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建設業の契約書はAIで作れる?記載事項15項目の照合と弁護士に回す案件

工事請負契約書と協力会社への注文書・請書を総務が見積書と内示メールから打ち替えて作り、相手方の約款を受けるかと押印は決裁者が決めている建設会社を前提にしています。

月末に受注が重なると、総務は前の案件の契約書を複製して工事名や代金を打ち替え、読み合わせに追われます。AIを使えば早くなりそうでも、契約書をAIで作ってよいのか、どこまで任せてよいのかが分からないままでは手を付けられません。建設業法第19条の原文と、法務省が令和8年8月に示した整理をもとに、AIに回す作業と総務・決裁者・弁護士に残す判断の境目を確かめます。

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工事請負契約書のAI下書きは、法定16項目の照合までを任せる

先に結論

契約書の条項はAIに書き換えさせず、ひな形への工事名・代金・工期の差し込み、建設業法第19条第1項の記載事項がどこに書かれているかの一覧、締結後の契約台帳の下書きに使います。

一覧で記載ありと出た欄も、総務が条を開いて中身を読みます。見当たらない欄が本当の不足かは総務が判断し、相手方の約款を受けるかと押印は法務・決裁者が決めます。

紛争になった案件の覚書や和解の書面は弁護士の領分とし、見積書の最終版が定まらない案件は総務が確かめ終えるまで差し込みを始めません。

記載ありと出た欄でも、古い支払条件は締結まで通る

15項目の照合は、記載があるかを見るものです。前の案件の書面を元に差し込み、支払条件の欄だけが古いまま締結される失敗は、照合を通ってしまいます。出来形払の時期が前の工事のままなら、請求の時期が契約とずれ、経理が入金予定を組めません。

第8号も同じ構造です。資材の値動きで代金を変えるときの算定方法は、「協議のうえ定める」の一行でも一覧では記載ありになります。自社を守る書面かどうかは、その一行を開いて読んで初めて分かります。締結後に出来高請求の台帳へ移すときも、支払条件の欄を原本と見比べます。

締結の後に覚書で直した契約の件数は、照合の一覧で記載ありと出た欄の中身を読み落とした数として表に出ます。総務が差の表示で見つかった値の食い違いの数と並べると、漏れたのが差し込みの工程か、条を開いて読む工程かが分かれます。

照合する号が第1号から第4号に限られる基本契約型の注文書なら、覚書の件数が増えたときも、どの号で漏れたかを1つずつ追えます。基本契約型で覚書の件数が翌月に増えなければ、約款型の注文書へ照合を広げます。増えた月は広げず、漏れが出た工程のやり方を直します。

AIが触るのは差し込みと一覧、締結後の台帳の下書き

契約書づくりの11工程で生成AIが手を入れるのは、ひな形への差し込み、記載箇所の一覧づくり、締結後の契約台帳の下書きの3つに限ります。条項の文言まで書き換えさせると、どこが元の条文だったかを誰も追えなくなるからです。

図の要点:営業・工事部長、総務、生成AI、法務・決裁者の4つの担当で、内示から帳簿への添付までの11工程を並べた図。営業・工事部長が見積書の最終版と内示メールを渡し、総務が結ぶ形を決める。生成AIがひな形に工事名・代金・工期を差し込み、総務が見積書と照合して値が違えば営業・工事部長へ戻す。生成AIが15項目の記載箇所と見当たらない欄を一覧にし、総務が条を開いて読み、本当の不足は条を足して作り直す。法務・決裁者が相手方の約款との違いを読み、締結して押印する。総務が交付と帳簿への添付を受け持つ。

