総務や情シスの担当者から相談が始まるとき、最初の一言はだいたい決まっています。「結局、うちはどれを入れればいいんですか」——ChatGPT、Microsoft Copilot、Gemini。名前は3つとも知っていて、比較記事も4〜5本は読んでいる。それでも決まらないのは、機能表を横に並べて比べているからです。社内で使うAIは、機能の優劣ではなく「自社の資料がどこに置いてあるか」で先に絞り込めます。
社内で「AIに任せられる作業」は、だいたい5種類に集約されます。事務や管理部門の担当者1人あたりで積み上げると、月13.8時間の帯に入る規模です(本記事の時間はいずれも一般的な目安で、BoostXの整理による試算です)。この記事では、その月13.8時間が3ツールの使い分けでどこまで動くのかを用途別の早見表で示し、自前で選ぼうとするとどこで止まるのかを整理します。
- 社内でAIに任せられる作業は5種類に集約され、担当者1人あたり月13.8時間。うち月12.6時間、全体の91%は判断ではなく形にする作業に使われている
- 3ツールの違いは性能ではなく「社内データにどこまで届くか」。先月作った資料がSharePointやTeamsにあるならCopilot、ドライブやGmailにあるならGemini、社内データを使わない調べものはChatGPTで絞れる
- 月13.8時間だった6用途は月5.8時間の帯に入り、差は月8.0時間・年96時間。ただし検証と社外前の確認に充てる月1.2時間は1分も削らない
目次
「どれを使うか」で止まっている間に溶けている月13.8時間の正体
ツール選定が長引くこと自体は、慎重で悪いことではありません。ただし選定中も、AIに任せられたはずの作業は毎月そのまま発生し続けます。まずは、その時間がどの作業に溜まっているのかを分解します。
社内で「AIで済む作業」は、だいたい5種類に集約される
数十名規模の会社で、事務・営業事務・管理部門の担当者1人が抱えている作業を並べると、AIに任せられる領域は5種類に収まります。1つ目は社内外に出すメールや通知文、報告書の下書きで、1本15〜35分のものが月に8〜12本、合わせて月3.2時間。2つ目は過去資料や仕様、見積の条件を探す作業で、1回5〜15分の探し物が月に15〜25回、合わせて月2.6時間。3つ目は表計算と集計表づくりで月2.8時間。4つ目は会議の記録と要約で、1回20〜40分のものが月4〜6回、合わせて月2.2時間。5つ目は調べものとたたき台づくりで月1.8時間です。
これに、出力を社外に出す前の検証と確認が月1.2時間。6つ合わせて月13.8時間になります。1か月13.8時間は、1年で165.6時間、8時間労働に換算して20.7日分です。重要なのは、この6つのうち5つが「何を決めるか」ではなく「形にする作業」だという点です。下書き・探し物・集計・要約・たたき台の5つで月12.6時間、全体の91%が判断ではなく作業に使われています。
選定に3か月かけている間、その13.8時間は毎月そのまま出ていく
もう1つの損失は、決まらない期間そのものです。1つ目の比較記事を読んでから、社内で稟議を通し、無料枠で試し、上長の承認を得るまで。この工程を丁寧にやると、3〜6か月は普通にかかります。仮に3か月とすると、その間に発生する上記の作業は41.4時間、6か月なら82.8時間です。担当者1人でこの規模ですから、対象が3人なら3倍になります。
さらに厄介なのは、選定が長引くほど「個人が勝手に無料版を使い始める」状態が進むことです。会社として何も決まっていない期間は、ルールがない期間でもあります。私が支援した会社でも、正式に決める前から個人アカウントでの利用が先に始まっていて、そこから入力範囲のルールづくりに入ったことがあります。選定の遅れは、単に効率化が遅れるだけでなく、管理されていない利用が先に広がるという形でも効いてきます。
「方針は決めた、でも使い道が分からない」——白書が示す実像
