APIが無いと言われたシステムは、つなぎたい業務がそのシステムから「読む」のか「書き込む」のかで手段を分けます。読むだけなら出力ファイル(CSVなど)かDBの読み取り専用接続、書き込むなら取込機能を先に探し、どちらも無い操作だけを画面操作の自動化に任せます。画面操作は画面の目印が合わなくなると止まるので、件数と止まってよいかで選び、毎日動いて止まると困る業務ならベンダーへの追加開発や入れ替えも並べて比べます。
- 読むだけの連携は、出力ファイルとDBの読み取り専用接続を先に当たります。DBを読むなら、読み取り専用と書き込み禁止の権限を付けたアカウントをベンダーに発行してもらいます。
- 書き込む連携はDBに直接書かず、取込機能を探します。取込で入らない操作だけを画面操作の自動化に回します。
- 毎日動き、止まると締めや出荷に響く業務を画面操作に頼るなら、追加開発と、次の入れ替えでAPIや取込を条件にする案を並べて部長に出します。
目次
APIが無いと言われたら、まず読むのか書き込むのかで分ける
APIが無いシステムは、読むだけなら出力ファイルかDBの読み取り専用接続、書き込むなら取込機能、どちらも無いときだけ画面操作で自動化します。販売管理の売上を会計のツールへ渡すのは読む側、メールで届いた受注を販売管理に登録するのは書く側です。同じシステムでも、この2つで使える手段が違います。
APIが無くても、自動化そのものはできます。Microsoft の学習教材は、人が画面で行う手順を繰り返す画面操作の自動化(RPA)について、「API を持たないアプリケーションの自動化ができます」と書いています。一方で同じ教材は、コネクタやAPIを先に置き、「API を使用できない場合は、Power Automate デスクトップ フローを使用できます」という順に並べています。画面操作は使える手段の一つで、最初に選ぶものではない、という並びです。
「APIはありません」という回答は、外から呼び出せるAPIが無いという意味で、書き出しや取込の機能、DBを読む方法まで無いとは限りません。どれが使えるかは製品ごとに違うため、第6節の質問でベンダーに一つずつ確かめます。
つなぎたい業務を1行ずつ書き出す
部長に決め方を説明する前に、現場から頼まれた連携を業務ごとに1行ずつ書き、各行に4つの欄を足します。読むのか書くのか、1日に何件・何回動くのか、止まったら誰が何に困るのか、その方法をベンダーが認めているか、です。この4つの欄が、第5節の判断表の列になります。二重入力をなくす取り組み全体の進め方は、二重入力をAI自動化で減らす記事でまとめています。
読むだけなら、出力ファイルとDBの読み取り専用接続のどちらにするか
読むだけの連携は、どれだけ新しいデータが要るかで、出力ファイルとDBの読み取り専用接続を選び分けます。前日分や締めの時点のデータで足りるなら出力ファイル、必要なときに最新のデータを何度も読みたいならDBの読み取り専用接続が候補です。
出力ファイルは、システムに書き出し機能があれば、今ある機能の範囲で始められる手段です。書き出しを人がボタンで行うのか、決まった時刻に書き出す設定があるのかで、自動にできる範囲が変わります。書き出しの操作が画面でしかできない場合は、その操作だけを画面操作の自動化に任せ、書き出したファイルを読む部分は別の仕組みで受ける組み合わせもあります。
DBの読み取り専用接続は、書き出しの操作を挟まずに読めます。そのかわり、テーブルの構成を読み解く手間と、ベンダーの許可が要ります。
DBを直接読んでも大丈夫か
DBを直接読んでも大丈夫か。読み取り専用と書き込み禁止の権限をベンダー側で付けたアカウントを使い、保守契約で認められていると確かめてからなら、選択肢に入ります。SQL Server を例にとると、読み取り用の権限 db_datareader を持つアカウントは「すべてのユーザー テーブルとビューからすべてのデータを読み取ることができます」。書き込みを禁じる権限 db_denydatawriter を付けると「ユーザー テーブルのデータを追加、変更、または削除することはできません」。2つを組み合わせると、読めるが書けないアカウントになります。
気をつけたいのは、db_datareader がすべてのテーブルとビューを読める点です。給与や個人情報が同じDBにあるなら、読ませるテーブルやビューを絞れるかもベンダーに聞きます。SQL Server 以外のDBでは権限の名前も仕組みも違うので、同じことができるかは製品ごとに確かめます。DBを読むことが保守契約や利用規約で認められるかは、外からは判断できません。契約書を読み、ベンダーに書面で確かめてください。
