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ChatGPTが先に入る総務68%|中小企業が見落とすムダ比較表

公開 2026.09.13 ・ 最終更新 2026.09.22 ・ 読了目安 約15分

月曜の朝、総務の机には先週分の勤怠の確認依頼、備品の発注書、取引先へ送る案内文の下書き、社内から届く「この書類はどこにありますか」という問い合わせが同時に積み上がります。営業からは提案書のたたき台を頼まれ、社長からは来月の会議資料の骨子を求められ、製造の現場からは在庫の集計表を今日中にと言われる。ChatGPTを契約しようという話は年に何度も出るのに、どの部門から入れるかが決まらないまま、月が変わっていきます。「ChatGPTを入れるなら、うちはどこから手をつけるのが正しいのか。総務なのか、営業なのか、それとも社長の手元なのか」——少人数のバックオフィス(総務・経理などの管理部門)を抱える中小企業で、この問いは定番になっています。答えが出ないのは、判断の材料が社内に無いからです。ほかの中小企業がどの部門から入れて、何が先に効いているのかという数字を持たないまま、部門ごとの声の大きさで順番を決めようとすると、決まらないか、決めても止まります。

先に結論をお伝えします。中小企業でAIが先に入っているのは総務・管理部門で、AIを導入している中小企業の業務分野別の導入率は68.3%です。導入済みの企業の82.6%が生成AI、つまりChatGPT型を使っており、感じている効果は「業務効率化/作業時間の短縮」83.2%に集中しています。一方で、これから入れる側の懸念として最も多いのは「効果的な活用方法がわからない」です。この記事では、中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月公表、2026年9月確認)と総務省「令和7年版 情報通信白書」(2026年9月確認)の数字で、総務・管理68.3%、営業・販売・サービス60.3%、経営・企画58.5%、製造・生産34.9%という4つの部門の導入率の差を比較表にし、自社がどの部門から入れると先にムダが減るのか、その順番の決め方を整理します。

30-SECOND SUMMARY忙しい方へ|この記事の結論
  1. AIを「全社的に」または「一部の業務で」導入している中小企業は20.4%(n=1,647)、検討中の18.6%を足して39.0%が前向き。導入済み企業(n=322)のうち82.6%が生成AIを使い、2位の音声認識・音声対話AI29.8%とは52.8ポイントの差がある(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。
  2. AIを導入している中小企業の業務分野別の導入率は、総務・管理部門68.3%、営業・販売・サービス部門60.3%、経営・企画部門58.5%、製造・生産部門34.9%。総務と製造では33.4ポイント開いており、先に入るのは机に向かう仕事の多い部門。導入目的は「業務効率化/作業時間の短縮」87.0%、効果も同じ項目が83.2%で最多(出典:同調査、2026年9月確認)。
  3. 生成AIの活用方針を定めている日本企業は2024年度調査で49.7%(2023年度42.7%から7.0ポイント増)だが、中小企業では「方針を明確に定めていない」が約半数。導入の懸念は「効果的な活用方法がわからない」が最多で、足りない情報の1位は「成功事例や活用事例などの情報」83.3%。順番を決める材料が社内にも社外にも足りていないのが、止まる会社の共通の構造(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月確認/中小機構、同上)。

ChatGPTを入れた中小企業は、いまどこまで進んでいるのか

どの部門から入れるかを決める前に、ほかの中小企業がいまどこまで進んでいるのかを確かめておきます。ここで使う数字は2つの公的な資料から取っています。1つは独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」で、令和7年11月17日から12月12日にかけて、全国の中小企業10,000社を対象にWebアンケートで行われたものです(業務委託先は東京商工リサーチ)。もう1つは総務省の「令和7年版 情報通信白書」で、日本・米国・ドイツ・中国の4か国の企業アンケートをもとに、生成AIの使われ方を比べています。この2つを重ねると、会社としての導入と、社員個人の利用の両方から現在地が見えてきます。

AIを入れている中小企業は20.4%、検討中を足して39.0%

中小機構の調査で、AIを「全社的に導入している」または「一部の業務で導入している」と答えた中小企業は、合わせて20.4%でした(n=1,647)。導入を検討している企業は18.6%で、導入済みと検討中を足した39.0%が前向きな層です。裏返すと、導入も検討もしていない企業が61.0%を占めています(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。導入済みが20.4%、前向きが39.0%、動いていない層が61.0%。これがChatGPTを含むAIをめぐる中小企業の、2026年3月公表時点の分布です。

この20.4%という数字を「まだ少ない」と読むか「もう20.4%が入れている」と読むかで、社内の議論の温度は変わります。実務では後者の読み方が要点です。同じ業界・同じ規模の会社のうち20.4%は、すでにどこかの部門でAIを動かしている。検討中の18.6%も入れると、取引先や競合の39.0%が動き始めている計算になります。自社がどの部門から入れるかを決めないまま1年を過ごすと、その間に先に入れた会社との差が積み上がっていく。順番の議論を「いつか」から「今期」に引き寄せるうえで、この39.0%は共有しておきたい数字です。

