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歯科集患のムダ|院長が新患を逃す境目と発信月3本の生成AI比較表

公開 2026.08.28 ・ 読了目安 約15分

「ホームページも作ったし、インスタもやっているのに、新患が増えない」——歯科医院の集患では、この一言が最後に残ります。診療の質を落としているわけではない。スタッフも頑張っている。それでも初診の予約枠は埋まりきらず、既存の患者さんの来院間隔だけが延びていく。広告費を月5万円から10万円に増やしても手応えがなく、来月からどうするかを決められないまま、また1か月が過ぎる。集患が伸びない医院で本当に起きているのは、発信の量が足りないことではなく、発信が「続かない形」で始まっていることです。

発信そのものは難しい仕事ではありません。難しいのは、何を書くかを毎回ゼロから決めること、診療の合間に下書きを仕上げること、そして書いた内容が医療広告のルールに触れていないかを公開前に確かめることの3つです。この記事では、歯科医院の集患で新患が消えていく工程を分解し、生成AIに任せてよい範囲と院長が手放してはいけない判断を分ける3つの境目、そして自院だけで回し続けたときに歯科特有の壁になる医療広告規制のリスクを整理します。

30-SECOND SUMMARY忙しい方へ|この記事の結論
  1. 患者は来院前に情報を集めている。外来患者の80.7%が「情報を入手している」と答え、入手先は「家族・友人・知人の口コミ」が68.4%、「医療機関が発信するインターネットの情報」が28.8%(厚生労働省 令和5年受療行動調査)。医院が自分でコントロールできるのは後者だけで、そこが空白のまま止まっている医院が多い
  2. 生成AIに任せる範囲は3つの境目で決める。素材の整理までがAIで医学的な断定は歯科医師、下書きまでがAIで公開の最終確認は院長、院内向けの要約はAIで患者に出す文面は医院の名前で出す
  3. 歯科には医療広告という別の壁がある。患者の体験談と口コミサイトからの転載、そして説明のないビフォーアフター写真は省令上の禁止事項で、AIに「集患に効く文章」を書かせるほどこの線を踏みやすい。ここが自前で回す最大のリスク

歯科の集患が伸びないとき、新患はどこで消えているのか

本記事のテーマに関連するサービスとして、BoostXでは医療分野の生成AI導入支援を提供しています。最初に、新患が増えないのが医院の努力不足だけで説明できるものなのかを、患者側の行動データで確認しておきます。

患者の8割は、来院を決める前に情報を集めている

厚生労働省の「令和5(2023)年受療行動調査(概数)の概況」(2026年8月確認)p.3によれば、ふだん医療機関にかかるときに「情報を入手している」と答えた人は外来で80.7%、入院で83.6%です。「特に情報は入手していない」は外来で16.3%にとどまります。つまり10人のうち8人は、受診先を決める前に何かを見ています。

その入手先の内訳がさらに重要です。同じp.3の表1では、情報を入手している人のうち「家族・友人・知人の口コミ」が68.4%で最も高く、次いで「医療機関が発信するインターネットの情報」が28.8%、「医療機関・行政機関以外が発信するインターネットの情報(SNS、電子掲示板、ブログの情報を含む)」が18.1%、「医療機関の相談窓口」が14.6%、「医療機関の看板やパンフレットなどの広告」が5.6%と続きます。看板やパンフレットの5.6%に対して、医院が発信するネット情報は28.8%と5倍以上の開きがあります。

ここで見落とされがちなのは、最大の入手先である口コミ68.4%は医院が直接操作できない領域だということです。医院が自分の意思で厚くできるのは28.8%の「自院が発信するインターネットの情報」であり、この数字は同時に「知人に紹介された人が、来院前に必ず確認しに来る場所」でもあります。口コミで名前を聞いた人が医院のページを開いたとき、更新が2年前で止まっていれば、その紹介はそこで途切れます。集患の入口は、口コミと自院の発信が接続する一点にあります。

