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医療・介護のAI導入で使える補助金・助成金一覧|申請のポイント解説

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AI関連のシステム導入には数十万円から数百万円の初期費用がかかることが多く、「やってみたいが費用面がネック」という医療・介護施設の声はいまだに多くあります。しかし実際には、公的な補助金・助成金を活用することで、導入コストを大幅に圧縮できるケースが少なくありません。人材開発支援助成金とIT導入補助金を組み合わせれば、条件次第で導入コストの50〜75%をカバーできる場合もあります。この記事では、医療・介護施設がAI導入時に活用できる補助金・助成金の具体的な制度内容と、申請を通すために押さえておくべきポイントを整理しました。なお、AI導入を継続的にサポートする伴走顧問サービスを利用すれば、補助金申請に必要な研修計画の策定から実行までを一貫して進められます。

医療・介護のAI導入費用に使える制度の全体像

医療・介護施設がAI導入で使える公的支援制度は、大きく3つのカテゴリに分かれます。「人に対する支援」「ツールに対する支援」「医療DX推進のための支援」です。それぞれ管轄省庁や対象経費が異なるため、自施設の導入計画に合った制度を選ぶことが重要です。

制度名 管轄 対象経費 補助率 補助上限
人材開発支援助成金 厚生労働省 AI研修・教育訓練費用 最大75% 経費助成+賃金助成
IT導入補助金(通常枠A) 経済産業省・中小企業庁 AIツール・システム導入費 1/2 150万円
IT導入補助金(通常枠B) 経済産業省・中小企業庁 AIツール・システム導入費 1/2 450万円
介護テクノロジー導入支援事業 厚生労働省 介護ロボット・AI機器 都道府県により異なる 都道府県により異なる
地域医療介護総合確保基金 厚生労働省・都道府県 ICT・AI導入等 都道府県の交付要綱による 各都道府県の予算枠

ポイントは、これらの制度を組み合わせて活用できるケースがあることです。たとえば、AIツール自体の導入費用にIT導入補助金を使い、そのツールを活用するためのスタッフ研修に人材開発支援助成金を申請するという形です。ただし、同一経費への二重申請はできないため、対象経費を明確に分けて計画する必要があります。

人材開発支援助成金|AI研修費用の最大75%を補助

医療・介護施設がAI導入を進める際に、最も活用しやすいのが厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。この制度は、事業主が従業員に対して職業訓練を行った場合に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。生成AIの業務活用研修も対象となります。

助成率と対象コース

人材開発支援助成金にはいくつかのコースがありますが、AI研修で主に活用されるのは「人への投資促進コース」と「事業展開等リスキリング支援コース」です。特にリスキリング支援コースでは、新たな分野で必要となる知識・技能を習得するための訓練が対象で、AIスキルの習得はまさにこれに該当します。

項目 中小企業 大企業
経費助成率 75% 60%
賃金助成(1人1時間あたり) 960円 480円
1事業所あたりの年間上限 1億円 1億円

医療法人や社会福祉法人であっても、雇用保険の適用事業所であれば申請が可能です。「うちは医療法人だから対象外では」と思われがちですが、雇用保険に加入している従業員がいれば問題ありません。

具体的な費用シミュレーション

看護師・介護職員30名に対して10時間の生成AI活用研修を実施した場合の試算を示します。研修費用を1人あたり5万円(合計150万円)とした場合の計算例です。

項目 金額 計算根拠
研修費用(合計) 150万円 5万円 x 30名
経費助成(75%) 112.5万円 150万円 x 75%
賃金助成 28.8万円 960円 x 10時間 x 30名
助成金合計 141.3万円 経費助成 + 賃金助成
実質自己負担 8.7万円 150万円 – 141.3万円

150万円の研修費用に対して、実質負担が約8.7万円まで下がる計算です。1人あたりに換算すると約2,900円です。この助成率の高さが、人材開発支援助成金が最も活用しやすい制度と言われる理由です。

申請の流れ(必ず研修前に届出が必要)

人材開発支援助成金で最も見落とされがちなのが「事前届出」のルールです。研修を開始する前に、管轄の労働局に訓練計画届を提出しなければなりません。研修を実施した後に「助成金があると知ったから申請したい」というケースは認められません。

申請の基本ステップ

1. 訓練計画の策定(研修内容・時間・対象者を整理) → 2. 訓練計画届を労働局に提出(研修開始の1か月前まで) → 3. 研修の実施(出席管理・受講記録を正確に残す) → 4. 支給申請書を労働局に提出(訓練終了後2か月以内) → 5. 審査・支給決定

