Blog AI顧問導入ガイド

運送会社の荷待ち2時間が消えるAI記録|内製比較表つき

公開 2026.09.14 ・ 最終更新 2026.09.21 ・ 読了目安 約15分

夕方の事務所で、運行管理の担当者が日報の束を前に手を止めます。「今日も着荷先で2時間待ったと運転者から聞いた。でも、何時に着いて何時に積み始めたかは日報のどこにも書いていない。荷主に言いたくても、出せる数字が1つもない」。運送会社では、荷待ちの長さを誰もが体で知っているのに、それを示す記録がどこにも残っていないという構造が珍しくありません。

先に結論を書きます。荷待ちの時間そのものをAIが縮めることはできません。AIが引き受けられるのは、荷待ちが何分あったかを記録し、集計し、荷主に出せる形にするまでの手間です。この記事では、国土交通省「トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間に関する調査結果の公表」(2026年9月確認)と全日本トラック協会「経営分析報告書(概要版)令和4年度決算版」(2026年9月確認)の数字を確かめたうえで、荷待ちの2時間が利益のどこを削るのか、記録をAIに預けると手元に何が残るのか、紙・表計算・AIの3方式の比較、自前で続けたときに止まる場所を整理します。

30-SECOND SUMMARY忙しい方へ|この記事の結論
  1. 国土交通省の調査(令和8年7月10日公表)では、トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間は10時間13分、うち荷待ち・荷役等時間は2時間2分でした。これは業界全体の平均であり、自社の数字は自社で記録しない限り分かりません(2026年9月確認)。
  2. 全日本トラック協会の経営分析報告書(令和4年度決算版)では、貨物運送事業の営業損益は0.0%、車両10台以下の区分では64%が営業赤字です。1運行2時間2分の荷待ち・荷役等が対価に乗らないまま続くと、この薄い利益をそのまま削ります(2026年9月確認)。
  3. AIで消えるのは荷待ちそのものではなく、到着・受付・積込開始・積込完了の4つの時刻を集め、週次・荷主別に集計し、荷主に出せる表にするまでの手間です。公開価格の一例として、BoostXのAIエージェント開発は規模により個別お見積もり(PoC→本番導入→拡張)・最低契約3ヶ月です。

荷待ちの2時間は、運送会社のどこを削っているのか

国土交通省が令和8年7月10日に公表した調査では、トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間は10時間13分でした。そのうち荷待ち・荷役等時間は2時間2分です。調査対象は一般貨物自動車運送事業のうち実運送を行う事業者で、2025年4月から同年8月までの通常期における代表的な1日の運行を、2025年11月から同年12月24日までの期間に調べています。1日10時間13分のうち、車が動いていない2時間2分がどこから来て、何を削っているのかを先に押さえます。

荷待ちと荷役等は、別の時間として数える

この調査は、運転時間・荷待ち時間・荷役時間・附帯作業時間・点検・点呼に要した時間・休憩時間という項目に1日を分けて聞いています。荷待ち時間は着荷先や発荷先に着いてから積み込みや荷下ろしが始まるまでの時間、荷役時間は実際に積み下ろしをしている時間です。公表値では「荷待ち・荷役等時間」としてまとめて2時間2分が示されていますが、荷主に出す数字としては、この2つを分けて持っているかどうかで話の重さが変わります。

待たされた1時間と、積み下ろしに使った1時間は、荷主から見ると意味が違うからです。前者は荷主側の段取りで縮められる時間、後者は作業の中身を変えないと縮まらない時間になります。実務では、日報に「待機2時間」と1行で書かれていて、そのうち何分が待ち時間で何分が作業だったかを後から分けられないことが珍しくありません。記録の段階で2つを分けて持つことが、荷主に出す数字の土台になります。