発信が止まるのは「書く時間」ではなく「何を書くかを決める時間」

発信が続かない医院の話を分解すると、止まっている場所はほぼ共通しています。1本書くのにかかる時間のうち、実際に文章を打っている時間は20分から30分程度で、その前段にある「今月は何を書くか」を決める工程に30分から60分が溶けています。しかもこの工程は、診療が終わった後の疲れた頭で行われるため、決まらないまま翌週に持ち越されます。持ち越しが2回続くと、その月の発信はゼロになります。

月3本の発信を1年間続けると36本になりますが、実際には最初の2か月で6本を出したあと、3か月目に1本、4か月目にゼロという形で失速します。年間で見れば10本前後です。この差を生んでいるのは書く速さではなく、ネタが枯れた瞬間に立ち止まる構造そのものです。書く工程だけを速くしても、その手前で止まっている限り本数は増えません。

私は、発信を仕組みにするときにいちばん先に固定すべきなのは「本数」ではなく「ネタの出どころ」だと考えています。出どころが決まっていれば、忙しい月でも1本は出ます。出どころが決まっていない医院は、暇な月でもゼロになります。

歯科診療所は65,475施設。減っているのに競争が楽にならない

厚生労働省の「医療施設動態調査(令和7(2025)年12月末概数)」(2026年8月確認)によれば、歯科診療所の施設数は全国で65,475施設、その月は前月に比べ62施設の減少です。一般診療所は105,604施設で79施設の減少、病院は7,981施設で7施設の減少となっています。開設者別に見ると、歯科診療所65,475施設のうち医療法人が17,505施設を占めます。

施設数が毎月数十施設ずつ減っているなら競争は緩むはずですが、実際には楽になりません。減っているのは主に承継されずに閉院した医院で、そこに通っていた患者さんは近隣に分散します。分散先を決めるのが、先ほどの口コミ68.4%とネット情報28.8%です。つまり施設数の減少は、発信している医院にだけ有利に働く変化であって、発信していない医院にとっては「近くの医院が閉じたのに新患は増えない」という結果にしかなりません。

歯科の集患で生成AIに任せられる仕事・任せられない仕事を分ける3つの境目

歯科の集患の発信で生成AIに任せられる範囲と院長が持つ判断を分ける3つの境目の比較表
歯科の集患の発信でAIに任せられる範囲は、素材の整理か医学的判断か・下書きか公開判断か・院内向けか患者向けかの3つの境目で決まる

生成AIを発信に使うかどうかで迷う医院の多くは、「使うか・使わないか」の二択で考えています。実際に必要なのは、工程ごとにどこまで任せるかを線で引くことです。線を引かないまま使うと、後述する医療広告のリスクを踏みます。線を引けば、危ない領域を除いた8割の作業を安全に軽くできます。

境目1:素材の整理までがAI、医学的な断定は歯科医師が持つ

1つ目は、事実や素材を整理する仕事か、医学的な判断を含む仕事かの境目です。診療中によく受ける質問を30案に広げる、専門用語を患者さんに伝わる言い回しに置き換える、過去に書いた文章から重複を洗い出す。ここまではAIの得意領域で、任せて実害がありません。ChatGPTのような対話型のツールでも、この工程は1回5分から10分で回ります。

一方で、その説明が医学的に正しいか、この表現だと患者さんが治療効果を過大に受け取らないかという判断は、歯科医師が持ち続ける必要があります。生成AIは一般的に流通している文章から尤もらしい説明を組み立てますが、「尤もらしい」と「自院の診療方針として正しい」は別物です。AIが出した説明文をそのまま公開して、実際の診療内容と食い違えば、来院した患者さんとの間で認識のずれが起きます。

実務では、AIには「診療で実際に説明している内容」を先に渡し、その言い換えだけをさせるのが安全です。ゼロから書かせるのではなく、院長が普段口頭で説明している内容を3分ほど話して文字にしたものを素材として渡す。この順番にするだけで、医学的な誤りの混入はほぼなくなります。