読み出したデータをAIに読ませたい場合の置き場や、読み出し方の比べ方は、基幹を改修せずにAIを入れるときのデータの置き場の記事で詳しく扱っています。
書き込むなら、取込機能が無いときだけ画面操作にする
書き込む連携では、DBへ直接書き込む方法は選びません。業務システムは画面から登録するときに、入力の確認や、在庫・残高など関連する値の更新を一緒に行っていることがあり、DBに直接書くとその処理を飛ばすおそれがあります。画面の裏で何を処理しているかは外から見えないので、ベンダーが認めていない限り、書き込みはシステムが用意した入口を通します。
最初に探す入口は、CSVなどの取込機能です。受注や仕入の一括取込がある製品なら、メールやフォームで届いたデータを取込の形式にそろえてファイルを置くところまでを自動にし、登録はシステムの機能に任せられます。取込の形式(列の並び・文字コード・必須の欄)と、取込では入らない項目を先に確かめます。
取込で入らない操作だけ、画面操作に回す
取込機能があっても、登録できる項目が画面より少ないことがあります。Microsoft の教材は、画面操作の自動化を、APIが「UI で使用可能なすべての操作を公開しない状況にも使用できます」としています。ファイルの取込でも同じ考え方が使えます。取込で入る部分は取込に任せ、入らない操作だけを画面操作にすると、止まりうる場所を少なくできます。
取込機能も無いとき
取込機能が無ければ、書き込みの手段は、画面操作の自動化、ベンダーへの追加開発、入れ替えの3つです。件数が少なく、止まっても人が手で入れれば済む業務なら画面操作で始められます。毎日動く、件数が多い、止まると出荷や締めに響く、のどれかに当たる業務は、次の節の止まり方を確かめたうえで、追加開発や入れ替えと比べます。
画面操作の自動化は何で止まり、止まってよい業務はどれか
画面操作の自動化は画面の要素を目印(セレクター)で探すので、目印が合わなくなると失敗します。Power Automate では目印を複数用意でき、失敗するたびに「定義された順序で次のセレクターを使用します」。予備の目印で持ちこたえることはあっても、どれも合わなければ処理は止まります。
目印が合わなくなるのは、システムの更新で画面の項目や並びが変わったときなどです。ベンダーに画面を変える更新の予定があるか、事前に知らせてもらえるかが、止まりやすさを左右します。止まり方の内訳と、止まりやすい作業をAIに替えるかどうかの考え方は、RPAとAIの使い分けを、RPAが何で止まるかから整理した記事にまとめています。
古い業務アプリは、目印が取れるかを試作で確かめる
古い業務アプリは、画面の部品を標準の方式で外に出していないことがあります。Microsoft の資料は「UIA を介して UI コンポーネントを公開しないレガシ アプリケーション」を挙げ、その場合は別の方式(MSAA)で目印を取るとしています。どこまで取れるかは画面ごとに違うので、業務を任せる前に、実際に使う画面で目印が取れるかを短い試作で確かめます。
止まってよい業務か、止まったら誰が直すか
画面操作に任せてよいのは、止まったときに人が手で代わりに処理でき、その遅れで困る人がいない業務です。選ぶ前に、3つの役割に名前を入れます。止まったことに気づく人(通知の宛先)、気づいたあと手で処理する人、目印を直す人です。3つの名前が埋まらない業務は、画面操作で始める前に、第6節の質問をベンダーに送ります。
5つの手段を条件で並べた判断表
画面操作・出力ファイルと取込・DBの読み取り・追加開発・入れ替えは、読む/書く・件数と頻度・止まってよいか・ベンダーの許可の4条件で選び分けます。第1節で書き出した業務の1行ごとに、上の行から順に当て、条件が合わない手段は飛ばします。出力ファイルと取込は、ファイルで受け渡す同じ手段なので1つに数え、表では読む側の書き出しと書く側の取込の2行に分けています。
| 手段 | 読む・書く | 件数と頻度 | 止まってよいか | ベンダーの許可 |
|---|---|---|---|---|
| 出力ファイルの書き出し | 読む | 前日分や締めの時点のデータで足りる | 書き出しが遅れても次の回で取り戻せる業務 | 今ある機能を使う。決まった時刻に書き出す設定があるかを確かめる |