10時間13分のうち2時間2分という、平均の読み方

10時間13分は613分、2時間2分は122分です。単純計算で、拘束時間の約2割が荷待ち・荷役等に使われていることになります。ただし、この2時間2分は調査に回答した事業者全体の平均であって、特定の会社の数字ではありません。短く済む荷主もあれば長く待たされる荷主もあり、その平均が2時間2分だと読むのが正確です。

ここで1つ、はっきりさせておきます。2時間2分の荷待ちがそのままゼロになるわけではありません。AIを入れても、着荷先の段取りが変わらない限り、運転者は明日も同じ場所で待ちます。消えるのは、その2時間2分を記録し、集計し、荷主に出せる形にするまでにかかっている手間の側です。同じ調査では、2025年度は2024年度と比べて運転時間は横ばいのまま平均拘束時間が1時間33分減り、主な要因は荷待ち・荷役等の1時間16分減少でした。業界全体では荷待ちが動いており、動かせた側にいるかどうかは、自社の数字を持っているかで分かれます。

車両10台以下の64%が営業赤字という構造に、2時間が乗る

全日本トラック協会の経営分析報告書(概要版)令和4年度決算版は、全国の事業者2,532者(有効数)の令和4年度決算を分析したものです。平成4年度から発行され、今回で32回目にあたります。営業収益(貨物運送事業収入)は1者平均253,830千円で前年度比4.4%の増加、輸送トン数は1者平均80.3千トンで前年度の75.3千トンから6.6%の増加でした。売上も荷物も増えているのに、貨物運送事業の営業損益は0.0%、経常損益は1.8%です(前年度比でそれぞれ0.9ポイント、1.2ポイントの改善)。

営業損益段階で黒字の事業者は42%(1,076者)、経常損益段階でも57%(1,432者)にとどまります。車両規模別の営業損益率は、10台以下が▲3.6%、11〜20台が▲1.2%、21〜50台が0.0%、51〜100台が1.2%、101台以上が2.1%です。車両10台以下の区分では64%が営業赤字、51%が経常赤字でした。なお、これは令和4年度決算の数字であり、令和6年3月に公表されたものです。最新版は全日本トラック協会の公式サイトで確認してください。

この構造に、1運行2時間2分の荷待ち・荷役等が乗ります。仮に1台が1日1運行で月20日走るなら、1台あたり月40時間40分が車の止まっている時間です。運転時間が横ばいで拘束時間だけが延び、その分の対価を運賃とは別に受け取っていなければ、人件費は会社が負います。営業損益0.0%の会社にとって、荷待ちは「待っている間も給料が出ていく時間」であり、記録がなければ荷主に請求も相談もできない時間です。

荷待ちの記録をAIに預けると、手元に何が残るのか

AIに預けられるのは、荷待ちを「記録し、集計し、出せる形にする」までの3つの手間です。ここを人がやると、運転者は運行のたびに書き、事務は月に1回まとめ、荷主に出す前に誰かが体裁を整えます。AIに預けた場合に手元に残るのは、時刻が4つ揃った1行の記録と、それを週次・荷主別・拠点別に集計した表、そして異常に長い回が先頭に並んだ一覧です。順に見ていきます。

到着・受付・積込開始・積込完了の4つの時刻を揃えるまで

荷待ちを数字にするには、着荷先に着いた時刻、受付を済ませた時刻、積み込みや荷下ろしが始まった時刻、終わった時刻の4つが要ります。4つ揃えば、到着から作業開始までが荷待ち、開始から完了までが荷役として自動で分かれます。AIが引き受けるのは、この4つの時刻を運転者の短い入力や既存の連絡から拾い、1行の記録に揃えるところまでです。

運転者が新しいアプリに4回ログインして4回入力する形は、実務では続きにくいものです。既にある連絡、たとえば「着きました」「積み終わりました」という短い報告や、日報に書かれた時刻のメモから拾えるかどうかが分かれ目になります。1運行あたり4つの時刻は、1日1運行で週5日走れば週20個、月20日で月80個になります。この数を運転者の手間を増やさずに集めること。ここができていない仕組みは、1ヶ月ほどで入力が途切れがちです。