境目2:下書きまでがAI、公開の最終確認は必ず院長が1回入る

2つ目は、下書きなのか公開物なのかの境目です。歯科医院の発信では、この境目を守れているかどうかが、後で行政指導の対象になるかどうかを分けます。AIが作った文章をそのまま予約投稿に流す運用は、どれだけ忙しくても採用してはいけません。

確認するのは4点です。治療効果を断定していないか、他院との優劣に触れていないか、費用に関する記載が実際の料金と一致しているか、そして患者さんの体験談に相当する表現が混ざっていないか。1本あたり3分から5分の確認でも、月3本なら10分から15分です。この15分を惜しんで不適切な表現を1本公開してしまえば、削除と修正、場合によっては保健所への説明まで含めて、取り返す労力は数十倍になります。

境目2を守るコツは、意識ではなく構造で担保することです。AIが書いた文章は必ず「下書き」フォルダにしか置けないようにし、公開ボタンは院長のアカウントからしか押せない状態にしておく。人の注意力で守るルールは忙しい週に破れますが、下書きからしか公開できない構造にしておけば、忙しさに関係なく守られます。

境目3:院内向けの要約はAI、患者に出す文面は医院の名前で出す

3つ目は、その文章が院内で消えるものか、患者さんの手元に残るものかの境目です。今月の問い合わせ内容の傾向整理、スタッフ向けの手順の要約、次回のミーティング用の論点整理。これらは院内で消える文章なので、多少ぎこちなくても実害がなく、AIに任せる価値がいちばん高い領域です。書類作成まわりの負荷は、この境目の内側でかなり下がります。

対して、患者さんに出す文面は医院の名前で出すものです。名前を出す以上、書かれている内容の責任は医院にあります。AIが作った下書きを一字も直さずに出すのは、名前だけ貸している状態です。私は、下書きの2割から3割は必ず自分の言葉に書き換えるくらいの運用が現実的だと考えています。文章が上手くなるからではなく、書き換える過程で内容を1回読み込むからです。

この3つの境目を工程ごとに整理すると、次の表のようになります。導入前に、院内でこの表の右列を埋め直してみてください。右列が空欄になる工程があれば、そこは任せる前に決めごとが要る工程です。

工程 生成AIに任せられる範囲 院長・歯科医師が持つ判断
ネタ出し 診療でよく受ける質問を30案に広げ、重複を除いて並べる 医院として答える価値がある3案を選ぶ
説明文の下書き 口頭説明の音声メモをもとに文案を2案から3案つくる 医学的に正しいか、効果を断定していないかを見る
医療広告の下読み 禁止表現に当たりそうな箇所の候補を洗い出す 公開してよいかの最終判断を下す
体験談・症例の扱い 扱わない(省令上の禁止事項に該当するため) 掲載しない運用を院内ルールとして固定する
院内向けの要約 問い合わせ傾向や手順書を週次でまとめる 記録として何を残し何を残さないかを決める
公開・配信 予約投稿の下書き状態までを準備する 医院の名前で出す最終確認をして公開する
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発信を月3本に固定すると、どの工程が何分戻ってくるのか

境目が引けたら、次は効果の見積もりです。ここで大事なのは、削減率のような大きな数字ではなく、工程ごとの分数で測ることです。分数で測っておくと、導入後に同じ物差しで比較できます。以下は月3本の発信を前提にした目安であり、医院の規模や既存の素材量で上下します。

ネタ出し:月30分から60分が、10分規模に縮む

前述のとおり、発信が止まる最大の工程はネタ出しです。ここは、診療でよく受ける質問という出どころさえ決めておけば、AIが30案に広げるところまでを1回5分から10分で担えます。院長がやるのは、30案から今月出す3案を選ぶことだけになります。月30分から60分かかっていた工程が、10分規模に収まる計算です。