記載ありの欄も総務が条を開いて読むまで、押印へ進めない

営業・工事部長

総務

生成AI

法務・決裁者

  1. 営業・工事部長

    見積書の最終版と内示メールを総務へ渡す

    工事名・代金・工期の正はこの2つ

  2. 総務

    契約書・基本契約型・約款型のどれで結ぶか決める

    基本契約の期限切れは結び直す

  3. 生成AI

    ひな形に工事名・代金・工期を差し込む

    前回の書面との差も並べる

  4. 総務

    差し込んだ値を見積書の最終版と照合する

    戻す値が違えば営業・工事部長へ

  5. 生成AI

    15項目の記載箇所と見当たらない欄を一覧にする

    条件付きの4つは別の欄

  6. 総務

    記載ありの欄も条を開いて中身を読む

    戻す本当の不足は条を足して作り直す

  7. 法務・決裁者

    相手方の約款との違いを読み、受けるか決める

    紛争になった案件は弁護士へ

  8. 法務・決裁者

    稟議で締結を決め、署名か記名押印をする

    紙なら印紙の額も確かめる

  9. 総務

    相互に交付し、戻らない書面を日数つきで追う

    未締結のまま着工させない

  10. 生成AI

    締結した書面から契約台帳の1行を下書きする

    支払条件と工期の欄

  11. 総務

    台帳の支払条件を原本と照合し、帳簿に添付する

    引渡しから5年、住宅の新築は10年

内示の後で見積書が差し替わった案件は、図の順どおりには進みません。差し込みの元になる最終版がどれかを総務が営業・工事部長に確かめるまで、AIには差し込ませません。

材料として生成AIに渡すのは、見積書の該当ページ、内示メールの本文、選んだひな形、前回同じ取引先と結んだ書面です。支払の時期と方法は、実行予算の支払計画と合うかを経理と工事部長も見ます。

建設業の契約書をAIで下書きしてよいか?

下書きの道具が何であっても、建設業法第19条第1項の義務は契約の当事者に残ります。発注者と受注者の双方が、定められた事項を書面にし、署名か記名押印をしたものを互いに交付します。条文が求めているのは当事者が書面にして交付することで、下書きにどの道具を使うかまでは定めていないため、AIを使うこと自体は妨げられません。

AIの側の考え方は、法務省が令和8年8月21日に公表したガイドラインで整理し直されました。事業者が使う法務支援のサービスについて、生成AIを含めて弁護士法第72条との関係を示したものです。通常の業務に伴う書面の作成・審査・管理の支援は、紛争が顕在化した案件などに使わせる設計でない限り、価値中立的なサービスといい得るとしています。

一方で、法的紛議が現に顕在化している案件の書面は別扱いです。訴状や和解契約書のような書面を作る使い方は、同条に抵触し得るものとして例に挙がっています。このガイドラインが直接扱うのはサービスを提供する側ですが、総務が道具を使う範囲を決める目安にはなります。追加工事の代金でもめて覚書や和解の書面を作ることになったら、AIの下書きで進めずに弁護士へ相談します。

施主の氏名と住所が載る書面を渡すとき

個人の施主と結ぶ住宅の契約書を渡すなら、前回の書面にも施主の氏名と住所が載っています。規約や契約に、サービス側が契約書を取り扱わない定めがあり、運営会社の社員の閲覧も制限されていれば、書面がサーバに置かれても提供自体に当たりません。

差し込みのためにサービス側が書面を扱うなら、差し込みの目的の範囲で扱いを任せる契約かを総務が読みます。その形であれば、会社はサービス側への監督を負います(個人情報保護法第25条)。住宅の新築の契約書は引渡しから10年残すので、サービス側に書面が何日残り、解約後に消えるかも総務が読んでおきます。

委託の範囲を超えて渡すなら第三者提供にあたり、施主本人の同意が必要になります(第27条)。施主名と住所を伏せても、工事名や工事場所から施主に行き着く書面は個人データのままです。確かめ終えるまでは、住宅の案件の書面をAIに渡さず、総務が手で差し込みます。