営業所ごとに割れた書式を、1つの表に寄せる

記録があっても、ある営業所は紙の日報、別の営業所は表計算、また別の営業所は運転者からのチャット、という形で書式が割れていることは珍しくありません。時刻の書き方も「14:30」「14時半」「2時半すぎ」と揺れます。AIに預けると、この揺れを1つの書式に寄せ、荷主名や拠点名の表記揺れも同じ荷主・同じ拠点として束ねられます。

私自身、自社の自動化で詰まった場所の1つが、まさにこの「データ形式がバラバラで動かない」でした。運送の記録でも構造は同じで、書式を寄せる工程を人がやると、月末の1日か2日が、その月で最も重い仕事になります。ここをAIに預けると、集計の前に人が書式を直す時間が0分になります。

荷待ち記録でAIに預ける範囲(4つの時刻の収集・書式の統一・週次と荷主別の集計・長い回の抽出)と、人が持ち続ける範囲(荷主との交渉・運賃の判断・運転者への説明)を分けた線引き図
荷待ち記録でAIに任せる範囲と人が持ち続ける範囲の一般的な整理。特定の運送会社の事例ではなく、国土交通省の調査項目をもとにした考え方の図です。

週次・荷主別・拠点別に集計し、長い回を先に出す

4つの時刻が1つの表に揃えば、集計は自動で回せます。週ごとの荷待ち合計、荷主ごとの1回あたりの平均、拠点ごとの最長時間、業界平均の2時間2分を超えた回の数、曜日や時間帯による差が、月に1回ではなく毎週手元に届く形です。荷主に出すときに効くのは、平均よりも「どの拠点で、どの週に、何分待ったか」が並んだ具体の表です。

もう1つ、異常に長い回を先に出す働きがあります。1運行の荷待ちが業界平均の2時間2分を大きく超えた回、同じ荷主で連続して長かった回を、一覧の先頭に並べます。人が全行を眺めて探すのではなく、見るべき数行だけが先に出る状態です。荷主との話し合いに持ち込むのは、この数行になります。

記録の取り方3方式の比較表

紙と手書き集計、表計算の自力運用、AIで集計を寄せる運用の3方式を、続けやすさ・荷主に出せる形・止まったときの気づきやすさ・費用の目安の4行で並べます。費用はBoostXの公開価格の範囲だけで書いています。他社の仕組みを比べるときも、同じ4行に書き直してから並べると、前提の違いを金額の差と取り違えずに済みます。

比べる行 紙・手書き集計 表計算の自力運用 AIで集計を寄せる運用
続けやすさ 運転者は日報に時刻を書くだけ。ただし4つの時刻が揃わない日が出て、事務が月1回まとめる時点で抜けが分かる 運転者か事務が1運行ずつ入力。入力の型を決めた1人が忙しい月に止まりがち 既存の連絡や日報の時刻から4つの時刻を拾う。運転者の入力は増やさない設計にできる
荷主に出せる形 月1回、手で転記して表にする。荷主別・拠点別に分けるには転記が2回になる 関数や集計表を組めば荷主別に出せる。書式が営業所で割れると集計の前に手直しが要る 週次・荷主別・拠点別の表が自動で揃う。異常に長い回が先頭に並ぶ
止まったときの気づきやすさ 日報が出ていなければ気づく。集計の抜けは月末まで分からない 入力が途切れても誰も気づかない。集計担当が休むと止まる エラー通知の仕込み次第。仕込んでいれば当日、仕込んでいなければ気づかない
費用の目安 外部への支払い0円。運転者の記入時間と事務の転記時間が人件費に隠れる 外部への支払い0円。組む人の学習時間と手直し時間が隠れる 公開価格の一例:規模により個別お見積もり(PoC→本番導入→拡張)、最低契約3ヶ月
向く会社 荷主が1〜2社で拠点も少なく、月に1回の集計で足りる会社 表計算に慣れた人が2人以上いて、書式を1つに揃えられる会社 荷主が3社以上か拠点が複数あり、毎週の数字で荷主と話したい会社