ここで戻ってくるのは20分から50分という小さな時間ですが、効果は時間の大きさではありません。「決められないまま翌週に持ち越す」という失速の起点が消えることに意味があります。年間10本前後で止まっていた発信が、36本に近づくかどうかの分かれ目はここです。

下書き:1本20分から30分が、5分から10分の確認作業に変わる

口頭説明の音声メモを素材として渡せば、文案は2案から3案が短時間で出てきます。院長の作業は、ゼロから書く20分から30分ではなく、出てきた文案を読んで直す5分から10分に変わります。月3本なら、60分から90分規模が15分から30分規模になる計算です。

ただしこの数字は、境目2の確認作業を含んでいません。公開前の4点確認に1本3分から5分、月3本で10分から15分を必ず足してください。この確認を工程表に最初から書き込んでおくことが、後で削られないための唯一の方法です。

配信:1本を3面に配ると、掲載面ごとの書き直しがなくなる

1本の内容は、自院サイトの記事、Googleビジネスプロフィールの投稿、SNSの短文という3つの面に配れます。これまで面ごとに書き直していた医院なら、3面ぶんで45分から60分かかっていた作業が、長さと語尾の調整だけの10分から15分に縮みます。集客の自動化という言葉で語られる領域のうち、歯科医院がまず着手して効果が見えるのはこの配り直しの部分です。

3面に配ることには、時間以外の意味もあります。受療行動調査で28.8%を占めた「医療機関が発信するインターネットの情報」は、自院サイトだけを指しません。地図アプリの医院情報も、患者さんから見れば同じ「医院が出している情報」です。同じ内容が3面で揃っている状態は、AIによる検索結果でも引用されやすくなります。この観点はAI検索での指名獲得の設計とも重なります。

4工程を足すと、月2時間から3時間規模が1時間以内に収まる

ネタ出し30分から60分、下書き60分から90分、配信45分から60分、確認15分。合計すると月2時間30分から3時間45分規模です。これが、ネタ出し10分、下書き15分から30分、配信10分から15分、確認10分から15分の合計45分から70分規模に収まります。差し引きで月1時間30分から2時間30分規模が戻る計算になります。

戻る時間そのものは大きくありません。それでも取り組む価値があるのは、この1時間30分が「毎月確実に3本出る」という再現性と交換されるからです。私は、AIを入れる価値のいちばん大きい部分は作業が速くなることではなく、毎月同じ精度で同じものが出てくる再現性だと考えています。再現性があって初めて、どの発信が効いたのかを比べられるようになります。

自前で回すときの限界——歯科には医療広告という別の壁がある

ここまでの工程だけなら、院内で回せる医院もあります。歯科の集患が他業種と決定的に違うのは、書いた内容が医療法の広告規制の対象になる点です。そして生成AIは、この規制をまったく知らないまま「集患に効きそうな文章」を書きます。ここが自前で回す最大のリスクです。

患者の体験談は、掲載場所を問わず省令上の禁止事項

厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)」(令和7年3月作成・2026年8月確認)p.23では、治療内容または効果に関する患者の体験談が「広告が禁止される事例」として挙げられ、根拠として医療法第6条の5第2項第4号および規則第1条の9第1号が示されています。同ページの解説では、こうした体験談は「個々の患者の状態等により感想が異なり得るものであり、誤認を与えるおそれがある」ため、医療に関する広告としては認められないとされています。

さらに注意が必要なのは、同解説書がp.24からp.28にかけて、口コミサイトからの転載、医療機関のスタッフによる記載、体験談の編集、患者直筆アンケートの加工・転載、患者の主訴として記載された体験談という5つの個別具体例を並べていることです。特にp.24では、口コミサイトから自院のページへ口コミを転載する行為について、医療機関にとって便益を与える感想等を取捨選択して掲載し強調することは虚偽・誇大にあたるとして、法第6条の5第2項第2号を根拠に広告できないと明記されています。

