保守が重くなったRPAを直し続けるのか、AIに替えるのか。分ける線は、今のRPAが何で止まっているかです。画面の変更で止まるならRPAは残し、製品に付いたAIの自己修復を足すか、相手のシステムとのつなぎ方を変えます。入力のばらつきや判断で止まるなら、その工程だけをAIに渡します。画面操作ごとAIに任せる方法は、手順1つごとに利用料がかかり、人の操作より遅くなりうるため、件数が少なく急がない作業に限ります。
- 選べる手段は「RPAかAIか」の2つではなく4つあります。RPA製品に付いたAIの自己修復と、AIが画面を操作する機能が加わったためです。
- AIの自己修復を足しても、人の手間はゼロになりません。止まった時にその場で直す仕事が、修復の記録を見て後で直す仕事に変わります。
- RPAの料金はユーザー数やボット数で決まり、AIの料金は手順の数やトークンの量で決まります。処理する件数が増えたときに増えるのは、AIの側です。
目次
RPAとAIは、どこで使い分けるのか
RPAとAIの使い分けは、定型か非定型かより前に、今のRPAが画面の変更で止まっているのか、入力のばらつきや判断で止まっているのかで決まります。手段は4つあり、RPAを1本ずつ次の表の行に当てはめます。

| 手段 | 向く止まり方 | 人の手間が残る所 | AIの利用料と準備の単位 | 確かめる公式資料 |
|---|---|---|---|---|
| 今のRPAを直し続ける | 止まる回数が少なく、直す作業が負担になっていない | 止まるたびに原因を調べ、フローを直す | AIの利用料はかからない。RPAの料金はユーザー数とボット数で決まる | 今の製品の料金表(Power Automate なら Premium と Process の行) |
| RPAにAIの自己修復を足す | 画面の変更で、操作する要素が見つからなくなる | 修復の記録を見て、後でフローを直す。意図しない要素を選んでいないかを確かめる | 製品の契約に付く機能。Power Automate の Self-healing はプレビューの間、組織のプレミアムアカウントに追加費用なし | Microsoft Learn「Self-healing (preview)」、UiPath「Healing Agent のユース ケース」 |
| 読み取りと判断の工程だけAIに渡す | 帳票や文面の形が毎回違う。例外の分岐が増え続ける | AIの出した結果の確認と、誤ったときの戻し方 | トークンの量に応じた従量。準備は工程1つごと | 使うAIの料金表(Claude なら API の Pricing の表) |
| AIに画面操作ごと任せる | 相手にAPIが無く、件数が少なく、急がない | 影響の出る操作の前の確認と、誤操作の点検 | 手順1つごと。Copilot Studio は1ステップ5クレジット、プレミアムモデルは15クレジット | Microsoft Learn「computer use」、Anthropic「Computer use tool」 |
上の2行はRPAを残す手段、下の2行はAIに渡す手段です。「AIに替える」と一口に言っても、3行目と4行目では渡す範囲も費用の増え方も違います。経営会議で出る「AIに替えれば」が、どの行を指しているのかを先に確かめると、話がかみ合います。
製品名は、公式資料で確かめられる例です。別の製品なら、同じ列を自社の製品の資料で埋めてください。
RPAの保守が重くなる原因は、2つに分かれる
仮の場面を1つ置きます。経営会議で「AIに替えれば」と言われた情報システム責任者が停止記録を見返すと、止まった理由が取引先のWebサービスの画面変更に集まっていた、という場面です。この場合、RPAの弱点は「判断ができないこと」ではなく、別の所にあります。
この領域でつまずきやすいのは、ツール選定よりも「業務の中のどこに組み込むか」の設計です。BoostXのAIエージェント開発は、業務ヒアリングから設計・定着支援までをサービス対応範囲としてカバーできる領域です。
画面の変更で止まる
RPAは、画面の上のボタンや入力欄を、識別子やセレクターと呼ばれる目印で探して操作します。Microsoft は Power Automate の公式ドキュメントで、デスクトップアプリやWebページが要素の識別子を変えること、見た目はほぼ同じでもセレクターが一致しなくなることを、フローが失敗する場面に挙げています。同社のトラブルシューティングの記事が扱うのも、作成した時点では動いた操作が、その後の実行でエラーになる例です。
UiPath の公式ドキュメントも、ユーザーインターフェイスが頻繁に変わるとセレクターの静的な属性が変わる、という同じ仕組みの説明です。
Microsoft の同じ文書は、従来のエラー処理は決まった再試行に頼っており、こうした変更には適応できないと書いています。目印が変わっていれば、同じ操作を何度やり直しても見つかりません。
入力のばらつきや判断で止まる