この状態は、統計にもはっきり出ています。総務省の令和7年版 情報通信白書「社会における生成AIの利用に関する現況」では、生成AIの活用方針を定めている日本企業の比率が2024年度で49.7%とされ、2023年度の42.7%から7.0ポイント増加したと報告されています。一方で、導入にあたっての懸念事項として最も多く挙げられているのは「適切な利用方法がわからない」で、次いでデータの品質や精度、セキュリティに関するリスク、導入・運用コストが続きます。
方針を定めた企業が約5割にのぼる一方で、懸念事項の最多は依然として「適切な利用方法がわからない」——これが白書が示す2026年時点の実像です。裏を返せば、社内の5種類の作業に月13.8時間かかっているという事実が分かった時点で、対象を選ぶ根拠の多くはそろいます。あとは、その5種類のどれをどのツールに寄せるかを決めるだけです。
ChatGPT・Copilot・Geminiは、何がどう違うのか

3つを機能表で比べると、どれも「文章が書ける」「要約できる」「表がつくれる」と並び、差が見えません。差が出るのは機能ではなく、社内のデータにどこまで手が届くかという1点です。
違いは性能ではなく「社内データにどこまで届くか」
Microsoft公式ドキュメントの「Microsoft 365 Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」では、Copilotが大規模言語モデルと、Microsoft Graph内のメール・チャット・ドキュメントと、WordやPowerPointなどのアプリを組み合わせて動作することが明記されています。同時に、個々のユーザーが少なくとも表示アクセス許可を持っている組織データのみを参照することも明記されています。つまりCopilotの強みは、社内資料が最初から見えている状態にあることです。裏を返せば、SharePointなどの権限設定が雑なままだと、見えるべきでないものまで検索対象に入ります。
Geminiも、Google Workspaceの中で使う形が基本で、ドライブやGmailに資料が置かれていることが前提になります。ChatGPTは逆に、社内のファイル置き場と直接つながっていないぶん、貼り付けた材料の範囲で自由に動かせます。この3つを「どれが賢いか」で選ぼうとすると決まりませんが、「先月作った資料はどこにあるか」で選ぶと5分で決まります。ファイルの大半がSharePointとTeamsにあるならMicrosoft Copilot、ドライブとGmailにあるならGeminiが起点になります。
学習に使われるかどうかは、プランと設定で決まる
入力した内容が学習に使われるのではという不安は、稟議で必ず出ます。ここは各社が公式に明記しているので、そのまま根拠として使えます。Microsoftの同ドキュメントでは、Microsoft Graph経由でアクセスされるプロンプト・応答・データは、Microsoft 365 Copilotで使用されるものを含め、基礎となる大規模言語モデルのトレーニングには使用されないと明記されています。保存されたデータは暗号化され、管理者はMicrosoft Purviewで保持ポリシーを設定できるとも書かれています。
Googleの「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」でも、顧客のコンテンツが許可なくドメイン外で生成AIモデルのトレーニングに使用されることはなく、コンテンツが人間によってレビューされることもないと明記されています。データの保持期間についても、Gemini in Workspaceは90日から無期限の範囲で管理者が設定でき、Geminiアプリは最大36か月と案内されています。稟議で必要なのは「安全です」という言葉ではなく、この2つのような公式ページの該当箇所です。2026年8月時点の情報のため、条件は着手前に各社の公式ページで最新を確認してください。
人が最後まで握る2領域=入力してよい情報の範囲と、出力の検証
任せてはいけない領域は2つに絞れます。1つは、入力してよい情報の範囲を決めることです。取引先名、単価、人事情報、未公開の計画。どこまでを入れてよいかは会社ごとに違うので、これは事業判断であってツールの設定項目ではありません。線引きが決まっていないと、担当者は判断を避けて元の手作業に戻ります。実務では、A4で1枚のルールを先に作ることが機能の説明より優先されます。