3方式に優劣があるわけではなく、荷主の数と拠点の数、そして集計を続けられる人が社内に何人いるかで向き不向きが決まります。紙で足りている会社が、無理にAIへ移す必要はありません。逆に、荷主が3社以上、拠点が複数あり、月1回の集計が毎月遅れている会社では、記録の取り方を変えない限り、荷主に出せる数字は揃いません。

記録が数字になると、荷主との話が変わる

記録が数字になって変わるのは、社内の集計時間だけではありません。荷主との話し合いの入口が変わります。国土交通省 物流・自動車局「物流改正法の施行について」(令和7年3月10日資料)(2026年9月確認)によると、法改正で目指すのは、令和10年度までに荷待ち・荷役等時間を1人当たり年間125時間削減することと、輸送能力を増加させ全体の車両で積載効率44%を実現することです。この目標に向けて、荷主側にも規制的措置が置かれました。

法改正は、荷主側にも規制的措置を置いた

同資料(令和7年3月10日)では、物流改正法を大きく3つに分類しています。1つ目は荷主・物流事業者に対する規制的措置(物流効率化法改正)、2つ目は荷主・物流事業者の取引に対する規制的措置(貨物自動車運送事業法改正)、3つ目はトラック事業者・軽トラック事業者に対する規制的措置(貨物自動車運送事業法改正)です。3つのうち2つに「荷主」が入っている点が、運送会社にとっての変化です。

荷待ちを減らす責任が、運送会社だけでなく荷主にも法律上置かれた形になります。ただし、個別の義務がいつから、どの規模の事業者に、どう適用されるかは、本記事で確認した資料では裏取りができていないため触れません。最新の適用条件は国土交通省の公式ページで確認してください。ここで押さえたいのは1点だけです。荷主にも減らす立場がある以上、「うちの拠点で何分待たせているか」を数字で示せる運送会社は、話し合いを始める側に回れます。

年間125時間と積載効率44%は、数字を持つ側が使える目標

年間125時間という目標は、1運行あたり2時間2分(122分)の荷待ち・荷役等で割ると、単純計算で約61運行分にあたります。1人の運転者が週5日走るなら、およそ12週分の荷待ち・荷役等に相当する計算です。この数字は業界全体の目標であり、個社の削減量を約束するものではありません。ただ、荷主との話し合いで「年間125時間」という共通の物差しがあることは、運送会社にとって使える材料です。

積載効率44%(出典:国土交通省 物流・自動車局「物流改正法の施行について」令和7年3月10日資料、2026年9月確認)も同じです。積載効率は運送会社側の努力だけでは上がりにくく、荷主の出荷の組み方に左右されます。荷待ちの記録は、どの荷主のどの拠点で車が止まっているかを示すため、積載効率の話と荷待ちの話を同じ表の上で進められます。数字を持っていない会社は、年間125時間と積載効率44%のどちらの目標にも、自社がどう関わっているかを示せません。

業界全体では、荷待ち・荷役等が1年で1時間16分減っている

国土交通省の同じ調査では、2025年度の荷待ち・荷役等時間は2024年度と比べて1時間16分減少しました。運転時間は横ばいのまま、平均拘束時間が1時間33分減っており、減少分の大半が荷待ち・荷役等です。業界全体としては、荷待ちは減る方向に動いています。

問題は、自社がその減った側にいるのか、まだ減っていない側にいるのかが、記録がないと分からないことです。平均が1時間16分減ったという事実は、減らせた荷主・拠点がある一方で、減っていない荷主・拠点も残っていることを意味します。自社の荷主別の数字を持っていれば、どの荷主が業界の動きより遅れているかを示せます。持っていなければ、「業界は減っているらしい」という話で終わります。

