総務に異動した人が、最初にぶつかる壁があります。「就業規則のたたき台、誰が作るの——」。社内規程の整備を任され、白紙のWordを前に固まってしまう。ひな形を探しても自社に合わず、社労士に頼むほどの予算もない。規程づくりは、こうして後回しになりがちな仕事です。
この記事では、就業規則や社内規程の「たたき台」を生成AIで短時間に作るための章立てテンプレート、コピーして使えるプロンプトの組み立て方、そしてたたき台を専門家の確認につなげる流れまで、白紙から動き出せる形で解説します。
- AIに任せるのは「たたき台」まで。法令適合や正式版の確定は人と専門家の仕事と線引きする
- 先に章立てを固め、就業規則は総則・服務・労働時間・賃金・退職などの一般的な構成を出発点にする
- プロンプトには役割・対象規程・自社条件・出力形式・たたき台である旨の5要素を盛り込む
目次
なぜ規程の「たたき台づくり」にAIが向いているのか
【結論】規程づくりがつらいのは「白紙からの第一稿」が重いからです。生成AIはこの第一稿=たたき台づくりを得意とします。ただし完成版ではなく、あくまで議論と専門家確認の出発点として使うのが前提です。
就業規則や社内規程の整備が後回しになる一番の理由は、「何をどう書き始めればいいか分からない」ところでつまずくからです。条文の言い回しは独特で、章立ても多岐にわたります。ひな形をダウンロードしても、自社の勤務形態や制度に合わせて直す作業がまた大変で、結局そのまま塩漬けになってしまう。多くの会社で起こりがちな構造です。
生成AIは、この「白紙から第一稿を起こす」場面でこそ力を発揮します。一般的な就業規則がどんな章で構成されるか、それぞれの条文がどんな趣旨で置かれるかといった、広く知られた型をベースに文章を組み立てるのが得意だからです。ゼロから書くと半日かかる作業の出発点が、数分で形になります。手を動かす前に「たたき台がある」状態に持ち込めることが、最大の価値です。
AIに任せてよい範囲・任せてはいけない範囲
ここを取り違えると危険です。生成AIに任せてよいのは、あくまで「たたき台」の段階に限られます。完成した規程としてそのまま運用したり、就業規則を労働基準監督署へ届け出る最終版にしたりするのは適切ではありません。法令の解釈や自社の実態への適合は、人の目で確かめる必要があるからです。次の表で線引きを整理します。

要点はシンプルです。「考えるための材料を素早く揃える」ところまでがAIの役割で、「最終的に正しいと保証する」のは人と専門家の仕事です。この線引きを最初に共有しておくと、AIの出力を過信して事故になることを防げます。なお、労働基準法など関連法令の要件は改正される場合があるため、条文の内容は必ず最新の公式情報や専門家への確認とあわせてご判断ください。
就業規則・社内規程のたたき台に使える章立てテンプレート
【結論】たたき台づくりは「章立て」から始めると迷いません。就業規則なら総則・採用・服務・労働時間・休暇・賃金・退職・安全衛生・表彰懲戒などが一般的な骨組みです。まず構成を固め、章ごとに中身を埋めていきます。
この領域でつまずきやすいのは、ツール選定よりも「業務の中のどこに組み込むか」の設計です。BoostXの生成AI伴走顧問は、業務ヒアリングから設計・定着支援までをサービス対応範囲としてカバーできる領域です。
いきなり条文を書こうとすると、抜け漏れが怖くて手が止まります。先に全体の章立てを決めてしまえば、あとは箱を一つずつ埋める作業になり、進めやすくなります。ここでは就業規則とその他の社内規程に分けて、よく使われる構成を示します。
就業規則の一般的な章立て
就業規則でよく置かれる章は、おおむね次のようになります。自社にない制度の章は外し、必要な章を足して使ってください。
就業規則の章立て(たたき台用)
第1章 総則(目的・適用範囲)/第2章 採用・異動(採用手続・試用期間・人事異動)/第3章 服務規律(遵守事項・ハラスメント防止・秘密保持)/第4章 労働時間・休憩・休日/第5章 休暇(年次有給休暇・特別休暇・育児介護休業)/第6章 賃金(基本給・諸手当・割増賃金・支払方法)/第7章 退職・解雇(定年・自己都合退職・解雇事由)/第8章 安全衛生・災害補償/第9章 表彰・懲戒