もう1つは、出力の検証です。Microsoftの同ドキュメントでも、生成AIによって生成される応答が100%事実であるという保証はなく、他の人に送る前に出力を確認するにはユーザーによる判断が依然として必要であると明記されています。社外に出す文面なら固有名詞と金額と日付の3点、集計なら合計値と期間条件と除外条件の3点。この確認に充てている月1.2時間は、1分も削らないと最初に決めます。削減対象を5用途に限定し、検証は据え置く。この線引きを最初の1回で共有しておくと、3か月後に「AIが書いたものは信用できない」という話にならずに済みます。
社内の5用途 × 3ツールの使い分け早見表
用途ごとに月あたりの時間目安を並べると、どこが動いてどこが動かないかがはっきりします。以下はいずれも一般的な目安で、数十名規模の会社・担当者1人あたりを前提に、6つの用途を3つの観点で比べたものです。
| 社内の用途 | いまの月あたり目安 | 使い分けを決めた後の目安 | 主に向くツールと、その理由になる条件 |
|---|---|---|---|
| メール・通知文・報告書の下書き | 月3.2時間 | 月1.2時間 | ChatGPT/Copilot。過去のやり取りを参照させたいならメールソフト側に寄せる |
| 過去資料・仕様・条件の探し物 | 月2.6時間 | 月1.0時間 | Copilot/Gemini。資料が置いてある側を選ぶ。権限設定が整っていることが前提 |
| 表計算と集計表づくり | 月2.8時間 | 月1.0時間 | Copilot。ExcelなどMicrosoft 365アプリの側にAIが入る形が速い |
| 会議の記録と要約 | 月2.2時間 | 月0.8時間 | Copilot/Gemini。ふだん会議に使っているツールと同じ側に寄せるのが基本 |
| 調べもの・たたき台づくり | 月1.8時間 | 月0.6時間 | ChatGPT。社内データを必要としないぶん、貼り付けた材料で自由に動かせる |
| 出力の検証と社外前の確認 | 月1.2時間 | 月1.2時間(変えない) | 人。固有名詞・金額・日付の3点、集計なら合計・期間・除外の3点を必ず見る |
減るのは作業時間より「誰に聞けばいいか迷う時間」
表を合計すると、月13.8時間だった6用途が月5.8時間になります。差は月8.0時間、1年で96時間、8時間労働で12日分です。ただし現場で効くのは、こうした試算上の時間そのものより、着手のハードルが下がることです。白紙のメール画面を前に7分固まる作業が1〜2分になると、「気が乗らないから午後にしよう」が消えます。
探し物も同じです。「あの見積の条件、誰が知っているか」を考えて席を立ち、聞ける相手が会議中で30分待つ。この待ち時間は作業時間の集計には出てきませんが、実際には1回10分の探し物の裏で、聞ける相手が空くまでの停滞が数十分単位で発生することがあります。月15〜25回の探し物が、1回10分から2〜3分に変わると、この停滞ごと消えます。短縮した月8時間の人件費より、待ち時間が消えることのほうが体感としては大きいことがほとんどです。
月8.0時間の内訳を、削れる用途と削らない用途で分ける
減った月8.0時間の内訳を見ると、最も大きいのは下書きで月2.0時間、次いで集計が月1.8時間、探し物が月1.6時間、会議の要約が月1.4時間、調べものが月1.2時間です。一方、検証と社外前の確認に充てている月1.2時間は、1分も削っていません。
この「削らない用途を決める」という設計が、出力への信頼を保ちます。削減幅を最大化しようとして6用途すべてを短縮すると、取引先名や金額の間違いが社外に出るリスクが上がります。1件でも出れば、そこで全体が止まり、半年前の運用に戻ります。5用途だけ削って検証は据え置く。地味ですが、これが1年続く型です。
1つに寄せるか、3つ併用か——判断の基準は「どこに資料があるか」