もう1つは、画面は変わっていないのに止まる場合です。取引先ごとに請求書の項目の並びが違う、例外のたびに条件の分岐を足してフローが長くなる、といった止まり方です。こちらは、決まった手順をなぞるRPAの作りそのものが合っていません。
停止記録の仕分け方
直近3か月の停止記録を、1件ずつ次の問いで分けます。「相手の画面やシステムが変わっていなければ、同じフローで動いたか」。動いたなら画面の変更、動かなかったなら入力のばらつきか判断です。仕分けた件数は、フローごとに数えておきます。
画面の変更で止まるRPAは、AIに替えるべきか
画面の変更で止まるRPAは、AIに替える前に、今の製品にあるAIの自己修復を足し、それでも止まるものだけ接続の仕方を変えます。手順は決まっていて、RPAが向く仕事であることは変わらないからです。
RPA製品に付き始めたAIの自己修復
Power Automate の Self-healing は、要素が見つからないエラーが起きたときに、AIが画面から目的の要素を探し直して実行を続ける機能です。UiPath の Healing Agent も、セレクターの変化を検出して新しいセレクターを動的に生成する機能として説明されています。インターフェイスの変化や外部要因で起きたUI操作の自動化のエラーを検出して回復する、というのが同社の位置づけです。
どちらも提供元自身による機能の説明で、回復できる割合の数字は公式資料にありません。効くかどうかは、自社のフローで試して確かめます。
自己修復を足しても残る仕事
残る仕事は2つあります。1つは点検です。Microsoft は、Self-healing は生成AIを使うため、意図しない画面要素を選ぶことがありうると明記しています。金額の確定や送信のように誤りが重い操作を含むフローでは、修復が起きた回の結果を人が見ます。
もう1つは手直しです。同じ文書は、自己修復を、後で人がフローを調整するまでの間、実行を続けるためのものと説明しています。直す仕事は無くならず、急いで直す仕事が、記録を見て後で直す仕事に変わるだけです。
提供条件にも注意が要ります。Power Automate の Self-healing はプレビューの機能で、現時点では組織のプレミアムアカウントが追加費用なしで使えるとされていますが、正式提供のときの条件は書かれていません。条件は変わりうるので、判断の時点で公式ページを開き直してください。
それでも止まるものは、接続の仕方を変える
自己修復を試しても止まり続けるフローは、画面を経由すること自体を見直します。相手のシステムにAPIやファイルの出力機能があれば、画面を操作せずにデータを受け渡す形へ変えると、画面の変更の影響を受けなくなります。APIが無い相手だけが、次の節の候補として残ります。
AIに画面操作ごと任せると、何が変わるのか
AIがパソコンを操作できるなら、RPAは要らなくなるのか。件数が少なく、急がず、相手にAPIが無い作業にはAIの画面操作が向きます。大量で毎回同じ操作は、人より遅くなりうるうえに手順ごとに料金がかかるため、RPAが残ります。
できること
AIが画面を見て、ボタンやメニューや入力欄を自分で操作する機能は、computer use と呼ばれています。Microsoft は Copilot Studio の computer use について、システムに直接つなぐAPIが無い場合でもエージェントが作業を完了できる、AIで動くので画面の変更に適応する、と説明しています。目印を前もって登録するRPAと違い、その場の画面を見て操作先を決める作りです。ただし「適応する」は提供元の説明で、失敗の割合は示されていません。
公式資料が書いている制約
Anthropic は Claude の computer use の文書で、制約を具体的に挙げています。
- 人が操作する場合に比べて遅くなりうる。速さが重要でない用途に絞ることを勧めている
- 操作する座標の出力で、誤りや作り話が起こりうる。特殊なアプリや、複数のアプリをまたぐ操作では信頼性が下がりうる
- 金銭の取引や規約への同意のように、現実に影響の出る判断の前には、人の確認を挟むことを勧めている
任せる作業と、RPAに残す作業の境目
この制約から、境目は3つの問いで引けます。1件あたりの処理が遅くても困らないか。1件誤ったときに取り返しがつくか。月の件数は、手順ごとの料金を払っても見合う少なさか。3つとも「はい」なら任せる候補です。件数の多い作業を毎日同じ手順で流す場合は、1つ目と3つ目で外れます。
RPAとAIの費用は、増える単位が違う
RPAの料金はユーザー数やボット数で決まり、AIに画面を操作させる料金は手順の数、AIに読み取りや判断をさせる料金はトークンの量で決まります。以下は2026年10月時点の公式の料金表とドキュメントの記載です。
RPAは、人数と台数で決まる