第19条の記載事項15項目を照合の欄にする

照合の一覧は、第19条第1項の号の並びをそのまま欄にし、「必ず書く」と「定めがあれば書く」に分けておきます。表の右の列が、その号を総務がどちらで扱うかです。

号 事項 照合での扱い
第1〜3号 工事の内容、請負代金の額、着手と完成の時期 必ず書く
第4号 施工しない日・時間帯 定めをするときに書く
第5号 前金払・出来形払の時期と方法 定めをするときに書く
第6号 設計変更・着手の延期・中止の申出時の変更 必ず書く
第7号 不可抗力による工期の変更と損害の負担 必ず書く
第8号 価格等の変動による変更と、その算定方法 必ず書く
第9号 第三者への賠償金の負担 必ず書く
第10号 注文者が提供する資材・貸与する機械 提供・貸与するときに書く
第11号 完成の検査の時期と方法、引渡しの時期 必ず書く
第12号 完成後の支払の時期と方法 必ず書く
第13号 契約不適合の担保責任や保証保険などの措置 定めをするときに書く
第14号 遅延利息・違約金その他の損害金 必ず書く
第15号 紛争の解決方法 必ず書く

条件の付いた第4号・第5号・第10号・第13号は、書面に無くても直ちに不足とは言えません。欄を分けておけば、総務が見当たらない理由を追う先を、条件の付かない11の欄に絞れます。

第6号は工期・代金の変更と損害の負担を、第7号は工期の変更と損害の負担を、それぞれの額の算定方法まで含めて書く定めです。第10号は、資材や機械の内容と方法を書きます。

第16号の「国土交通省令で定める事項」は、国土交通省のガイドラインが挙げる記載事項の①〜⑮に入っていないため、照合の欄からは外します。契約の途中で中身を変えるときも、第2項が同じく書面と交付を求める仕組みです。

現場で受けた口頭の追加指示を書面へ移す段取りは、追加の指示を変更の書面にする話に続きます。締結した書面は、施行規則第26条第2項で営業所の帳簿に添付します。第28条第1項の保存期間は引渡しから5年、発注者と結んだ住宅の新築なら10年なので、契約台帳の保存期限の欄はこの2つの年数で分けます。

協力会社の注文書と請書は2つの形のどちらかで済ませる

協力会社への発注を注文書と請書で回すなら、建設業法令遵守ガイドライン(第12版)が示す2つの形のどちらかに合わせます。一つは、基本契約書に第5号から第15号を書いて交わし、個々の注文書・請書には第1号から第4号と、ここに無い事項は基本契約書による旨を書く形です。もう一つは、同じ約款を注文書と請書の双方に添付か印刷して交換する形です。

どちらの形でも、注文書には注文者が、請書には請負者が署名か記名押印をします。約款型で書面が複数枚になるなら割印も必要です。基本契約型は、注文者が消費者でなく、対等な関係と反復継続的な取引実績を基本契約の締結時に確かめ合っていれば、注文書と請書の署名・記名押印を省けます。

照合の相手は、この形で変わります。基本契約型なら注文書で照合するのは第1号から第4号、約款型なら添付の約款までです。どちらの形の取引先かを契約台帳の欄で先に決めていないと、照合は毎回、照合する相手を探すところから始まります。

電子で交わすには、第19条第3項で相手方の承諾が要ります。令和6年度の国の調査では、全て書面で契約している建設会社が83.0%でした。協力会社から戻る請書も、紙か紙を読み取ったPDFで届く前提で照合を組みます。

契約書AIの道具は書面の届き方と差を読む人で選ぶ

どの道具を先に入れるかは、協力会社の請書が紙で戻るか電子で戻るかと、差を読む人が社内にいるかで決まります。契約書に使うAIは、汎用の生成AI、契約審査の専用サービス、電子契約サービスのAI機能の3系統です。

契約書AIの道具ごとの公式の料金

道具 公式の料金 合う会社
汎用の生成AIの法人向けプラン 1人ごとの月額 ひな形が少なく、差を読む総務がいる
クラウドサイン Light 月額11,000円+送信1件220円(税別) 注文書・請書を電子で回す先が多い
GMOサイン ライト 月8,800円(年間契約・税別) 締結と、オプションの審査を1つの画面にまとめたい

汎用の生成AIは、各社の料金ページで年払いと税の扱いをそろえて比べます。クラウドサインのLightは税込で月額固定12,100円と送信1件242円で、契約は当初1年です。GMOサインのライトは、年間契約で月8,800円(税込9,680円)、単月契約なら月9,500円(税込10,450円)です。