For Executives · 毎月限定5社

「AI、何から始めるか」を、
御社の事業に当てはめた戦略提案書

業界事例・ROI試算・3ヶ月導入ロードマップを含む全15章から、御社が今いちばん知りたい5章を選んで編集。代表 吉元が監修して3〜5営業日でPDFお届け。完全無料。

経営者・役員・部門長・AI推進ご担当者の方限定。御社の事業に当てはめた個別作成のため、立場が判断できない方への配信はお断りしております。

ビフォーアフター:荷待ちの1週間がここまで変わる

記録の手間が消えると、運行管理の1週間はどう変わるのか。運送会社の実例は手元にないため、ここでは一般的な1週間の流れとして対比します。数値差は、BoostXが公開している自社実践の数字(運送以外の仕事で、見積書の月20時間から15分、請求書の月12時間分)で示します。荷待ちの削減時間そのものは、自社の記録が揃ってから初めて分かる数字です。

BEFORE

記録が手元にない1週間

月曜、先週5日分の日報が束で上がってきます。時刻の欄が空いている日報が何枚かあり、運転者に聞き直しますが、本人も1週間前の到着時刻は覚えていません。火曜から木曜は通常の配車と点呼に追われ、日報は机の端に積まれたままです。金曜、荷主から「先月の待機はどれくらいでしたか」と聞かれ、答えられないまま「確認します」と返します。

月末、事務担当が1ヶ月分の日報を表計算に転記します。荷主別に分けようとして、荷主名の書き方が運転者ごとに違うことに気づき、手で直します。数日かけて表ができた頃には翌月に入っていて、荷主に出すには古い数字になっています。翌月も同じことが繰り返され、荷待ちの2時間2分は「知っているが示せない時間」のまま残ります。

AFTER

記録が毎週まとまる1週間

月曜の朝、先週5日分の荷待ちが荷主別・拠点別に集計された表が手元にあります。運転者は運行中に「着きました」「積み終わりました」と送るだけで、4つの時刻は既存の連絡から拾われています。時刻が抜けた運行は一覧の先頭に出ており、当日のうちに運転者に確認して埋められます。火曜から木曜は配車と点呼に集中でき、日報の束を机の端に積む必要がありません。

金曜、荷主から待機時間を聞かれたら、先週までの表を見ながらその場で答えられます。月末に転記の仕事はなく、1ヶ月分の表は毎週の積み上げとして既に揃っています。異常に長かった回は週ごとに数行だけ抜き出されているため、荷主との次回の打ち合わせに持っていく材料も、月末を待たずに手元にあります。荷待ちそのものは明日も起きますが、「示せない時間」ではなくなっています。

違いを生んでいるのはツールではなく運用設計

BeforeとAfterの差は、AIの精度ではなく、4つの時刻を誰がいつ入れるか、書式をどこで揃えるか、抜けをいつ埋めるか、荷主に出す表を誰が見るかという運用の設計にあります。数値差の例として、BoostXの業務自動化(AI)では、見積書作成の作業が月20時間から15分になった事例があります。自社の請求書の仕事でも、月12時間分の作業が消えました。どちらも運送ではない仕事の数字ですが、消えたのは「作る・集める・整える」の手間であって、仕事そのものではありません。

月20時間が15分になれば、差は月19時間45分、1年で237時間です。月12時間なら1年で144時間、1日8時間換算で18日分になります。荷待ち記録でも消えるのはこの手間の側で、運転者が待つ2時間2分は残ります。それでも、転記と集計に使っていた時間が消え、荷主に出せる数字が毎週揃うだけで、話し合いの入口は変わります。「うちはまだBefore寄りだ」と感じた方は、次のセクションで、自前で続けたときにどこで止まるかを確かめてください。