Power Automate の日本向けの価格ページでは、人が起動して使うRPAを含む Power Automate Premium が1ユーザーあたり月額相当2,248円、無人で実行するRPAを動かせる Power Automate Process が1ボットあたり月額相当22,488円です。どちらも年払いの月額相当で、消費税を含まない表示です。処理する件数が増えても、ユーザーとボットを増やさない限り、この金額は変わりません。
AIの画面操作は、手順の数で決まる
Copilot Studio の computer use は、1ステップごとに5 Copilot クレジット、プレミアムモデルを使う場合は15 Copilot クレジットを消費します。クレジット1つあたりの金額は契約によって違うため、ここでは金額に直しません。Claude の computer use は、操作のたびに撮る画面のスクリーンショットが画像の入力として課金されます。画面を1回操作するたびに費用が積み上がります。
読み取りと判断だけなら、トークンの量で決まる
工程だけをAIに渡す場合は、読ませた量と書かせた量で決まります。Claude の API の料金表では、Claude Sonnet 5.5 が入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり10ドルです(米ドル建て)。画面を操作しないので、スクリーンショットの分はかかりません。
件数が増えたときの計算例
仮の件数で、単位の違いを確かめます。1件の処理に画面操作が20ステップ要る作業を、月に1,000件流すとします。Copilot Studio の computer use では、20ステップ×1,000件×5クレジットで月10万クレジット、プレミアムモデルなら30万クレジットです。件数が2倍になれば、消費も2倍になります。同じ作業を無人のRPAで流す場合、1台のボットで処理しきれる間は、件数が2倍になっても料金は1ボット分のままです。
自社で試算するときは、フローごとに「1件あたりのステップ数×月の件数」を出し、契約しているクレジットの単価を掛けます。この数字が、そのフローのために払っているボットの料金と、直す作業にかけている時間を上回るなら、画面操作をAIに任せる理由は費用の面からは立ちません。なお、これからRPAを入れる場合の費用の内訳は、RPAの導入費用を扱った記事に分けています。
続けるか替えるかを、社内でどう決めるか
全部を一度に替えず、RPAを1本ずつ表の行に振り分けます。材料は3つで、集める順も決まっています。
集める3つの材料
- フローごとの停止件数を、画面の変更と、入力のばらつき・判断に分けたもの(先に仕分けた件数)
- フローごとの月の処理件数と、1件誤ったときに何が起きるか(金額が動く、社外に送られる、社内で直せる、のどれか)
- 今の製品でAIの自己修復が使えるか。契約しているプランが対象か、管理画面で機能を有効にできるか、プレビューか正式提供かの3点を、契約書と製品の公式ページで確かめる
表への当てはめ方
1つ目の材料で、止まっていないフローは1行目に置きます。画面の変更で止まるフローは、3つ目の材料で自己修復が使えるなら2行目、使えないか試しても止まるなら、接続の仕方の見直しへ回します。入力のばらつきや判断で止まるフローは3行目です。切り出すのは止まっている工程だけで、前後の転記や登録はRPAのまま残せます。
4行目に置くのは、相手にAPIが無く、2つ目の材料で件数が少なく誤りが軽いと分かったフローだけです。置く前に「1件あたりのステップ数×月の件数」で月の消費を出しておきます。
経営会議への返し方
返事は「替える・替えない」ではなく、本数で返します。形はこうです。「RPAは全部で◯本。うち◯本は止まっておらず、そのまま続ける。◯本は画面の変更で止まっているので、製品のAI自己修復を試す。◯本は帳票の読み取りで止まっているので、その工程だけAIに渡す。画面操作ごとAIに任せるのは、件数の少ない◯本に限る。AIの費用は件数に比例して増えるため、件数の多いフローはRPAに残す」。
この記事のまとめ
- 停止記録が残っていない場合は、今日から4つの欄で付け始めます。止まった日、フローの名前、止まった操作、原因の区分(画面の変更か、入力・判断か)です。1か月分たまれば、振り分けを始められます。
- 自己修復を最初に試すのは、誤っても社内で直せるフロー1本にします。試す期間を先に決め、修復が起きた回数と、その結果が正しかった回数を控えます。
- 料金表とプレビューの提供条件は、経営会議の直前にもう一度開きます。返事の資料には、金額の横に確かめた日と、税・通貨・年払いの条件を書き添えます。
公開日:2026年10月
読んで終わりにしないために
「自社の場合は、どうすれば?」
その答えを、最大45分で持ち帰る。
記事で分かるのは、一般論まで。AI導入を専門に見ている担当が、貴社の業務に当てはめて“次の一手”だけを一緒に整理します。
この相談で持ち帰れるもの
- 01
自社業務に当てはめたAI活用マップ
- 02
投資対効果(ROI)のシミュレーション
- 03
いまの悩み・疑問への、その場の個別回答


