建設の案件別粗利が見えない原因は注文済みの未請求と残工事の単価にある
月次の採算会議に着地見込みを出す工事部長と、表を作る工務、原価を締める経理の3人で読み合わせてほしい内容です。
毎月の締めで原価の数字は合っているのに、竣工の月になって案件の粗利が下がることがあります。締めた原価が正しくても、着地見込み表に載っていない金額があれば、粗利は良く見えたまま月をまたいでいきます。表から漏れていたのはどの金額で、次の締めまでにどの欄を足せば見えるようになるのでしょうか。

先に結論
案件別の粗利が竣工の間際まで見えないのは、注文済みで請求前の外注費と、着工時の単価で据え置いた残工事が、着地見込み表に載っていないためです。表には「注文済み・未請求」の列と、今月の見積の有無で分けた残工事の2行を足します。
見積の無い工種の残工事は現場代理人が工程表から書き、会議へ出す数字と前月との差の説明は工事部長が確かめます。協議中の変更額は契約金額に含めず、備考に置いて、発注者と合意した月に契約金額の欄へ移します。
生成AIに下書きさせるのは、注文書と請求書を突き合わせて請求の無い注文を並べる作業、請求明細の費目への振り分け、見積を取り直した工種の掛け算までです。AIが並べた未請求の行は、工務が注文書の原本で取消と減額の有無を確かめるまで着地に入れません。
締めた原価と前月の上書きで作る表には、入る欄が無い
月次の着地見込み表を締めた原価と前月の見込みの上書きで作っていると、締めの外にある金額は入る場所がありません。型枠の追加を月末に注文しても、協力会社の請求が翌月なら、その金額は今月の原価台帳に載らず、案件別の粗利は実際より良く見えます。
一つは、注文済みで請求が届いていない外注費です。注文書と注文請書は現場の綴りに残り、工務が締めの日に「今月の注文は」と電話で聞き取るまで表の外に残ります。聞き漏れた注文は、翌月に請求書が届いて初めて原価になります。
もう一つは、これから施工する分の原価です。残工事の欄を前月の表から写して上書きすると、着工時の単価が月をまたいで残ります。
たとえば竣工まで3か月の現場で、月次の会議の着地見込みが初めて赤字に転じたとします。工務は先月まで予算内だったと言い、現場代理人は生コンの単価が上がっていたと言います。どちらの言い分も、表に載っていなかった金額の話です。
超えてしまった後で、単価の差・数量の差・注文書に無い追加を分ける作業は、予算超過を注文書の行と突き合わせて要因に振り分ける手順の側にあります。着地見込みは、その手前で超過に気づくための表です。
着地見込み表でAIが下書きする欄も原本で確かめて載せる
AIの下書きが入る欄も、請求明細・注文書・今月の見積の原本と見比べてから表に載せます。下書きのまま載せると、取消になった注文や着工時の単価が、見込みの数字に紛れ込むからです。
図の要点:月次の着地見込み表1工事分の記入例。契約金額は当初の代金と合意済みの変更額で人が書き、協議中の額は備考に置く。発生原価は請求明細を費目に振った下書きをAIが作り工務が確定する。注文済み・未請求の行と、今月の見積がある残工事の掛け算はAIが下書きし、見積の無い残工事は現場代理人が工程表から書く。着地見込み原価と粗利はAIが合計し、前月との差の理由は現場代理人、会議へ出す文は工事部長が書く。
月次の着地見込み表(1工事分・記入例)
- 契約金額
- 当初の代金+合意済みの変更額(協議中は備考)人が確定
- 発生原価(今月の締め)
- 請求明細を費目に振った下書き、工務が確定AI が下書き
- 注文済み・未請求
- 型枠の追加(今月25日の注文・請求は来月)AI が下書き
- 残工事(今月の見積あり)
- 鉄筋の残り=残数量×取り直した単価AI が下書き
- 残工事(見積なし)
- 仕上げの残り、現場代理人が工程表から書く人が確定
- 着地見込み原価と粗利
- 原価4欄の合計と、契約金額との差・率AI が下書き
- 前月との差の説明
- 理由は現場代理人、会議へ出す文は工事部長人が確定
契約金額の欄は、発注者と合意した変更契約の額だけで埋めます。協議中の額を足すと粗利が先に良く見えるので、その額は備考に置き、合意した月に欄へ移します。
