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完成・保守

竣工図書の取りまとめはどこまでAIに渡せるか|費用の考え方

竣工図書の取りまとめは、提出様式の確認から引渡しまでの8工程に割れます。

編集 BoostX編集部2026.05.287分で読めます

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この記事の要点

  • 竣工図書の取りまとめは、提出様式の確認から引渡しまでの8工程に割れます。
  • AIが担うのは目録の下書き、未提出の洗い出し、旧版の突き合わせ、目次と通し番号の整形までです。
  • 完成図とする版の確定と提出範囲の決定は、現場代理人と工事部長に残ります。

この業務に手を付ける価値は、書類が紙と電子に分かれたまま完成検査へ向かう構造にあります。国土交通省の参考資料集(令和8年4月3日)では、契約書類を全て書面でやり取りする会社が83.0%、一部電子が15.3%、全て電子は1.7%です。同じ資料では建設業の年間出勤日数が全産業より10日多く、その超過分の一部が完成前後の書類作業に乗ります。金額の公表値は無いため、製本の外注費と再提出で戻った日数を、直近3件から拾うところから始めます。

竣工図書の取りまとめは会社のどこに置かれているか?

完成検査の直前になると、現場代理人と工事事務の机の上に同じ案件のファイルが積み上がります。この山の中身が竣工図書です。竣工図書とは、工事完成時に発注者へ引き渡す完成図・検査記録・取扱説明書などの書類一式を指します。工事そのものではなく、工事が終わったことを証明する書類の束だと考えると、誰が何を持っているかが見えてきます。

この記事の要点

  • 取りまとめは8工程に割れ、時間が乗る工程と責任が乗る工程は別の場所にあります。
  • AIが担うのは集める・比べる・並べるまでで、完成図とする版の確定は人に残ります。
  • 着手は「不足と旧版の洗い出し」から始めると、誤りが提出前に見つかります。

担当は現場代理人と工事事務で、案件によっては製本を外注に出します。起点は完成検査の日程が決まった時点で、入力は施工図、検査記録、写真台帳、機器の取扱説明書、保証書です。出力は竣工図書一式と、アフター部門へ渡す物件フォルダになります。使う道具は共有フォルダ、Excelの目録、発注者の指定様式、電子納品の要領です。例外は改修案件で、既存部分の完成図が無いまま引渡しを迎えることがあります。

この記事では、取りまとめが完成検査前の2週間に集中することを前提として置きます。竣工が月末に重なる会社や、引渡し後に書類を締める会社では、後述の試行の時期が変わります。

この業務に手を付ける価値は、書類が紙と電子に分かれたまま完成検査へ向かう構造にあります

完成検査前の8工程を時系列に割る

「竣工図書をまとめる」という一語で見ていると、どこに人手が要るのか分かりません。8工程に割ると、催促に時間が溶ける工程と、判断の責任が乗る工程がはっきり分かれます。量と時間の欄は公的統計に無いため、自社で測る欄として置いています。

工程 担当 使う帳票・システム 量か時間 詰まるところ
1 提出様式と目録を確認する 現場代理人 契約図書、特記仕様書 発注者が変わるたび 様式が案件ごとに違う
2 依頼先を割り当てて依頼する 工事事務 施工体制台帳、メール 依頼先の数に比例 誰に何を頼んだかが散る
3 協力会社とメーカーから集める 工事事務 共有フォルダ、紙の書類 完成2週間前に集中 催促の往復が読めない
4 不足と旧版を洗い出す 現場代理人 目録、図面の更新履歴 ファイル数に比例 同じ図面番号で版が複数
5 目次と表紙を作り様式に整える 工事事務 発注者の様式、命名規則 手作業の中心 並べ替えと通し番号
6 製本とPDFを仕上げる 工事事務、製本外注 製本の外注先、電子納品 外注の納期が乗る 最終版の取り違え
7 社内確認と提出、指摘に対応する 現場代理人、工事部長 提出一式、指摘書 指摘の件数に比例 指摘がどの書類か探す
8 アフター部門へ引き渡す 現場代理人、アフター担当 物件フォルダ、保証書 引渡し後に一度 渡し方が決まっていない