表の3行はどれも、差を読む人の手を減らすものではありません。クラウドサインのLightは、料金表の上でAI契約書管理機能(送信時)に対応しています。GMOサインは、作成からレビュー、締結、管理までをまとめる契約レビューのオプションを月額50,000円〜(税込55,000円〜)で用意しています。契約審査の専用サービスは、料金を見積で確かめてから比べます。

紙の請書が中心なら、電子契約サービスだけを広げても、紙の分の照合と台帳づくりは残ります。紙で交わす工事請負契約書には印紙税がかかります。令和9年3月31日までに作る記載金額100万円超の請負契約書は軽減措置の対象なので、決裁者が押印するときに額を確かめます。

ひな形が1本にまとまり、相手方の約款で結ぶ案件も無い会社に、照合の仕組みは向きません。読み合わせがもともと短く、組む手間のほうが大きくなるので、差し込みと前回との差の表示だけを使います。入力してよい情報の決め方と、法人向けプランのアカウントの選び方は、全社で使う生成AIツールの選び方と共通です。

見積書の最終版の受け渡しは、外部と組んで直す

社外へ出す先は、書面の中身で変わります。ここから下は、もめていない通常の契約書を誰と組んで回すかの話です。

総務の机で決まるのは、ひな形の数を絞ることと、契約台帳に結ぶ形の欄と、食い違いと覚書の2つの列を足すことです。差し込みと差の表示は、汎用の生成AIの法人向けプランがあれば試せます。

覚書で直す件が同じ取引先で重なるなら、抜けの元は差し込みより前にあります。見積書の最終版が営業・工事部長から総務へ渡るときに、古い版が混ざっていると読めます。この受け渡しの抜けは、総務が読み方を変えても直りません。

最終版の置き場と渡し方を営業・工事部・総務・経理で決め直し、差し込みから台帳までを1本につなぐことになると、関わる部署が4つに増えます。ここで初めて、複数の部署を外部の担当者と一緒に動かすFDE型AI伴走支援が選択肢に上がります。約款型の取引先が多く、照合する約款が相手ごとに違う会社も、照合の欄を相手別に持つ作りになるので同じ側に入ります。

明日から始める3ステップ

  1. 担当 総務

    最初の1社として取引の多い協力会社を決め、契約台帳でその相手を基本契約型か約款型かに振り分ける

    次へ進む目安次の注文書で、照合する号の記載箇所をAIが一覧にし、総務が条を開いて読み終えた

  2. 担当 総務

    契約を1件交わすごとに、差の表示で見つかった値の食い違いの数と、締結後に覚書で直したかを契約台帳の列に埋める

    次へ進む目安その月に交わした契約の行で、2つの列が空欄なく埋まった

  3. 担当 工事部長

    月末に2つの列を取引先ごとに並べ、覚書が重なった相手は見積書の最終版を受け取る手順で抜けた中身を探す

    次へ進む目安覚書の件数が翌月に増えなかった取引先の型から、約款型の注文書へ照合を広げた

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出典

  1. 建設業法(昭和24年法律第100号)(第19条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  2. 建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)(第26条第2項・第28条第1項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  3. 建設業法令遵守ガイドライン(第12版)-元請負人と下請負人の関係に係る留意点-国土交通省 不動産・建設経済局建設業課 確認日 2026.09.28
  4. 国土交通省 不動産・建設経済局建設業課「参考資料集」(令和8年4月3日)国土交通省 確認日 2026.09.28
  5. 法務省大臣官房司法法制部「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」(令和8年8月21日)本文(価値中立的なサービス提供)・注13 法務省大臣官房司法法制部 確認日 2026.09.28
  6. クラウドサイン 料金プラン弁護士ドットコム株式会社 確認日 2026.09.28
  7. 電子印鑑GMOサイン 料金プラン(ライト・契約レビューオプション) GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 確認日 2026.09.28
  8. 国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置(適用期間・対象の契約書) 国税庁 確認日 2026.09.28
  9. 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第25条(委託先の監督)・第27条(第三者提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.28
  10. 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」(Q7-53・Q7-54) 個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29

編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり

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