6項・第38条第7項) 中央建設業審議会(国土交通省掲載) 確認日 2026.09.28
  2. 建設業法(昭和24年法律第100号)(第19条第1項第5号・第24条の3第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  3. 消費税法(昭和63年法律第108号)(第57条の4) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  4. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第25条(委託先の監督)・第27条(第三者提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  5. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」(Q7-53・Q7-54) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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