同じ8工程を、AIが担えることと人が持つことで並べ直します。AIが返すのは一覧と下書きで、提出物そのものの責任は負いません。

工程 AIが解決すること 人が決めること 失敗したときの損失
1 契約図書と特記仕様書から提出書類の一覧を下書きし、過去の似た発注者との差分を並べる 提出範囲の決定 目録の取り違えで提出直前に書類が足りない
2 依頼先ごとの依頼文と、期限を入れた依頼一覧を下書きする 依頼先と期限の割り当て 依頼漏れが完成間際の催促に化ける
3 届いたファイルを目録の項目に対応づけ、未提出の一覧と催促文を出す 催促を出す相手と時期 未提出のまま次工程へ進み差し込みになる
4 目録と現物を突き合わせて不足を出し、同じ図面番号で日付違いのファイルを並べる 完成図とする版の確定 旧版のまま製本して再提出になる
5 確定した一式から目次・表紙・通し番号を作り、ファイル名を統一する 様式との一致の確認 並び順の不備で検査の場で差し戻される
6 AIを入れない工程。印刷に回す版の指定は人の操作に残す 製本に回す最終版の指定 旧版の製本費用と納期の遅れ
7 指摘文に当たる書類とページの候補、修正範囲の一覧を出す 対応方針と再提出の範囲 再提出の往復で引渡しが遅れる
8 竣工図書から該当箇所を探し、保守の問い合わせへの回答を下書きする 保証範囲と有償・無償の判断 問い合わせのたびに現場代理人へ連絡が戻る

色枠がAIの担う工程、灰色が人が確定する工程です。右上の印は、誤りが提出後まで残りやすい工程を示しています。

竣工図書の取りまとめを8工程に並べた業務フロー図。書類を集める工程、不足と旧版の洗い出し、製本の3か所に誤りが集中する印を付けている提出様式と目録依頼先の割当書類を集める不足と旧版の洗い出し目次と通し番号製本とPDF提出と指摘対応アフターへ引渡しAIが担う人が確定する両方失敗が起きやすい工程
提出様式の確認から引渡しまで、竣工図書の取りまとめを8工程に割った図

AIで消える工程は、工程3の未提出の突き合わせと、工程5の並べ替えと通し番号の採番です。短くなる工程は、工程1の目録づくり、工程4の版の洗い出し、工程7の指摘の当たり付けです。新しく増える確認工程は、工程4で出た版の候補から完成図を選ぶ確定操作と、工程5で様式との一致を人が見る検査です。

AIに渡す工程と現場代理人が確定する境界

止めどころは工程4の出口に置きます。同じ図面番号で日付の違うファイルが並んだとき、どれを完成図とするかを決めるのは現場代理人です。AIは候補を並べるところまでで、選んだ人と日時が記録に残る形にします。ここを曖昧にすると、旧版で製本した原因を後から誰も特定できません。

竣工図書でAIが担う集計と人が確定する判断を左右に並べた境界図。完成図とする版を現場代理人が確定する地点が止めどころになるAIが担う(写す・比べる・下書き)人が確定する提出書類の目録の下書き未提出の一覧と催促文日付違いのファイルの並べ目次と通し番号の整形指摘に当たる書類の候補提出範囲の決定完成図とする版の確定様式との一致の確認製本に回す版の指定保証範囲と有償の判断確定止めどころ完成図の版は現場代理人が確定
竣工図書でAIが担う集計と、現場代理人が確定する版の分かれ目

提出範囲の側にも人が持つ責任があります。請負契約の書面に関する事項は建設業法に定めがあり、契約図書に何を含めるかは案件ごとに異なります。AIが過去の似た発注者との差分を出しても、今回の契約でその書類が要るかを決めるのは現場代理人と工事部長です。官公庁の案件なら電子納品の要領が優先し、民間の改修案件なら管理会社の運用に合わせます。

引渡し後の工程8にも境界があります。AIは竣工図書から該当箇所を探して回答の下書きを出せますが、その修繕が保証の範囲かどうかはアフター担当の判断です。無償か有償かを伝える文面は、判断が確定してから送ります。

最初の1工程はなぜ「不足と旧版の洗い出し」か?