全社で1つに絞るか、用途ごとに使い分けるか。ここで迷う会社は多いのですが、判断の基準は1つです。すでに使っているグループウェアがMicrosoft 365ならCopilotに寄せ、Google WorkspaceならGeminiに寄せる。これで6用途のうち4用途は片付きます。残る「調べもの・たたき台づくり」と、社外に出す文章の作り込みだけをChatGPTに任せる、という2本立てが現実的です。
3つすべてを同時に契約する必要は、少なくとも最初の3か月はありません。2026年8月時点の一般的な価格帯の目安として1人あたり月額3,000円前後で考えると、3つ契約すれば月9,000円、10人で月9万円、年108万円になります(実際の料金はプランと契約形態で変わるため、各社の公式ページで確認してください)。使う人が5〜6用途を回せるようになるまでは、まず1つ、多くて2つです。逆に、毎月同じ条件で同じ形の出力を出すだけの作業は、そもそもAIツールではなく業務自動化ツールで丸ごと組んだほうが早い場合もあります。ここの見極めは、対象を選ぶ段階で一度考えておく価値があります。
併用するなら、先に決めるのは「入力してよい情報の範囲」1枚
2つ以上を併用すると決めた瞬間に必要になるのが、入力範囲のルールです。ツールごとに契約プランもデータの扱いも違うため、「Copilotには社内資料を入れてよいが、個人アカウントのChatGPTには取引先名を入れない」といった線引きを1枚にまとめます。書く項目は5つで足ります。入れてよい情報、入れてはいけない情報、使ってよいアカウント、出力を社外に出す前の確認3点、迷ったときの相談先です。
この1枚があるかないかで、3か月後の姿がはっきり分かれます。ルールがなければ、慎重な人は使わず、気にしない人は何でも入れる。どちらも会社にとっては困った状態です。分量は1枚で足ります。全員が同じ1枚を見ていることのほうが、細かさより効きます。
自前で選ぼうとすると止まる3つの壁
機能の比較は、公式ページを30分読めば誰でもできます。それでも社内で決まらない会社が出るのは、3つの壁が段取りの側にあるからです。
壁1:比較記事を読むほど決まらなくなる
最初の壁は、情報を集めるほど決められなくなることです。比較記事は「どちらにも良さがある」で終わるものが大半で、5本読むと5通りの結論が手元に残ります。加えて3ツールとも数か月おきに機能が更新されるため、半年前の比較記事はすでに前提が変わっています。導入した時点のツールをそのまま使い続けても、機能の更新に追いつけずすぐ陳腐化します。
抜け出す方法は、比較の軸を機能から自社の条件に変えることです。先月作った資料がどこに置いてあるか、会議はどのツールでやっているか、社外に出す文章は月に何本か。この3問に答えると、候補は1つか2つに絞れます。ナレッジ管理で止まる会社のほとんどは、ツール選びに時間をかけすぎています。ルールがなければ、どのツールを選んでも半年で使われなくなります。
壁2:無料版と法人向けプランで、データの扱いが混ざる
2つ目は、検証環境と本番環境の混線です。試すときは個人の無料アカウント、本番は法人プラン。ここまでは正しいのですが、無料版で試した手順をそのまま全社に配ると、データの扱いの前提が変わってしまいます。前章で挙げたとおり、Microsoftは組織データをLLMのトレーニングに使用しないことを、Googleは許可なくドメイン外で学習に使用せず人間によるレビューも行わないことを、それぞれ公式に明記しています。ただしこれは法人向けの契約が前提であって、個人が無料で使う場合の扱いとは別の話です。
対策は単純で、検証の段階から「本番で使うプランと同じ条件」で試すことです。試用期間が1〜2週間しかなくても、対象を2用途に絞れば十分に判断できます。ここを曖昧にしたまま3か月試すと、いざ全社展開の稟議に出したときに、法務や情シスから前提の確認が入って振り出しに戻ります。
壁3:詳しい1人の得意技で終わる
3つ目が最も多い止まり方です。導入した翌週にはほとんどログインされなくなる、という定着の失敗は珍しくありません。社内にAIに詳しい人がいて推進できる状態であれば問題ありませんが、放置すれば使われなくなります。最初の1か月は物珍しさで触られ、月を追うごとに使う人が減り、気づけば詳しい1人だけが使っている——この形に落ち着いてしまうことがあります。