自前で記録を続けると、どこで止まるのか

紙や表計算で荷待ちの記録を自前で始めること自体は、明日からでもできます。止まるのは始めた日ではなく、2ヶ月目、3ヶ月目、日数でいえば30日から90日の間です。止まる場所は5つに絞られます。入力する人が続かない、書式が営業所ごとに割れる、集計する人が1人に寄る、止まったことに気づかない、荷主に出す形まで整わない、の5つです。ここでは、解決の手順ではなく、止まる場所そのものを見ておきます。

入力する人が続かない

運転者にとって、荷待ちの時刻を4つ書くことは、待たされた上にさらに増える仕事です。1週目は書けても、繁忙期に入り、運行が重なる週には空欄が増えます。空欄が増えると集計の意味が薄れ、事務側も催促をやめ、3ヶ月目には誰も書かなくなる。この流れは運送に限らず、入力を人に頼る仕組みに共通する止まり方です。

私自身、自社の自動化で「入力する人が続かない」という詰まり方を経験しました。仕組みは動いているのに、入れる人が入れなくなれば、出てくる数字は0件のままです。運送の荷待ち記録では、入力する人が運転者である分、この壁はより高くなります。運転者の入力を増やさずに時刻を拾えるかどうかが、続くか止まるかの分かれ目です。

書式が営業所ごとに割れ、集計が1人に寄る

営業所が2つ以上あると、記録の書式は営業所の数だけ割れます。一方は紙、もう一方は表計算、時刻の書き方も揃わないという状態です。割れた書式を1つに寄せる作業は、表計算に慣れた1人に集まります。その1人が休んだ週、異動した月に、集計は止まります。

集計が1人に寄ると、その人だけが表の作り方を知っている状態になります。関数の組み方、荷主名の表記の直し方、月末の手順が本人の頭の中にしかありません。1年後にその人が離れたとき、残っているのは動かない表計算ファイルだけ、ということが珍しくありません。記録の仕組みは、続ける人が2人以上いて初めて仕組みと呼べます。

止まったことに気づかず、荷主に出す形まで整わない

自社の自動化で私が経験した詰まり方の中で、最も高くついたのは「エラー通知を設定しておらず止まったことに気づかない」でした。止まった翌日ではなく、月末に集計しようとして初めて、記録が抜けていたことに気づきます。荷待ち記録でも同じで、入力が途切れたこと、書式が変わって集計が崩れたことは、通知がなければ誰も知りません。

5つ目の壁は、集計はできても荷主に出す形まで整わないことです。荷主に見せるには、拠点別・週別に並び、平均と最長が分かり、どの回が長かったかが一目で追える表が要ります。社内向けの集計表をそのまま出すと、荷主側で読み解く手間が生まれ、話し合いが始まりません。ここまでの5つの壁を1つずつ自前で越えるのは、運行管理の本来の仕事の合間には収まりにくいのが実情です。既存の日報やチャットをそのまま活かして時刻を拾い、荷主に出す表まで整える形は、BoostXのAIエージェント開発のように、記録・集計・共有を1本の仕組みとして外に出す選択肢もあります。

外に任せるか自社で回すかを分ける3つの比較点

自前で回すか外に任せるかは、金額の高低では決まりません。分けるのは、記録を取る人の負担が毎日の運行に乗るか、荷主に出す形まで面倒を見るか、止まったときに誰が気づくか、の3点です。3点とも自社で持てるなら自前で回せますし、1つでも持てないなら、その部分だけを外に出す線が引けます。

比較点1|記録を取る人の負担が、毎日の運行に乗るか

1つ目は、運転者の手間です。自前で回す場合、運転者が1運行につき4つの時刻を書く、または事務が日報から1運行ずつ転記する、のどちらかになります。1日1運行で月20日走る1台なら、1台あたり月80個の時刻を人が扱う計算です。10台なら月800個、20台なら月1,600個になります。この数を運転者と事務で分け持てるかが、1つ目の比較点です。