着手先は三つの問いで選びます。判断が入るか作業か、材料が電子で引けるか、誤りがいつ見つかるかです。工程4の洗い出しは比べる作業が中心で、材料は共有フォルダにあり、誤りは製本に回す前に見つかります。工程5の整形から入ると見た目は変わりますが、旧版を並べ替えただけになりかねません。

過去2年分の完成図が案件フォルダに残っているなら、着手は工程4です。共有フォルダに版違いが混ざっていてファイル名の規則が無いなら、AIより先に命名規則と旧版の退避を決めます。協力会社の書類が紙とFAXで届くなら、工程3に手を付ける前に、電子で受け取る範囲を発注前の依頼文に書きます。製本を外注に出しているなら、工程6は人の操作のまま残すほうが安全です。年間の竣工が数件で、発注者も様式も固定されているなら、これはAIを入れない方がよい条件に当たります。その場合は目録のExcelを一つに統一するだけで、取りまとめの詰まりは解けます。

本メディアでは、竣工図書のAI化は過去物件の電子化を待たずに、進行中の案件から始めるべきだと判断します。過去の紙を全部スキャンしてから始めると、引渡しが何度か過ぎても着手できないためです。前提は、進行中の案件の施工図と検査記録が電子で残っていることです。現場で紙にしか記録が無い会社では、この順番は当てはまりません。

2週間の試行で測る3つの指標

進行中の1案件と、直近で引き渡した1案件で回します。会社としての進め方は次の五つです。

  1. 直近3案件で、取りまとめに要した日数と再提出の回数を記録します。導入前の値が無いと差を示せません。
  2. 対象を1案件に絞り、目録の項目を発注者の様式から写します。様式が固まっていない案件は選びません。
  3. 引渡し済みの案件で不足と旧版の洗い出しを回し、実際の提出一式と突き合わせます。
  4. 進行中の案件で同じ工程を使い、完成図とする版を現場代理人が確定します。確定は人の操作で残します。
  5. 2週間後に工事部長が合否を決めます。続けるか、対象案件を入れ替えて測り直すかを判断します。

見る数字は三つです。目録の作成から一式が揃うまでの日数、提出後に受けた指摘の件数、旧版が混ざった件数です。合否の線は開始前に引きます。洗い出しの確認に手作業より時間がかかるなら、フォルダの整理が先だという合図です。

本番にするときに決める承認・記録・例外

承認は二段に分けます。現場代理人が完成図とする版を確定し、工事部長が提出一式を承認します。記録は物件フォルダに残します。使った目録、未提出の履歴、確定した版とその日時、指摘と対応、アフター部門へ渡した日の五つです。ここが揃うと、引渡し後の問い合わせに現場代理人を呼び戻さずに済みます。

例外は先に決めておきます。改修で既存の完成図が無い案件、発注者が独自様式を求める案件、機器メーカーが直接発注者へ納品する案件は人が組み立てます。外部のAIサービスへ渡す情報の範囲も決めます。竣工図書には建物の詳細と発注者の情報が入るため、送ってよい項目と学習利用の有無を確かめてから対象を広げます。

費用はどこで膨らみ、回収はいくらで見るか?

費用は五つに分かれます。目録と命名規則の設計、過去案件の電子化、月々の利用料、現場への定着にかかる時間、様式が変わったときの手直しです。金額は案件の規模と発注者の数で変わるため、この記事では置きません。膨らむ分岐だけ挙げておきます。

発注者が3者以上で様式がそれぞれ違うなら、工程1と工程5の設定が発注者の数だけ増えます。過去物件の紙をすべて電子化する方針を採るなら、電子化の費用が本体より大きくなります。製本の外注先が独自の入稿形式を求めるなら、工程6の手直しが毎回発生します。逆に、発注者が一つで様式が固定されている会社は、初期の設計が一度で済みます。

回収は金額より先に日数で見ます。取りまとめに要した日数、再提出の回数、引渡し後に現場代理人へ戻った問い合わせの件数です。この三つが導入前を下回る状態が3案件続いてから、費用の話に進みます。本メディアでは、竣工が年に数件で発注者も一つの会社に、この仕組みを先に入れることは勧めません。目録の統一だけで同じ効果が出るためです。案件が重なり、引渡しが月に複数ある会社は、この限りではありません。

引渡し後の保守へ広げる順番

次に広げる先は、同じ竣工図書を材料にする業務です。定期点検の通知と記録の下書き、施主からの保守問い合わせへの回答、修繕履歴の検索が当たります。物件フォルダが整うほど、この三つは早く立ち上がります。

前の工程へ戻る広げ方もあります。写真台帳と検査記録が案件単位で整っていれば、工程3の催促は減ります。取りまとめで詰まった原因が施工中の記録にあると分かったら、現場管理の側を先に直します。

出典

  1. 国土交通省 不動産・建設経済局建設業課「参考資料集」(令和8年4月3日) 国土交通省 確認日 2026.09.22
  2. 建設業法(昭和24年法律第100号)e-Gov法令検索 e-Gov法令検索 確認日 2026.09.22

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