建設の竣工図書にAIを使うなら旧版の洗い出しと紙の過去図書の目録から
回収したフォルダに同じ図面番号のファイルが並んでいると、更新日時の新しいものを完成図として綴じたくなります。けれども、それが現場で決まった変更を反映した版とは限らず、取り違えた完成図は引渡しの後も10年、書庫に残ります。AIに任せられる一覧づくりと、人が版を選ぶ所の境目は、検査日が決まってから引渡しまでの時点ごとに変わります。

先に結論
完成図として綴じる版は現場代理人が設計変更の記録で選び、選んだ記録の無い図面は製本にも電子成果品にも回しません。
手を付ける順は、書庫の過去図書より、次に完成検査が決まった案件の目録が先です。過去図書は、保証や定期点検の問い合わせが来る物件から目録にします。
目録の下書き、未着の相手への催促文、目録にあってフォルダに無い書類と日付違いの同じ図面番号の一覧は、生成AIに出させます。紙の過去図書の表題欄の読み取りも任せられますが、図面番号と改訂記号は工事事務が原本と全行見比べて確定します。
更新日時の新しいファイルが完成図とは限らない
AIの一覧は、同じ図面番号の日付違いのファイルを並べても、どれを完成図として綴じるかは示しません。現場で決まった変更が図面に入る前の版のほうが、更新日時が新しいこともあります。旧版を止める仕組みは、版を選んだときの目録の1行です。
目録に書くのは、図面番号と完成図にしたファイル名、選んだ人と日時、退けた版のファイル名、根拠にした設計変更の記録です。この記録の無い図面は、目録の側で製本と電子成果品に進めない決まりにします。
【説明用の架空の記入例】図面番号A-12(平面詳細図)の行には、完成図にしたファイル名「A-12_rev3.pdf」と、選んだ人と日時「現場代理人、2月20日16時」を書きます。退けた版は「A-12_rev2.pdf」で、更新日時はこちらのほうが新しいファイルでした。根拠にした設計変更は「設計変更の指示書 第4号」です。
記録を飛ばすと、新しいだけのファイルが綴じられます。検査の場で監督職員が気づけば、差し替えと製本のやり直しで済みます。気づかれずに引き渡されると、10年残る完成図が現況と違ったまま書庫に入り、改修のたびに現地で測り直す手間が後の担当に回ります。
版を選ぶのを現場代理人1人に限るか、工事事務が候補を絞ってから代理人が見るかは、代理人の次の配置で変わります。代理人が引渡し前に次の現場へ移っているなら、後者が速く回ります。ただし、設計変更の経緯を知らない工事事務が候補から最終版を落とすと誰も気づけないので、後者を選ぶなら、退けた版のファイル名も代理人に見せる形にします。
完成検査までの取りまとめで旧版が混ざるのは回収から製本まで
旧版が混ざるのは、協力会社とメーカーから図書を回収した直後から、製本に出すまでの間です。竣工が年に数件で発注者も様式も毎回同じ会社なら、AIに目録を下書きさせるより、目録の表を1本にそろえて版の欄を足すほうが手早く済みます。
図の要点:検査日が決まった日から引渡しの後までの7つの時点の図。検査日が決まった日に現場代理人が発注者の様式と適用する要領の版を確かめる。回収を頼む日にAIが特記仕様書から目録を下書きする。回収の締切の前後に工事事務が図書を集め、未着の相手への催促文をAIが下書きする。製本に出す前にAIが目録にあってフォルダに無い書類と日付違いの同じ図面番号を並べる。製本の前日までに現場代理人が完成図の版を選び、選んだ人と日時を目録に書く。検査の当日は差し替えを工事部長が承認し、引渡しの後に工事事務が物件フォルダに保存する。
版を選んだ記録の無い図面は、製本にも電子成果品にも回さない
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検査日が決まった日
現場代理人が発注者の様式と、適用する要領の版を確かめる -
回収を頼む日
AIが特記仕様書から目録を下書きし、範囲は現場代理人が決める -
回収の締切の前後
工事事務が図書を集め、未着の相手への催促文はAIが下書きする -
製本に出す前
AIが目録にあってフォルダに無い書類と、日付違いの同じ図面番号を並べる -
製本の前日まで
現場代理人が完成図の版を選び、選んだ人と日時を目録に書く -
検査の当日
指摘の頁とファイルをAIが探し、差し替えは工事部長が承認する -
引渡しの後
工事事務が物件フォルダに保存し、閲覧できる人は保存の責任者が決める