導入済み企業の82.6%が生成AI、つまりChatGPT型が主役

導入している会社が何を入れているのかも見ておきます。導入済みの企業(n=322)が使っているAIサービスは、生成AIが82.6%で最多です。2位の音声認識・音声対話AIは29.8%で、1位との差は52.8ポイント。以下、画像認識AIが11.2%、需要予測AIが8.1%、異常検知AIが4.3%、その他が7.5%と続きます(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。資料に添えられたサービス例では、生成AIは文章・資料作成やアイデア出し、音声認識は議事録作成や自動応答、画像認識は外観検査や不良品検出、需要予測は販売・在庫の最適化、異常検知は設備保全や予防保守とされています。

つまり、中小企業でAIと呼ばれているものの82.6%は、ChatGPTに代表される文章と資料を扱う生成AIです。画像認識や需要予測のように、機械や在庫の現場に置く種類のAIは、11.2%、8.1%にとどまります。この構図は、どの部門から入れるかという問いに直結します。生成AIが得意なのは文章と資料と会話で、それらが一日の仕事の中心にあるのは、製造の現場よりも総務・管理や営業の机です。82.6%という数字は、後で見る部門別の導入率の順番を、道具の側から裏づけています。

何らかの業務で生成AIを使う人は日本55.2%、メール・議事録・資料作成の補助は47.3%

会社としての導入率とは別に、働く人の側の利用率も確かめます。総務省「令和7年版 情報通信白書」の「企業におけるAI利用の現状」では、何らかの業務で生成AIを利用している(業務で使用中)人は日本で55.2%、「メールや議事録、資料作成等の補助」に使っている人は47.3%とされています。いずれも他の3か国と比べると低い割合にとどまります(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月確認)。白書には注記があり、個別の業務ごとの利用率は推計の方法を変えたため2023年度の調査とは単純に比べられないこと、AIの活用方針を知っている人の回答をもとに推計していることが示されています。

会社の導入率20.4%と、人の利用率55.2%の間には、母集団も聞き方も違うので単純な引き算はできません。それでも、2つを並べると1つの姿が浮かびます。会社として入れたと言える中小企業は20.4%なのに、何らかの業務で生成AIに触れている人は55.2%いる。そしてその使い道の中心は、メール・議事録・資料作成の補助、つまり総務・管理と営業の机で毎日発生する仕事です。55.2%と47.3%の差は7.9ポイントで、生成AIを使う人の大半がこの補助の用途から入っていることが分かります。会社が順番を決める前に、社員は総務的な仕事から使い始めている。この事実が、次の章で見る部門別の導入率の並びと重なります。

先に入っているのは総務・管理68.3%|4部門で効き方が違う

AIを導入している中小企業の業務分野別の導入率を4部門で並べた図(総務・管理68.3%、営業・販売・サービス60.3%、経営・企画58.5%、製造・生産34.9%)と、導入目的・効果で最多の業務効率化/作業時間の短縮87.0%・83.2%を示した図
中小企業の4部門における業務分野別のAI導入率と、先に出やすい効果の一般的な整理(特定企業の事例ではありません)

この章が、この記事の中心です。AIを導入している中小企業の中で、どの業務分野に入っているのかを部門別に見ると、順番がはっきりと出ます。ここで扱う数字は、あくまでも「AIを導入している中小企業のうち、その部門で導入している割合」という業務分野別の導入率であって、その部門の仕事のうち何割がAIに置き換わったかという数字ではありません。総務・管理が68.3%だからといって、総務の仕事の68.3%が減るという意味ではないことを、先に確かめたうえで読み進めてください。

業務分野別の導入率:総務・管理68.3%から製造・生産34.9%まで33.4ポイントの開き

中小機構の調査で、AIの導入が進んでいる業務分野を部門別に見ると、総務・管理部門(バックオフィス)が68.3%で最も高く、営業・販売・サービス部門(顧客対応・フロント)が60.3%、経営・企画部門(経営の意思決定)が58.5%と続き、製造・生産部門(開発・調達・在庫管理等)は34.9%でした(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。1位の総務・管理と4位の製造・生産の差は33.4ポイント。上位3つの部門は58.5%から68.3%の範囲に収まっているのに対し、製造・生産だけが3割台に落ちています。

この並びは、前の章で見た「導入済みの82.6%が生成AI」という事実とぴったり重なります。文章・資料・会話を扱う生成AIは、勤怠や備品や社内文書を扱う総務・管理で最も使いやすく、提案書や顧客への返信を扱う営業・販売・サービスでもすぐに触れる。経営・企画も会議資料や中期の計画づくりで文章を扱います。製造・生産は図面や機械や在庫が相手で、画像認識11.2%や需要予測8.1%や異常検知4.3%といった別の種類のAIが必要になる場面が増えるため、生成AIだけでは入りにくい。34.9%という数字は製造にAIが向かないという意味ではなく、生成AIを最初の1歩に選んだ会社では製造が後回しになりやすい、と読むのが正確です。