計画届の作成にあたっては、研修の目的・カリキュラム・時間数・受講対象者などを具体的に記載する必要があります。「AIの基本を学ぶ」のような曖昧な表現では審査で指摘を受けることがあるため、「生成AIを用いた患者対応文書の自動作成」「ChatGPTによる介護記録の入力効率化」のように、業務との関連が明確な内容で記述することが求められます。

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医療・介護施設がAI導入を進める際の確認項目を網羅。補助金申請前の現状整理にも使えます。

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IT導入補助金|AI系ITツール導入に幅広く活用できる

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際の費用を補助する制度で、経済産業省(中小企業庁)が運用しています。AI関連のITツールも対象に含まれるため、医療・介護施設が業務システムにAI機能を追加する場合に活用できます。

対象となるAIツールの例

IT導入補助金の対象になるのは、「IT導入支援事業者」としてあらかじめ登録されたベンダーが提供するITツールです。医療・介護分野では以下のようなツールが対象になり得ます。

ツールカテゴリ 具体例 想定される申請枠
AI予約・受付管理 AIチャットボットによる予約受付、自動リマインド配信 通常枠A(上限150万円)
AI問診システム 来院前のAI問診、トリアージ支援 通常枠A〜B
介護記録AI 音声入力+AIによる介護記録自動作成 通常枠A(上限150万円)
画像診断支援AI X線・CT画像のAI解析支援 通常枠B(上限450万円)
電子カルテ連携AI カルテ入力補助、要約作成機能付き電子カルテ 通常枠B(上限450万円)

申請の注意点

IT導入補助金の申請で最も重要なのは、IT導入支援事業者を経由して申請する仕組みになっている点です。補助金の対象となるITツールは、事務局に登録済みのものに限られます。導入したいAIツールがIT導入補助金の対象かどうかは、提供元のベンダーに事前に確認してください。

また、通常枠Aは補助額30万〜150万円(補助率1/2以内)、通常枠Bは補助額150万〜450万円(補助率1/2以内)となっており、導入費用の半額を自己負担する必要があります。人材開発支援助成金の75%と比べると補助率は低いものの、ツール本体の費用を対象にできるのが大きなメリットです。

医療DX関連の補助制度(厚生労働省系)

厚生労働省は、医療DXの推進を政策の柱に位置づけており、関連する複数の支援制度を設けています。直接「AI導入補助金」と名のついた制度ではないものの、AI活用と密接に関連する制度が複数あります。

医療DX推進体制整備加算(診療報酬)

これは補助金ではなく診療報酬上の加算ですが、医療DXに取り組む医療機関の収入増につながる制度です。マイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入、電子処方箋への対応、電子カルテ情報共有サービスへの対応などが要件に含まれます。AI導入の前段階として電子カルテの整備を進める際に、この加算で投資回収の一部を賄えます。

介護テクノロジー導入支援事業

介護施設向けの支援として、厚生労働省は介護ロボットやAI機器の導入を促す事業を都道府県を通じて実施しています。見守りセンサー、移乗支援機器、コミュニケーションロボットなどが主な対象ですが、AI搭載の介護記録支援システムやケアプラン作成支援AIも対象になる場合があります。補助額・補助率は都道府県ごとに異なるため、施設が所在する都道府県の担当窓口に確認が必要です。

地域医療介護総合確保基金

都道府県が国の交付金をもとに運用する基金で、地域の医療・介護提供体制の整備に充てられます。ICT導入やデジタル化への補助メニューが含まれている都道府県があり、AI導入がこの枠で支援される場合もあります。都道府県ごとに事業計画や補助要綱が異なるため、管轄の都道府県庁の医療政策課や介護保険課に問い合わせるのが確実です。

補助金申請を成功させる3つのポイント

制度を知っていても、申請が通らなければ意味がありません。医療・介護施設のAI導入で補助金を確実に活用するために、押さえておくべきポイントを3つに絞って整理します。

ポイント1:申請スケジュールを逆算して計画する

補助金・助成金には公募期間があり、申請の締切を過ぎると受け付けてもらえません。特に人材開発支援助成金は「研修開始の1か月前までに計画届を提出」というルールがあるため、研修の実施日から逆算して準備を始める必要があります。IT導入補助金も年に数回の公募期間が設けられるため、導入したいタイミングに合った公募回を狙って準備してください。