版を選び終える製本の前日は、検査日が決まった日のうちに工程表へ入れておくと、回収が遅れても版を選ぶ時間が削られません。目録の下書きをAIに頼むと、前の案件の目録を写して書き換えるときに起きる、今回の特記にある書類の抜けが減ります。
検査日が決まった日に要領の版まで確かめておけば、国土交通省の土木工事で契約日によって適用が分かれる場合にも取り違えません。工事完成図書の電子納品等要領の令和8年2月版は、令和8年4月1日以降に契約した工事から使います。前年度に契約した工事と竣工の時期が重なると、版の違う要領を2つ並べて扱うことになります。建築工事や民間工事は、発注者の指定が先に立ちます。
同じ要領は、工事完成図を出来形測量の結果と設計図書に従って作成した図面と定めています。電子データはCAD製図基準に沿って作り、電子成果品の「DRAWINGF」フォルダに入れます。写真台帳は、写真台帳をAIで仕分けた後に撮影箇所を確かめる手順を済ませた状態で受け取ると、竣工図書の目録と同じ番号で綴じられます。
完成図と打合せ記録は引渡しから10年、電子でも残せる
完成図と発注者との打合せ記録は引渡しから10年残し、紙でなく電子のファイルで残しても構いません。保存の根拠は建設業法第40条の3で、建設業者は営業所ごとに帳簿を備え、帳簿と、国土交通省令で定める営業に関する図書を保存します。
図書の中身は建設業法施行規則第26条第5項が定めています。発注者から直接請け負った会社なら、完成図と、施工中に発注者と交わした打合せ記録が入ります。
| 書類 | 根拠 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 完成図・発注者との打合せ記録 | 施行規則第26条第5項・第28条第2項 | 引渡しから10年間 |
| 帳簿と添付書類 | 施行規則第28条第1項 | 5年間(発注者と結んだ住宅新築の工事は10年間) |
完成図と打合せ記録は帳簿(引渡しから5年、住宅新築は10年)と保存期間が違うことがあるので、物件フォルダの保存期限は引渡し日から数えて決めます。図書は電子のファイルで代えられ(第26条第8項)、営業所で画面や紙に表示できる状態なら、物件フォルダそのものを保存の本体に置けます。
10年を過ぎた紙を処分するかどうかは、建築士法など他の法令の保存期間も確かめたうえで、社内の文書規程で決めます。設計も手がけ建築士事務所を登録している会社なら、建築士法施行規則第21条第5項により、事務所の図書を作成した日から15年間保存します。
紙の過去図書は表題欄を読ませて目録にする
紙の過去図書は、図面の表題欄をAIに読ませて目録の1行を下書きさせると、図面番号で探せる形になります。スキャンしただけでは、図面番号や図名で探せません。
画像にしただけのPDFは、見た目は図面でも中身は絵だからです。AIに読ませるのは、図面の右下にある表題欄です。図面番号・図名・縮尺・作成日を読み取らせ、目録の1行を下書きさせます。仕様書や取扱説明書なら、表紙と目次から書類名と設備名を読み取らせます。
目録の図面番号と改訂記号は、人が原本の表題欄と全行見比べて確定します。「0」と「O」、改訂記号の読み違いは、目録の上では正しく見えてしまうためです。読み取れなかった頁はAIに一覧で返させ、そこは手で入力します。配管の経路のように図の中身を問う使い方では、答えの根拠にした頁を人が開いて確かめます。
建築主の氏名が載る図書を社外に出すとき
住宅や店舗の図書には、建築主の氏名や現場の住所が表題欄や仕様書に載ります。スキャン代行に出すなら、利用目的の範囲で図書の取扱いを任せる委託と言える契約かを確かめ、置き場所、返す日、データを消す日を契約に書いて、個人情報保護法第25条に沿って代行業者の作業を見ます。委託と言えない預け方なら、第27条に従って建築主本人の同意を先に取ります。
表題欄の読み取りを社外の生成AIサービスに頼む場合は、先に約款を読みます。サービス事業者が竣工図書を取り扱わないと約款に定められ、事業者の側で図書を開ける者の範囲も絞られていれば、図書を事業者のサーバ上に置いたままでも、個人データの提供には該当しない整理です。
事業者が中身に触れる約款では、取扱いを任せる委託にあたる範囲かを確かめます。委託の範囲を越える預け方なら、第三者提供を定めた第27条に従い、建築主本人の同意を取り付けてから渡します。