集患を目的に「患者さんの声を載せましょう」という提案は、歯科医院の場では今も普通に出てきます。生成AIに集患用の原稿を書かせれば、患者の声を模した文章が候補として上がってくることもあります。掲載場所が自院サイトでも、転載元が実在の口コミサイトでも、結論は変わりません。

ビフォーアフター写真は原則不可、載せるなら4点セットが要る

同解説書p.29は、ビフォーアフター写真も省令上の禁止事項として扱います。根拠は法第6条の5第2項第4号および規則第1条の9第2号です。個々の患者の状態等により当然に治療等の結果は異なることを踏まえ、誤認させるおそれがある写真等は広告として認められない、というのが解説の趣旨になります。

ただし同じp.29には、詳細な説明を付した場合はこれに当たらないという整理も併記があります。掲載可能な事例として示されているのは、術前術後の写真に対して治療内容、治療期間・回数、費用、リスク・副作用の情報を付したものです。解説書の例では、治療期間・回数として「約6ヶ月間、10回」、費用として「総額1,100,000円」およびインプラント埋込・上部構造「350,000円/1本」、リスク・副作用として出血、腫張、疼痛、神経麻痺、補綴物の脱落、インプラント周囲炎等が具体的に列挙されています。

同ページはさらに、写真のみで説明が一切ない事例、費用だけ書いて期間やリスクがない事例、クリックしなければ詳細が表示されない事例の3つを、いずれも不適切として挙げています。つまりビフォーアフターを載せるという判断は、写真1枚の話ではなく、4種類の情報を過不足なく同じ画面に置き続ける運用の話です。この運用を毎回守れないなら、載せない判断のほうが安全です。

生成AIがいちばん間違えるのは「効きそうな言い回し」

同解説書のp.2に並ぶ禁止事例の一覧を見ると、虚偽広告、誇大広告、比較優良広告という3つの類型が並びます。最上級の比較、他の医療機関との比較、データの根拠を明確にしない調査結果、科学的根拠が乏しい情報による誘導。これらはすべて、集患を目的に文章を強くしようとしたときに自然と出てくる表現です。

生成AIに「新患を増やす文章を書いて」と指示すると、まさにこの方向へ最適化された文章が返ってきます。地域で最も、痛みのない、必ず、といった語が候補に上がるのは、AIが広告文の一般的な型を学習しているからです。医療広告の規制を知らないまま強い文章を作れるという性質が、そのままリスクになります。

対策の方向は難しくありません。AIに渡す指示の中に、禁止類型と自院の禁止語をあらかじめ書き込んでおくこと。そして境目2の4点確認を、公開前の固定作業として工程に組み込むことです。難しいのは、この2つを毎月同じ精度で続ける体制のほうです。

なお、本記事の医療広告に関する記述は2026年8月時点で公開されている厚生労働省の資料に基づく一般的な整理であり、個別の表現が広告として認められるかどうかの判断を示すものではありません。ガイドラインおよび事例解説書は改定されることがあるため、最新の内容は厚生労働省の公式サイトで確認し、個別の表現の適否は所管の保健所や専門家にご確認ください。

作った運用を毎月更新し続ける人がいない

最後の限界は、体制の話です。ネタの出どころ、禁止語の一覧、公開前の確認手順。これらを最初に作るのは1日あれば足ります。難しいのは、半年後にツールの仕様が変わったとき、新しいスタッフが入ったとき、規制のガイドラインが改定されたときに、その決めごとを直せる人が院内にいるかどうかです。

私は、社内にAIを推進できる人がいて動かし続けられる状態なら問題ないが、放置したら使われなくなると考えています。導入した時点のツールをそのまま使い続けても、すぐに陳腐化します。歯科医院の場合、院長は診療で1日の大半が埋まり、スタッフは診療補助と受付で手一杯です。決めごとを更新する時間が構造的に確保できないまま、3か月後には誰も使っていない状態に戻る——これが最も多い失速の形です。医療機関向けの自動化を検討する際も、作る費用より続ける体制のほうが先に決まっている必要があります。