ポイント2:「業務上の課題」と「導入後の効果」を具体的に書く

申請書で審査担当者が見ているのは、「なぜこの投資が必要なのか」と「投資によってどんな効果が見込めるのか」の2点です。「AIを導入して業務効率を上げたい」という抽象的な記述では不十分です。「介護記録の入力に1件あたり15分かかっている。AI音声入力を導入することで5分に短縮し、利用者への直接的なケア時間を1日あたり2時間増やす」のように、現状の数値と導入後の見込みを対比させる書き方が効果的です。

ポイント3:研修計画は「業務との関連」を明確に

人材開発支援助成金の計画届では、研修内容と実際の業務との関連性が重視されます。「ChatGPTの基本操作」だけでは審査上不利です。「生成AIを用いた退院サマリーの下書き作成」「AIによるケアプラン文案の自動生成と修正方法」のように、受講者の日常業務で実際に使う場面を想定したカリキュラムになっていることが求められます。株式会社BoostXの生成AI伴走顧問サービスでは、こうした研修計画の策定からカリキュラム設計、申請書の記載サポートまでを一貫してお手伝いしています。

申請書の「目的・成果」欄の書き方例

NG例:「AI技術について学び、業務に活用する」
OK例:「生成AIを活用した介護記録作成の効率化により、記録業務を1件あたり15分から5分に短縮し、利用者への直接介護時間を1日あたり2時間確保することを目指す。対象職員30名がChatGPTによる文書作成・要約・定型文生成を習得し、3か月以内に全職員が日常業務で活用できる状態を実現する。」

まとめ

医療・介護のAI導入で使える補助金・助成金のポイント

  • 人材開発支援助成金は研修費用の最大75%を補助。医療法人・社会福祉法人も対象。30名規模の研修なら実質負担は1人あたり約3,000円まで圧縮可能
  • IT導入補助金は、AI搭載の業務システム導入費用の1/2(最大450万円)を補助。IT導入支援事業者を通じて申請する
  • 厚生労働省系の制度(介護テクノロジー導入支援事業・地域医療介護総合確保基金)は都道府県ごとに内容が異なるため、所在地の窓口に確認する
  • 人材開発支援助成金は「研修前の計画届出」が必須。研修開始の1か月前には届出を済ませる
  • 申請書には「現状の数値」と「導入後の見込み」を対比させ、投資効果を具体的に記載する

補助金・助成金を活用すれば、医療・介護施設のAI導入は「高額な先行投資」ではなく「少額の自己負担で始められる業務改善」に変わります。制度の仕組みを理解し、スケジュールを逆算して申請準備を進めることが、確実に活用するための第一歩です。

Q.医療法人でも人材開発支援助成金は使えますか?

A.はい、使えます。医療法人・社会福祉法人であっても、雇用保険の適用事業所であれば人材開発支援助成金の対象になります。パートやアルバイトであっても、雇用保険に加入していれば受講対象者に含められます。

Q.複数の補助金を同時に使うことはできますか?

A.対象経費が重複しない範囲であれば、併用が可能な場合があります。たとえば、AIツール導入費用にIT導入補助金を使い、そのツールを使いこなすための従業員研修に人材開発支援助成金を申請するという組み合わせは認められるケースがあります。ただし、制度ごとに併用の可否が異なるため、管轄窓口に事前に確認してください。

Q.補助金の申請から入金までどれくらいかかりますか?

A.制度によって異なりますが、人材開発支援助成金の場合は支給申請から入金まで3〜6か月程度が一般的です。IT導入補助金も交付決定後の実績報告から数か月かかります。いずれの制度も「先に費用を支払い、後から助成金が入金される」仕組みのため、一時的な資金繰りを計画に含める必要があります。

Q.生成AI(ChatGPT等)の活用研修も助成金の対象になりますか?

A.対象になります。人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」では、デジタル分野の新たなスキル習得を目的とした訓練が対象に含まれます。生成AIを業務に活用するための研修は、この要件を満たします。ただし、カリキュラムの内容が実際の業務に直結していることを計画届で明確にする必要があります。

吉元大輝

よしもとひろき

株式会社BoostX 代表取締役社長

中小企業の生成AI導入を支援する「生成AI伴走顧問」サービスを提供。業務可視化から定着支援まで、一気通貫で企業のAI活用を推進している。

※本記事の情報は2026年4月時点のものです。

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