読ませる先が海外の会社なら、委託の形をとっていても第28条が絡むので、建築主の同意の要否を個別に見ます。確かめる順は、協力会社の作業員名簿を社外に出す前の整理と同じです。社内でどの図面をAIに入れてよいかは、建設会社の生成AIツールを選ぶ前に決める入力の範囲にもつながります。
目録にする物件は、次に図書を開く見込みの順
保証や改修で次にその竣工図書を開く見込みの高い物件から目録にします。書庫の図書を全部スキャンする方針にすると、その費用と期間が、いま進んでいる案件の取りまとめを上回ることがあります。
最初に入れるのは、保証や定期点検の問い合わせが来る物件の竣工図書です。次に、改修や増築の相談が見込まれる物件の完成図と設備の図面を入れます。引渡しから10年を過ぎて問い合わせも無い物件は、紙のまま置き、棚の番号を物件台帳に書いておけば探せます。設計部門が過去の図面を流用するための検索は、図面検索AIを版の見分け方で比べる記事で扱う別の業務です。
A1判の図面が多い書庫は、スキャンを外の代行に出す
目録の版の欄と、表題欄の読み取り結果の確定は、現場代理人と工事事務が社内で持ちます。綴じる版の判断は設計変更の経緯を知る人にしかできず、読み違いは原本と見比べないと見つからないからです。
外に出す候補になるのは、スキャンの作業です。A3までの複合機しか無い事務所では、A1判の完成図は読み込めません。代行に出すなら、建築主の情報の扱いを前の節の順で確かめてから契約します。
版の欄を足した目録の様式と、表題欄を読ませてから原本と見比べる手順を、竣工のたびに同じ形で回せるかが、社内で続けられるかの分かれ目です。案件ごとに様式が崩れて工事事務が毎回作り直しているなら、様式と手順を固めるところに、外から顧問(AI顧問)を入れます。
検査で差し替えた図面が1枚でも出た案件は、版を選ぶ時点を回収の締切の直後へ前倒しできないかを、工事事務が現場代理人と相談します。製本の前の一覧で旧版を見つけ、差し替えが0枚で済んだ案件の目録は、次の案件の様式に回します。
明日から始める3ステップ
担当 現場代理人
次に完成検査が決まった案件の目録に、完成図にしたファイル名・選んだ人と日時・退けた版・根拠の設計変更の4欄を足す
次へ進む目安製本に出す前に、全図面の行で4欄が埋まった
担当 工事事務
製本の前にAIの一覧で見つかった旧版の件数と、検査で差し替えた図面の件数を数え、目録の末尾に書き入れる
次へ進む目安竣工1件分の2つの件数が目録に残った
担当 アフター担当
保証や定期点検の問い合わせが来る物件を物件台帳から選び出し、過去図書を目録にする順の表をつくる
次へ進む目安工事部長と表を確かめ、最初に目録にする物件を1件に絞れた
無料相談(オンライン)
BoostXは、建設会社の積算・日報・安全書類へのAI導入を支援しています
01無料相談
積算・日報・安全書類から、最初の1業務を決める
02進め方の提案
規模に合う進め方を提案する
03作って試す
一緒に作り、現場で試して直す
04定着まで伴走
毎月1テーマずつ積み上げる
作って試す・定着までAIエージェント開発AI顧問FDE型AI伴走支援
出典
- 国土交通省 電子納品に関する要領・基準(要領・基準一覧)国土交通省 確認日 2026.09.29
- 工事完成図書の電子納品等要領(令和8年2月)本編(用語の定義・フォルダ構成) 国土交通省 確認日 2026.09.29
- 建設業法(昭和24年法律第100号)(第40条の3) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)(第26条第5項・第8項、第28条) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 建築士法施行規則(昭和25年建設省令第38号)(第21条第5項) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(第25条 委託先の監督・第27条第1項 第三者提供の制限・第28条第1項 外国にある第三者への提供の制限) e-Gov法令検索(デジタル庁) 確認日 2026.09.29
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」個人情報保護委員会 確認日 2026.09.29
編集BoostX編集部(株式会社BoostX)編集と監修の決まり