ビフォーアフター:歯科の集患の発信がここまで変わる

BEFORE

発信が止まっている医院の1か月

第1週の火曜、診療後に「今月は何を書こうか」と考え始めるが、30分ほど画面を見て決まらないまま帰る。第2週は木曜に思い出したものの、急患が入って手が付かない。第3週の日曜、自宅で2時間かけて1本を書き上げ、そのまま公開する。医療広告の確認はしていない。第4週は完全に手が回らず、その月の発信は1本で終わる。

ホームページの最終更新は結果的に3か月に1本のペースになり、地図アプリの医院情報は開院時のまま。紹介で名前を聞いた人がページを開いても、最新の情報が2年前で止まっているため、そこで検討が止まります。月に1時間から2時間は発信に使っているのに、患者さんが見る面には反映されていない。この状態が半年続くと、努力の実感だけが残って数字は動きません。

AFTER

仕組みが入った後の1か月

第1週の月曜、診療でよく受けた質問をもとに30案が並んだ状態で出てきます。院長がやるのは今月出す3案を選ぶことだけで、所要は10分。第2週は、口頭説明の音声メモから作られた文案を読んで直す作業が1本5分から10分、3本で15分から30分です。

第3週に公開前の4点確認を1本3分から5分、3本で10分から15分。第4週には、公開済みの3本がサイト・地図アプリ・SNSの3面に配られた状態になり、書き直しの手間は10分から15分に収まります。月2時間30分から3時間45分規模だった作業が45分から70分規模になり、本数は年10本前後から36本規模へ。戻ってきた1時間30分以上は、診療とスタッフの育成に回せます。

違いを生んでいるのはツールではなく運用設計

BeforeとAfterの差を作っているのは、高価なシステムではありません。ネタの出どころを「診療でよく受ける質問」の1つに固定したこと、AIに任せる範囲を3つの境目で線引きしたこと、公開前の確認を4点に絞って工程表に書き込んだこと、そして月30分から60分の見直し枠を誰かの仕事として置いたこと。この4点です。どれも導入前の設計であって、道具の性能の話ではありません。

逆に、設計をしないまま道具だけ入れると、Beforeの迷いがそのまま画面の中に移動するだけになります。生成された30案を前にして、やはり決められないまま週が終わる。しかも今度は、医療広告の線を知らないAIが書いた文章が下書きに溜まっていくぶん、リスクだけが増えます。

うちはまだBefore寄りだと感じた方は、まず直近3か月に自院が出した発信の本数と、1本あたりにかかった分数を数えてみてください。本数と分数が出れば、着手すべき工程は自然に決まります。

よくある質問

Q患者さんの声をホームページに載せるのは、本当にすべて禁止なのですか?

A治療内容または効果に関する体験談は、掲載場所を問わず認められません。厚生労働省の事例解説書(第5版・2026年8月28日確認)p.23では、法第6条の5第2項第4号および規則第1条の9第1号を根拠に、患者の主観や伝聞に基づく治療内容・効果の体験談は広告できないとされています。p.24からp.28では、口コミサイトからの転載、スタッフによる記載、体験談の編集、患者直筆アンケートの加工・転載、患者の主訴として記載された体験談の5類型が個別の禁止事例として挙げられています。一方で、治療内容や効果に触れない範囲の記述まで一律に禁止されているわけではないため、線引きに迷う表現は公開前に確認するのが確実です。

Q症例写真を載せたいのですが、何を揃えれば掲載できますか?

A同解説書p.29では、術前術後の写真に治療内容、治療期間・回数、費用、リスク・副作用の情報を付すことで広告が可能になると整理されています。掲載可能な例として示されているのは、治療期間・回数「約6ヶ月間、10回」、費用「総額1,100,000円」および「350,000円/1本」、リスク・副作用として出血、腫張、疼痛、神経麻痺、補綴物の脱落等を明記した形です。逆に、写真のみで説明がない事例、費用だけで期間やリスクがない事例、クリックしないと説明が表示されない事例はいずれも不適切とされています。4種類の情報を毎回同じ画面に揃え続けられるかどうかで判断してください。

Q発信は月に何本出せばよいのでしょうか。多いほど有利ですか?