この骨組みをAIに渡し、「自社は完全週休2日・フレックスなし・従業員◯名規模」といった条件を伝えると、各章のたたき台が一気に出てきます。ゼロから章立てを考える時間がまるごと省けるのが、ここでの効きどころです。
就業規則以外の社内規程の例
就業規則とは別に整備されることが多い規程もあります。それぞれ目的が明確なので、たたき台づくりとの相性が良い領域です。代表的なものを挙げます。
こうした単発の規程は、目的が一つに絞られている分、たたき台が作りやすい領域です。「テレワーク規程のたたき台を、対象は内勤の正社員・申請は前日まで・通信費は月◯円補助という条件で」と伝えれば、骨格が短時間で形になります。ただし育児・介護休業のように法令の改正が反映されやすい領域は、最新の制度内容を必ず公式情報や専門家とあわせて確認してください。
そのまま使えるプロンプトの組み立て方
【結論】良いたたき台は良い指示から生まれます。「役割・対象規程・自社条件・出力形式・たたき台である旨の明記」の5要素を盛り込むと、手直しの少ない第一稿が返ってきます。
「就業規則を作って」とだけ伝えると、一般論的で当たり障りのない文章が返ってきて、結局自社向けに大幅な書き直しが必要になります。最初の指示に自社の条件を盛り込むほど、たたき台の精度は上がります。次の5要素を意識してください。
プロンプトに盛り込む5要素
コピーして使えるプロンプト例
ChatGPTやGeminiなどの生成AIに、次のような形で貼り付けて使えます。山括弧の部分を自社の条件に置き換えてください。
あなたは社内規程づくりを補助する役割です。
当社の<テレワーク規程>のたたき台を作成してください。
【当社の条件】
・従業員数:<20名>
・対象者:<内勤の正社員>
・在宅可能日数:<週2回まで>
・申請方法:<前日までに上長へ申請>
・費用負担:<通信費として月◯円を補助>
【出力形式】
・章立てを示したうえで、第◯条の通し番号付きの条文形式で
・専門家の確認前の「たたき台」として作成
・自社で判断が必要な箇所には[要検討]と注記
最後の「[要検討]と注記」という一文がポイントです。AIに「ここは自社や専門家で判断すべき」という箇所を明示させておくと、たたき台を見直すときに優先して確認すべき点が一目で分かります。出てきた第一稿に対しては、「第◯条をもっと具体的に」「この章を分割して」と対話を重ねるほど、自社に近づいていきます。
たたき台を専門家の確認につなげる流れ
【結論】たたき台は「AIで作って終わり」ではありません。社内で内容をすり合わせ、社労士など専門家の確認を受け、正式版として確定する。この流れまで設計してこそ、規程として機能します。
AIが出したたたき台をそのまま運用してしまうのが、いちばん危険な使い方です。たたき台はあくまで議論の出発点であり、ここから人の手で仕上げる工程が欠かせません。全体の流れを4つのステップで整理します。
たたき台から正式版までの4ステップ
この流れで見ると、AIが担うのはステップ1だけで、残りは人と専門家の仕事だと分かります。ですが、ステップ1が短時間で終わるおかげで、ステップ2以降に時間と頭を使えるようになります。たたき台づくりに半日かけて疲弊するのではなく、「自社にとって本当に大事な論点は何か」を議論する時間に回せるのが、AI活用の本当のメリットです。
専門家に渡すときの伝え方
社労士などに確認を依頼する際は、「AIで作ったたたき台です。法令適合と自社実態への適合を確認してほしい」と前提を明確に伝えるとスムーズです。AIの出力には、もっともらしく書かれていても実態と合わない箇所や、古い情報が混じる可能性があります。たたき台であることを共有しておけば、専門家も「ここは要注意」という視点で見てくれます。AIに付けさせた[要検討]の注記をそのまま渡すのも、確認の効率を上げる一つの方法です。