| DBの読み取り専用接続 | 読む | 最新のデータが要る・読む回数が多い | 読み取りだけなので、元のデータは書き換えない | 読み取り専用と書き込み禁止の権限を付けたアカウントの発行と、保守契約での可否が要る |
| 取込機能(CSVなど) | 書く | まとめて登録できる件数 | 取込の結果を誰が確かめるかを決める | 今ある機能を使う。形式と、取込で入らない項目を確かめる |
| 画面操作の自動化 | 読む・書く(ほかの手段が無い操作だけ) | 件数が少ない・止まっても手で補える | 止まってよい業務に限る。止まったときの3つの役割に名前が入っている | 画面を操作するだけでも、利用規約と保守の扱いを確かめる |
| ベンダーへの追加開発 | 読む・書く | 毎日動く・件数が多い | 止まると困る業務 | ベンダーが受けるか、範囲・期間・保守の扱い |
| 入れ替え | 読む・書く | つなぎたい業務が多く、追加開発でも足りない | 止まると困る業務が複数ある | 次の更新時期に、APIや取込の有無を要件に入れる |

1つのシステムに1つの手段とは限りません。売上を会計へ渡す行は出力ファイル、受注を登録する行は取込、取込で入らない項目だけ画面操作、というように行ごとに決めます。部長には、行ごとに選んだ手段と、画面操作にした行の3つの役割の名前を並べて見せると、決め方がそのまま伝わります。
追加開発や入れ替えは、いつ比べるか
画面操作に回す行のうち、毎日動き、止まると締めや出荷に響くものが1つでもあるときです。その場合は、画面操作で始めるとしても、追加開発の回答と今の契約の更新時期を並べておきます。追加開発や入れ替えの費用と期間は製品と範囲で変わるため、一般的な相場ではなく、ベンダーから受け取った回答どうしで比べます。
ベンダーに何を確かめれば、追加開発や入れ替えと比べられるか
ベンダーには、判断表の列を埋める質問を手段ごとに分けて送ります。「APIはありますか」とだけ聞くと「ありません」で話が終わるので、書き出し・取込・DB・画面・追加開発・更新時期を別々に聞きます。
| ベンダーに聞くこと | 埋まる判断表の行・列 |
|---|---|
| 1. CSVなどの書き出し機能はあるか。決まった時刻に書き出す設定はできるか | 出力ファイルの書き出し |
| 2. 取込機能はあるか。取り込める項目と形式は何か。取込では入らない項目は何か | 取込機能 |
| 3. DBを読むための読み取り専用のアカウントを発行できるか。書き込みを禁じる権限も付けられるか。読めるテーブルやビューを絞れるか | DBの読み取り専用接続 |
| 4. DBを読むこと、画面操作の自動化を使うことは、保守契約や利用規約で認められるか | ベンダーの許可(全行) |
| 5. 画面の変更を伴う更新の予定はあるか。変更は事前に知らせてもらえるか | 画面操作の自動化の「止まってよいか」 |
| 6. 必要な連携を追加開発で受けられるか。範囲・期間・保守の扱いはどうなるか | ベンダーへの追加開発 |
| 7. 今の契約の更新時期はいつか。次の版でAPIや取込を足す予定はあるか | 入れ替え |
回答は、口頭ではなくメールなど記録に残る形でもらいます。特に4の許可は、後で担当者が替わっても確かめられるようにしておきます。7で次の版にAPIの予定があると分かれば、今は画面操作や取込でしのぎ、版が上がった時点で切り替える、という選び方もできます。
回答がそろったら、第5節の判断表に当て直して、行ごとに手段を1つに決めます。答えが「できない」でも、それで飛ばせる行が決まるので、判断は前に進みます。
関連: スプレッドシート集計のムダ月8時間/Claude Code構築支援(サービス)
この記事のまとめ
- 連携を頼んできた部署に、つなぎたい業務と1日の件数を聞き取る日を決める。
- 第6節の7つの質問をそのままベンダーへメールで送り、回答の期限を書き添える。
- 保守契約書のうち、DBへの接続や外部ツールの利用に触れた条項を、契約の担当者と読み合わせる。
- 画面操作の候補になった業務は、実際の画面で目印が取れるかを試す日を先に押さえる。
公開日:2026年11月
読んで終わりにしないために
「自社の場合は、どうすれば?」
その答えを、最大45分で持ち帰る。
記事で分かるのは、一般論まで。AI導入を専門に見ている担当が、貴社の業務に当てはめて“次の一手”だけを一緒に整理します。
この相談で持ち帰れるもの
- 01
自社業務に当てはめたAI活用マップ
- 02
投資対効果(ROI)のシミュレーション
- 03
いまの悩み・疑問への、その場の個別回答