属人化を防ぐ最低ラインは、対象となる5用途について「どのツールを使うか」「何を入力してよいか」「人が確認する3点」を1ページにまとめることです。加えて、担当を最初から2人以上にしておきます。1人だと、その人が繁忙期に入った瞬間に全部止まります。私が支援した会社でも、後から効いていたのは高機能な仕組みではなく、この1枚を全員が見ていて、聞ける相手が2人いる状態のほうでした。
3つの壁は機能ではなく段取りで潰す
3つの壁に共通するのは、原因がツール側ではなく運用側にあることです。比較の軸、検証の条件、残す手順。この3点はいずれも社内の決めごとであり、機能が増えても解決しません。逆に言えば、決めごとさえ先に作れば、来年ツールが変わっても資産は残ります。
BoostXが生成AI伴走顧問として中小企業のAI導入を支援するなかで実感しているのは、ツール選定より先に「どこまでをAIに任せ、どこからを人が決めるか」の線を引いた会社ほど、3か月後も使い続けているということです。最初の1か月で対象の用途を2〜3種類に絞り、2か月目で入力範囲と手順を1枚にまとめ、3か月目で担当を2人以上に広げる。この進め方を基本にしています。ツール選定だけでなく、どの作業から手を付けるかの棚卸しから実装・定着まで一度に整理したい場合は、生成AIコンサルティングのように、戦略から定着までを1本で設計する進め方が合います。
ビフォーアフター:社内の問い合わせ対応と資料づくりがここまで変わる
総務担当者の1週間を例に、使い分けを決める前と後の流れを並べます。同じ担当者、同じ仕事量、違うのは段取りだけです。
どれを使うか決まらないまま過ぎる1週間
月曜。社内から「昨年の健康診断の案内文、どこにありますか」と聞かれ、共有フォルダを開いて探すこと10分。見つからず、前任者にチャットで聞いて返信を待つ間に別件が入り、結局その日は解決しません。火曜に返事が来て、去年の文面を手直しして25分。同じような探し物が週に4〜6回あります。
水曜は部内会議の議事録。40分の会議を聞き直しながら要点をまとめるのに30分、共有用に整えるのに8分。木曜は全社向けの通知文を2本、白紙から書き起こして各20分。金曜は月次の集計表で、前月のブックを開いて数字を差し替えるのに40分。個人アカウントのChatGPTを試しに使ってみた日もありましたが、社内資料を貼るのは気が引けて、結局使わなくなりました。ここに挙げた以外の探し物も含めると、週の合計は約3.2時間、月に直すと13.8時間。しかも「どれを使うか」は、いまだに決まっていません。
資料の置き場所からツールを決めた1週間
月曜。同じ質問が来ます。担当者は、社内資料が置いてある側のAIに「昨年の健康診断の案内文を探して」と聞くと、その場で該当ファイルの候補と要約が返ってきます。文面の手直しは8分。前任者を待つ必要はなく、その日のうちに終わります。探し物は週4〜6回のまま、1回あたり10分が2〜3分になりました。
水曜の議事録は、会議ツールに同席させた要約の下書きが会議終了と同時に出ているので、担当者は要点の並べ替えと固有名詞の確認に12分。木曜の通知文2本は、条件を3行で渡して下書きを受け取り、自分の言葉に直して各8分。金曜の集計は表計算側のAIに任せて18分、合計値と期間条件と除外条件の3点だけ原本と突き合わせて9分。ここに挙げた以外の探し物を含めても、週の合計は約1.3時間、月に直すと5.8時間です。Beforeの月13.8時間に対して、差は月8.0時間。しかも検証の月1.2時間は、そのまま残しています。
違いを生んでいるのはツールではなく運用設計
BeforeとAfterの差を作ったのは、新しい機能ではありません。資料がどこにあるかでツールを決めたこと、入力してよい情報の範囲を1枚にまとめたこと、確認する3点を固定したこと、担当を2人にしたこと。この4つの決めごとだけです。しかもAfterは、検証の月1.2時間を残したうえでの数字です。