ビフォーアフター:規程づくりがここまで変わる
【結論】たたき台づくりにAIを使うと、「白紙で固まる時間」が消え、「自社に合わせて考える時間」に置き換わります。違いを生むのは、AIをどう使うかという運用設計と仕組み化です。
同じ規程づくりでも、AIの使い方次第で進み方は大きく変わります。導入前と導入後の様子を並べてみます。
Before(AIを使う前)
白紙のWordを前に何時間も手が止まる。ひな形を探して回り、自社に合わせる修正で疲弊し、規程づくり自体が後回しになる。気づけば必要な規程が整わないまま何ヶ月も過ぎている。
After(AIをたたき台づくりに使った後)
条件を伝えれば章立て付きのたたき台が短時間で形になる。担当者は「白紙の不安」から解放され、自社にとって本当に重要な論点の検討と、専門家への確認準備に集中できる。
この差を生むのは、AIという道具そのものよりも、「どこまでをAIに任せ、どこから人が仕上げるか」という運用設計です。たたき台づくりをAIに任せる仕組みを一度整えておけば、就業規則だけでなく、他の社内規程やマニュアルづくりにも同じ型を横展開できます。最初の仕組み化が、その後のあらゆる文書づくりを楽にしていきます。どこから手を付ければよいか迷う場合は、自社の業務に合わせた進め方を一緒に整理するところから始めると、無理なく動き出せます。
よくある質問
Q. AIが作った就業規則をそのまま使ってもいいですか?
A. そのまま正式版として使うのはおすすめしません。あくまで「たたき台」として活用し、自社の実態に合わせて修正したうえで、社労士など専門家の確認を受けてから確定してください。法令適合や届け出に関わる部分は、人の責任で判断する必要があります。
Q. どの生成AIを使えばたたき台を作れますか?
A. ChatGPTやGeminiなど、一般的な対話型の生成AIで章立てや条文のたたき台を作れます。業務で使う場合は、入力データが学習に使われない法人向けプランの利用が安心です。自社の固有情報を入力する際は、扱いに注意してください。
Q. 自社の制度をどこまでプロンプトに書けばいいですか?
A. 従業員規模・対象者・勤務形態・申請方法など、規程の中身を左右する条件を伝えるほど、たたき台が自社に近づきます。一方で、個人を特定する情報や具体的な金額などの機密情報は、入力を避けるか伏せて伝えるのが安全です。
Q. AIに任せると、かえって確認の手間が増えませんか?
A. たたき台に[要検討]の注記を付けさせるなど、確認すべき箇所を最初から明示させておくと、見直しの手間を抑えられます。白紙から第一稿を起こす時間が省ける分、トータルでは検討に使える時間が増えるケースが多いです。
この記事のまとめ
就業規則や社内規程の整備が後回しになるのは、「白紙からの第一稿」が重いからです。生成AIはこのたたき台づくりを得意とし、章立てから条文案までを短時間で形にできます。大切なのは、たたき台はあくまで出発点だと割り切ること。社内ですり合わせ、専門家の確認を受けて正式版に仕上げる流れまで設計すれば、規程づくりは無理なく前に進みます。
- AIに任せるのは「たたき台」まで。法令適合や正式版の確定は人と専門家の仕事と線引きする
- 先に章立てを固め、就業規則は総則・服務・労働時間・賃金・退職などの一般的な構成を出発点にする
- プロンプトには役割・対象規程・自社条件・出力形式・たたき台である旨の5要素を盛り込む
- たたき台→社内すり合わせ→専門家確認→正式版確定の4ステップで進める
公開日:2026年6月
読んで終わりにしないために
「自社の場合は、どうすれば?」
その答えを、30分で持ち帰る。
記事で分かるのは、一般論まで。現役の生成AI伴走顧問が、貴社の業務に当てはめて“次の一手”だけを一緒に整理します。
この30分で持ち帰れるもの
- 01
自社業務に当てはめたAI活用マップ
- 02
投資対効果(ROI)のシミュレーション
- 03
いまの悩み・疑問への、その場の個別回答