外に任せる場合は、既存の連絡や日報から時刻を拾う設計にするため、運転者が新たに書く量は増やさないことを条件にします。提案を受けるときは、「運転者の入力は今より増えるのか、減るのか」を先に聞いてください。増える提案は、2ヶ月目に入力が途切れがちです。減るか変わらない提案だけが、3ヶ月目以降も続きます。

比較点2|荷主に出す形まで、面倒を見るか

2つ目は、集計の出口です。自前で回す場合、社内向けの集計表から荷主向けの表を作る工程が毎月1回、人の手で残ります。荷主が3社あれば3通り、拠点が5つあれば5通りの切り口が要り、荷主ごとに出す頻度も変わります。ここを人がやり続けられるかが、2つ目の比較点です。

外に任せる場合は、荷主別・拠点別・週別の表が自動で出る状態までを納品の範囲に含めるかを確認します。集計までで納品が終わり、荷主向けの整形は自社で、という契約もあります。どこまでが月額の範囲かを、契約の前に行で分けてもらうと、納品後に「出せる形になっていない」という食い違いを避けられます。

比較点3|止まったときに、誰が気づくか

3つ目は、通知と復旧です。入力が途切れた日、書式が変わって集計が崩れた日に、誰に、どの経路で知らせが届き、誰が30分以内に動くかを決めているかどうかです。自前で回す場合、この役を集計担当の1人が兼ねることになり、その人が休んだ日は止まったことも分かりません。社内で2人以上が気づける体制を組めるなら、自前で回せます。

外に任せる場合は、エラー通知の仕込みと、止まった日の一次対応が月額に含まれるかを確認します。3つの比較点を並べると、自社で持てる点と持てない点が見えてきます。表にすると次のようになります。

比較点 自社で回す 外に任せる(BoostXの公開価格の例)
記録を取る人の負担 運転者か事務が1運行4つの時刻を扱う。1台が月20運行なら月80個 既存の連絡・日報から拾う設計。運転者の入力は増やさない
荷主に出す形 月1回、人が荷主別・拠点別に整形する 週次・荷主別・拠点別の表まで納品範囲に含めるかを契約で決める
止まったときの気づき 集計担当1人が兼ねる。休んだ日は分からない エラー通知と一次対応を月額の範囲で決める
費用 外部への支払い0円。運転者・事務・集計担当の時間が隠れる AIエージェント開発:規模により個別お見積もり(PoC→本番導入→拡張)・最低契約3ヶ月/AI顧問:Light 月額110,000円(税込)・Standard 月額220,000円(税込)・最低契約3ヶ月、月1テーマずつ約2〜4週間で実装・定着

3点とも社内で持てる会社は自前で十分です。1点でも持てない会社は、その1点だけを外に出す形が現実的でしょう。それでも「うちの場合はどの点が持てていないのか」は、記事だけでは決めきれない部分が残るはずです。次の項目では、その1点を見つけるところから一緒に進める形をまとめました。

よくある質問

Q荷待ちの記録をAIに任せれば、荷待ち時間そのものは減りますか?

A減りません。国土交通省の調査(令和8年7月10日公表)で1運行当たり2時間2分とされる荷待ち・荷役等時間は、着荷先の段取りが変わらない限り明日も同じだけ起きます(2026年9月14日確認)。AIで減るのは、4つの時刻を集め、書式を揃え、週次・荷主別に集計し、荷主に出せる表にするまでの手間です。荷待ちそのものを減らすのは、その数字を持って荷主と話し合う工程であり、数字がなければその工程は始まりません。順番としては、記録の手間を消す、数字を揃える、荷主と話す、の3段階です。

Q運転者の入力を増やさずに、荷待ちの時刻を集められますか?