「注文済み・未請求」の行は、工務が注文書の原本と見比べ、取消や減額が無いかを現場代理人に確かめてから載せます。残工事の2行は、今月取り直した見積があるかどうかで分け、見積の無い工種にAIの掛け算を入れません。
原価台帳に工種と費目のコードが振られておらず、請求書の品名が協力会社ごとにばらばらな会社では、発生原価の振り分けがほとんど当たりません。その場合は、工務が費目のコード表と品名の対応表を先に作ります。
注文済みで請求前の外注費を着地見込みに載せる
着地見込み表に「注文済み・未請求」の列を足すと、請求が翌月になる注文も今月の表に載ります。材料は、その工事の注文書と注文請書の一覧と、締めに入った協力会社の請求書です。生成AIには両方を工事番号と取引先で突き合わせさせ、請求の無い注文を金額付きで並べさせます。
一覧に出てこない注文もあります。電話で頼んだ追加は注文書が無いため、AIには見えません。代理人に口頭の注文が無いかを聞く手間は、列を足した後も残ります。
注文書が現場ごとの紙の綴りでしか保管されていない会社では、AIに渡す一覧そのものが作れません。その場合は、着工の時点から注文書の控えを1部、本社の共有フォルダに置く決まりを先に作ります。
請求の日付が出来高の月とずれて、今月だけ原価が膨らんで見える分もあります。未計上とは逆向きのずれで、経理が締めの前に見つけて、その月の発生原価から外しておきます。
一人親方の請求書のように、個人の氏名や口座が書かれた請求書も混ざります。社外のAIサービスへ送る前に確かめる契約の中身は、原価管理の読み取りを外に出すか社内で組むかの判断の中でまとめて確認できます。こうした請求書が多い工事は契約の確認が先に挟まるので、列を足す1件目には選びません。
未請求の列は、注文書と請求書がそろえば、その月のうちにAIの突き合わせで一覧が出ます。7つの欄のうち最初の締めで結果が見えるのはこの列で、注文書の控えが本社にそろっている工事なら次の締めに間に合います。
列を足した効果は、請求書が届いて初めて存在を知った注文が、翌月の締めにどれだけ残るかに出ます。列を足す前の月と件数・金額で並べれば、表の外に残っていた金額がどれだけ減ったかが工事部長に見えます。
残工事の原価は、現場代理人が今月の見積から書く
残工事の欄を書くのは現場代理人です。工程表と、今月取り直した協力会社見積を手元に置き、残る工種ごとに数量と単価を書きます。
生成AIに過去の単価と残数量を掛けさせれば、数字はすぐに出ます。ただし掛けた単価が着工前のものなら、値上がりはそのまま見落とされます。2026年3月の東京の価格では、生コンクリートが前年同月から14.5%、セメントが12.6%上がっていました。この上がり幅なら、躯体の残りで打つ生コンだけでも着地が動くので、躯体の工種は見積を取り直してから掛け算に回します。
値動きの小さい資材の工種まで毎月取り直すと、協力会社と購買の手間が着地の精度に見合いません。どの工種を掛け算に回すかは、その月の資材の値動きと、残工事に占めるその工種の金額の大きさで入れ替わります。工事部長と現場代理人が締めの前に対象の工種を決めて備考に書いておけば、翌月の表を作る工務が同じ判断を繰り返さずに済みます。
出来高の比率で割り戻した着地は甘く出る
発生原価を出来高の比率で割り戻して着地とする計算は、資材の値上がりを取り込めません。たとえば出来高が4割の月なら、発生原価を0.4で割る式です。計算は速く、毎月の数字もそろいます。
けれど、この式が使うのは過去の発生原価だけです。基礎や躯体の段階で出来高が進むほど、これから打つ生コンの値上がりは式の外に残ったまま、着地の数字が固まっていきます。
割り戻しで着地を出している現場は、今月に見積を取り直した工種を1つ選び、現場代理人が書いた残工事の額と並べてみます。差の大きい工種から、残工事の欄を「見積あり」と「見積なし」に分けて書き直します。
資材の値上がりを変更協議につなげる記録は、表の備考に残す
値上がりで着地が悪化したとき、発注者に代金の変更の協議を申し出るときの拠り所になるのは、契約書の定めと、値上がりを知らせた記録です。記録のほうは、毎月の着地見込み表の備考に書き残せます。