逆に、同じ3ツールを契約しても決めごとがゼロなら、Beforeの1週間はそのまま残ります。3か月後に差として現れるのは、どのツールを選んだかではなく、5用途について型を決めたかどうかです。ここまで読んで「うちはまだBefore寄りだ」と感じた方は、まず先月の探し物と下書きの回数を数えてみると、次の一手が驚くほど具体的になります。
よくある質問
Q結局、最初の1つはどれを選べばいいですか。
A先月作った資料の大半がどこに置いてあるかで決めるのが最短です。SharePointやTeamsが中心ならMicrosoft Copilot、GoogleドライブやGmailが中心ならGemini。この2つは社内資料が最初から見える側にあるため、合計で月4.8時間を占める探し物と会議の要約の2用途に、まず効きます。社外に出す文章の作り込みや、社内データを使わない調べものだけをChatGPTに足す、という2本立てが現実的です。機能表から入ると決まりませんが、置き場所から入ると5分で絞れます。
Q入力した内容が学習に使われないか心配です。稟議で何を示せばよいですか。
A各社の公式ページの該当箇所をそのまま添付するのが確実です。Microsoft公式では、Microsoft Graph経由でアクセスされるプロンプト・応答・データが基礎となる大規模言語モデルのトレーニングには使用されないと明記されています。Google公式でも、顧客のコンテンツが許可なくドメイン外で生成AIモデルのトレーニングに使用されることはなく、人間によるレビューも行われないと明記されています。いずれも法人向けの契約が前提のため、個人の無料アカウントと同じ扱いではない点だけ、稟議書に1行添えておくと後で揉めません。
Q3つとも契約したほうが効果は大きいですか。
A最初の3か月は1つ、多くて2つで十分です。1人あたり月額3,000円前後のプランを3つ契約すると月9,000円、10人で月9万円、年108万円になります。それだけの費用をかけても、使う用途が2〜3種類に絞れていなければ結果は変わりません。まず1つで5用途のうち3つを回し、手順が1枚にまとまってから2つ目を足す。この順番のほうが、同じ予算でも定着します。
Q効果が出るまでにどれくらいかかりますか。
A下書きと探し物と会議の要約は、対象を決めた週から動きます。合計で月8.0時間ぶんのうち、月5.0時間はこの3用途です。一方、集計や毎回条件が変わる依頼は、渡すデータの形が整ってから安定するため2か月目以降になります。3か月を1区切りに考え、1か月目に対象を絞り、2か月目に1枚のルールをまとめ、3か月目に担当を2人以上に広げるのが現実的な進め方です。
まとめ
- 社内でAIに任せられる作業は5種類に集約され、担当者1人あたり月13.8時間。うち月12.6時間、全体の91%は判断ではなく形にする作業に使われている
- 3ツールの違いは性能ではなく「社内データにどこまで届くか」。先月作った資料がSharePointやTeamsにあるならCopilot、ドライブやGmailにあるならGemini、社内データを使わない調べものはChatGPTで絞れる
- 月13.8時間だった6用途は月5.8時間の帯に入り、差は月8.0時間・年96時間。ただし検証と社外前の確認に充てる月1.2時間は1分も削らない
- 自前で止まる原因は機能ではなく段取り。比較の軸・検証の条件・残す手順1枚の3つが揃っていないと、試用を始めて数週間で元の手作業に戻る
- 総務担当者の1週間が3.2時間から1.3時間に変わった要因は、置き場所でツールを決める・入力範囲を1枚にまとめる・確認3点を固定する・担当を2人にする、という4つの決めごとだけだった
公開日:2026年8月
読んで終わりにしないために
「自社の場合は、どうすれば?」
その答えを、30分で持ち帰る。
記事で分かるのは、一般論まで。現役の生成AI伴走顧問が、貴社の業務に当てはめて“次の一手”だけを一緒に整理します。
この30分で持ち帰れるもの
- 01
自社業務に当てはめたAI活用マップ
- 02
投資対効果(ROI)のシミュレーション
- 03
いまの悩み・疑問への、その場の個別回答