A本数より、止まらないことのほうが効きます。最初の2か月だけ月5本を出して3か月目にゼロになるより、月3本を12か月続けて36本にするほうが、来院前に見られる面の情報量は大きくなります。月3本が重いと感じる場合は、月2本から始めて、ネタの出どころと公開前の確認手順が固まってから増やすのが現実的です。本数を決める前に、直近3か月で実際に何本出せたかを数えて、その1.5倍を上限にするとほぼ失速しません。

Qスタッフに任せたいのですが、どこまで任せてよいですか?

A本文の3つの境目のうち、境目1の素材整理と境目3の院内向け要約は任せて問題ありません。任せてはいけないのは、医学的な内容が正しいかの判断と、公開してよいかの最終判断です。この2つは歯科医師が持ちます。運用としては、スタッフが下書きまでを用意し、院長が公開前の4点確認だけを行う形にすると、院長の関与を1本3分から5分に抑えながら責任の所在を明確にできます。確認せずに公開できる導線を残さないことが条件です。

Q外部に頼む場合、費用はどのくらいを見ておけばよいですか?

A中小企業向けのAI顧問サービスの月額は10万円から30万円が一つの相場で、相談・助言に特化した形なら月4万円から10万円、実装支援まで含む形なら月10万円から35万円、全社導入の規模になると月30万円以上という幅があります。最低契約期間は3ヶ月から6ヶ月が一般的です。BoostXのAI伴走顧問はライトプランが月額110,000円(税込)、ベーシックプランが月額330,000円(税込)で、いずれも最低3ヶ月からとなっています。費用を比べる前に、自院で戻る時間が月1時間30分規模なのか、受付や書類作成まで含めて月10時間規模なのかを先に測っておくと、判断がぶれません。

まとめ

  • 外来患者の80.7%が来院前に情報を集め、入手先は口コミ68.4%と医療機関が発信するネット情報28.8%。医院が自分で厚くできるのは後者だけで、そこが空白のまま止まっている
  • 発信が止まる場所は書く工程ではなくネタを決める工程。月30分から60分がここで溶け、2回持ち越すとその月はゼロになる
  • 生成AIに任せる範囲は3つの境目で決める。素材の整理までがAIで医学的な断定は歯科医師、下書きまでがAIで公開の最終確認は院長、院内向けの要約はAIで患者に出す文面は医院の名前で出す
  • 患者の体験談と口コミサイトからの転載は省令上の禁止事項、説明のないビフォーアフター写真も同様。集患に効く文章を書かせるほどこの線を踏みやすいのが、歯科でAIを使う最大のリスク
  • 月3本を前提にすると、月2時間30分から3時間45分規模の手作業が45分から70分規模に。戻る時間より、毎月同じ精度で出続ける再現性のほうが価値が大きい

監修者|生成AIの導入から定着まで伴走する専門家が確認しています

吉元大輝(よしもとひろき)

株式会社BoostX 代表取締役社長

中小企業の生成AI導入を支援する「生成AI伴走顧問」サービスを提供。業務可視化から定着支援まで、一気通貫で企業のAI活用を推進している。

公開日:2026年8月

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読んで終わりにしないために

「自社の場合は、どうすれば?」
その答えを、30分で持ち帰る。

記事で分かるのは、一般論まで。現役の生成AI伴走顧問が、貴社の業務に当てはめて“次の一手”だけを一緒に整理します。

この30分で持ち帰れるもの

  1. 01

    自社業務に当てはめたAI活用マップ

  2. 02

    投資対効果(ROI)のシミュレーション

  3. 03

    いまの悩み・疑問への、その場の個別回答