建設業法第19条第1項第8号は、価格等の変動に基づいて請負代金の額をどう変え、その額をどう算定するかの定めを、契約書に書く事項の一つにしています。第20条の2第2項は、資材の価格の高騰などが起きるおそれがあると認めるとき、建設業者が契約の締結までに注文者へ通知するよう求めています。
通知をした建設業者は、契約後にその事象が起きたとき、第8号などの定めに従った代金の変更の協議を申し出られます(同条第3項)。申出を受けた注文者は、根拠を欠くなどの正当な理由が無ければ、誠実に協議に応じるよう努めなければなりません(第4項)。
契約前の見積の段階で通知を出すかどうかが、後の協議の材料を左右します。契約前に注文者へ通知しておく段取りは、追加工事の変更を着工前に書面にする手順でも、協議に備える準備として出てきます。
令和7年度に国土交通省が建設企業に聞いた調査では、物価等の変動に関する契約変更条項がある請負契約は54.9%でした。値上がりを受けて契約変更の協議をした企業は全体の約4割で、そのうち約9割は全部か一部の変更に至っています。主に民間工事について聞いた結果で、条項が無い契約が半数近く残る以上、備考の記録は自社で持っておく必要があります。
着工後に気づいた値上がりは、契約書に第8号の定め(物価の変動に応じて代金を変える条項など)があれば、その条項に沿って協議を求める材料になります。どちらの場合も、着地見込み表の備考に、値上がりに気づいた月と工種、見積を取り直した日を残しておくと、協議に出す材料がそろいます。
請求書で初めて知る注文が減らないとき、誰と直すか?
列を足した後も、請求書で初めて知る注文の件数が減らない現場があります。経理が数えた件数をたとえば2か月分並べ、どちらの月も減っていなければ、注文書の控えが本社に届く前に請求が来ています。その現場とは、着工時に控えを本社へ送る決まりを現場代理人と結び直します。減った工事では、同じ列を次の工事の表へ足します。
決まりを結び直しても控えが集まらない会社では、注文を出す現場、請求を受ける経理、表を作る工務の間で、注文書の写しの持ち主が決まっていません。持ち主と置き場を3つの部署で決め直す話は、工務だけでは進みません。外部の担当者が各部署に入るFDE型AI伴走支援を頼むか、自社の会議で決め切るかを、工事部長が比べて選びます。
明日から始める3ステップ
担当 工務
注文書の控えが本社にそろう進行中の工事を1件選び、着地見込み表に「注文済み・未請求」の列を足す
次へ進む目安次の締めで、請求の無い注文がAIの突き合わせで金額付きの一覧になった
担当 現場代理人
締めの前に、残工事の工種ごとに今月の見積があるかを印で付け、見積の無い工種は工程表を見て額を自分で書く
次へ進む目安見積の無い工種の行に、着工時の単価を掛けた額が1つも残っていない
担当 経理
請求書が届いて初めて知った注文を翌月の締めで件数と金額で数え、採算会議の資料に載せる
次へ進む目安列を足す前の月と並べた件数と金額が、採算会議の資料に載った
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BoostXは、建設会社の積算・日報・安全書類へのAI導入を支援しています
01無料相談
積算・日報・安全書類から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 国土交通省 不動産・建設経済局建設業課「参考資料集」(令和8年4月3日)p.34 主要建設資材の価格推移(生コンクリート)・p.34 主要建設資材の価格推移(セメント) 国土交通省 確認日 2026.09.29
- 国土交通省「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査(令和7年度)」調査結果(建設企業)概要(契約変更条項のある請負契約・契約変更の協議) 国土交通省 確認日 2026.09.29
- 建設業法(昭和24年法律第100号)(第19条第1項第8号・第20条の2第2項〜第4項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
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