A既にある連絡や日報から拾う設計であれば、運転者が新たに書く量は増やさずに済みます。「着きました」「積み終わりました」という短い報告、日報の時刻欄、運行管理者とのチャットなど、今すでに流れている情報から到着・受付・積込開始・積込完了の4つを揃えるのが基本です。逆に、新しいアプリに1運行4回入力する形は、4週間ほどで途切れがちです。提案を比べるときは、運転者の入力が今より増えるのか減るのかを先に確かめてください。増える提案は、3ヶ月後に数字が0件になっていることが珍しくありません。

Q荷待ちの記録は、紙や表計算でも十分ではありませんか?

A荷主が1〜2社で拠点も少なく、月に1回の集計で足りる会社なら、紙や表計算で十分です。止まりやすいのは、営業所が2つ以上あって書式が割れる、荷主が3社以上あって荷主別の表が要る、集計できる人が1人しかいない、という条件が重なったときです。全日本トラック協会の経営分析報告書(令和4年度決算版)では車両10台以下の区分で64%が営業赤字であり(2026年9月14日確認)、集計に人を1人張り付ける余裕がない会社ほど、月1回の集計が遅れ、荷主に出せる数字が揃わない構造になりがちです。紙で回っているうちは変えず、月末の集計が2ヶ月続けて遅れた時点で、取り方を見直すのが目安です。

Q荷待ち記録をAIで整える費用は、どれくらい見込めばよいですか?

A範囲によって変わるため一律には言えませんが、公開されている一例として、BoostXのAIエージェント開発は規模により個別お見積もり(PoC→本番導入→拡張)・最低契約3ヶ月です。社内で担当者を育てながら進める形では、AI顧問がLight 月額110,000円(税込)、Standard 月額220,000円(税込)、いずれも最低契約3ヶ月で、月1テーマずつ約2〜4週間で実装と定着を進めます。自前で回す場合の費用は外部への支払いが0円である代わりに、1台が月20運行なら月80個の時刻を扱う運転者と事務の時間、集計担当の時間が人件費に隠れます。比べるときは、その時間を時給に直して同じ土俵に乗せてから判断してください。

まとめ

  • 国土交通省の調査ではトラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間は10時間13分、うち荷待ち・荷役等時間は2時間2分。これは業界平均であり、自社の数字は自社で記録しない限り分からない
  • 全日本トラック協会の経営分析(令和4年度決算版)では営業損益0.0%、車両10台以下の64%が営業赤字。対価に乗らない荷待ちは、この薄い利益をそのまま削る
  • AIで消えるのは荷待ちそのものではなく、4つの時刻を集め、書式を揃え、週次・荷主別に集計し、荷主に出せる表にするまでの手間。2時間2分の荷待ちはゼロにはならない
  • 法改正は令和10年度までに1人当たり年間125時間の削減と積載効率44%を掲げ、荷主側にも規制的措置を置いた(出典:国土交通省 物流・自動車局「物流改正法の施行について」令和7年3月10日資料、2026年9月14日確認)。数字を持つ運送会社が話し合いを始める側に回れる
  • 自前で止まるのは入力・書式・集計の属人化・通知・出す形の5か所。外に任せるかは、記録の負担・荷主に出す形・止まった日の気づきの3点で1つずつ決める

監修者|生成AIの導入から定着まで伴走する専門家が確認しています

吉元大輝(よしもとひろき)

株式会社BoostX 代表取締役社長

AI顧問・FDE型AI伴走支援・AIエージェント開発など、生成AIの相談から構築・現場定着までを一社で支援。業務可視化から効果測定まで、企業のAI活用を実務レベルで前に進めている。

公開日:2026年9月

この記事をシェア

読んで終わりにしないために

「自社の場合は、どうすれば?」
その答えを、30分で持ち帰る。

記事で分かるのは、一般論まで。現役の生成AI伴走顧問が、貴社の業務に当てはめて“次の一手”だけを一緒に整理します。

この30分で持ち帰れるもの

  1. 01

    自社業務に当てはめたAI活用マップ

  2. 02

    投資対効果(ROI)のシミュレーション

  3. 03

    いまの悩み・疑問への、その場の個別回答