私は、この4つの数字を「入れる順番の初期値」として使うことをすすめています。総務・管理68.3%、営業・販売・サービス60.3%、経営・企画58.5%、製造・生産34.9%という順は、先に入れた中小企業が結果として選んだ順番です。自社の事情で入れ替える余地はあっても、初期値を持たずに部門ごとの声の大きさで決めるよりは、はるかに議論が進みます。とくに、社長の手元(経営・企画)から入れたい気持ちと、現場の人手不足がきつい製造から入れたい気持ちが社内でぶつかっている会社は、68.3%と34.9%の33.4ポイント差を見てから話し合うと、順番が決まりやすくなります。

導入目的は「業務効率化/作業時間の短縮」87.0%が突出

なぜその部門から入れたのかは、導入の目的に表れます。AIの導入目的(n=331)は「業務効率化/作業時間の短縮」が87.0%で最多、2位の「品質向上」は32.3%でした。1位と2位の差は54.7ポイントです(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。87.0%の会社が、作業時間を縮めるためにAIを入れています。品質を上げるためという会社は32.3%にとどまり、新しい商品やサービスを生むためという動機は、この時点ではまだ中心にありません。

品質向上を目的に挙げた割合を直近3年の売上の推移別に見ると、増収の企業で38.6%、横ばいの企業で29.0%、減収の企業で26.4%と、売上が伸びている会社ほど品質を目的に据える傾向があります(出典:同調査、2026年9月確認)。増収と減収の差は12.2ポイント。作業時間の短縮はどの会社にも共通の入口で、そこから品質の向上へ目的を広げられるかどうかに、業績の差がにじみ出ていると読めます。順番を決めるときに大切なのは、最初の1部門では作業時間の短縮という87.0%の入口に絞り、品質向上や付加価値の創出は2つ目、3つ目の部門で狙う、という段階の分け方です。

効果も同じ順に出る:業務効率化83.2%、人手不足対応33.9%、品質向上30.6%

目的だけでなく、実際に感じている効果も確かめます。AIの導入効果は「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%で最多、次いで「人手不足対応」が33.9%、「品質向上」が30.6%でした(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。目的の87.0%に対して効果は83.2%で、狙った効果がおおむねそのまま出ていることが分かります。目的の2位だった品質向上32.3%は、効果では30.6%と3位に下がり、代わりに人手不足対応33.9%が2位に入っています。狙っていなかった人手不足への効き目が、後から見えてきた形です。

この3つの効果を部門に当てはめると、順番の意味がさらにはっきりします。作業時間の短縮83.2%が最も早く出るのは、定型の文書とやり取りが日々繰り返される総務・管理です。人手不足対応33.9%は、1人が複数の仕事を抱えがちな少人数のバックオフィスと、顧客対応に人が張りつく営業・販売・サービスで意味を持ちます。品質向上30.6%は、提案書の精度や会議資料の質が問われる営業と経営・企画で狙いやすい。つまり、総務・管理から入れると作業時間の短縮という最も出やすい効果を最初に確認でき、その次に営業や経営・企画で人手不足対応と品質向上を積み上げる、という流れが数字から組み立てられます。

付加価値創出はAI22.3%対IT7.4%=約3.0倍。従来のITツールと差が出るのはここ

AIを入れるべきか、これまでどおりのITツールを足せば足りるのか、という比較の問いにも、この調査は材料を出しています。導入効果として「付加価値創出」を挙げた割合は、AIを導入した場合が22.3%、ITを導入した場合が7.4%で、AIがITを約15ポイント上回りました(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。倍率にすると約3.0倍。作業時間の短縮という入口は同じでも、そこから先に生まれるものの量が違う、というのがAIと従来のITの差です。

ただし、22.3%という数字は、83.2%の作業時間の短縮と比べれば小さい。付加価値の創出は、最初の1部門で狙う効果ではなく、順番を決めて2つ目、3つ目の部門へ広げたあとに出てくる効果だと私は考えています。ChatGPTを総務・管理に入れて作業時間の短縮を確かめ、営業で提案書の質を上げ、経営・企画で会議資料の骨子を早く作れるようになったところで、ようやく「この時間で何を新しく始めるか」という付加価値の話が始まる。約3.0倍という差は、その段階まで進めた会社にだけ現れる差です。だからこそ、最初の1部門をどこにするかが、そこへ届くかどうかを左右します。

4部門の比較表|どこから入れると自社のムダが先に減るか

ここまでの数字を、4つの部門ごとに1枚の表に並べます。導入率が高い順に入れれば必ず効くという表ではなく、それぞれの部門でChatGPT型の生成AIが先に触りやすい仕事は何か、先に出やすい効果はどれか、どこで止まりやすいか、そして自前で足りる範囲はどこまでかを、正直に比べるための表です。自社の順番を決めるときは、表の左から右へ読んで、自社の実情と違う行があればそこを書き換えてください。

比較表の読み方:導入率が高い順は「入れやすい順」であって「効く順」ではない

表を読む前に、1つだけ注意があります。業務分野別の導入率は、先に入れた中小企業が結果として選んだ順番であって、効果の大きさの順番ではありません。総務・管理が68.3%で1位なのは、生成AIが文章と資料を得意とし、総務・管理の仕事の大半が文章と資料でできているからで、総務が最もムダを抱えているという意味ではない。製造・生産が34.9%で4位なのも、製造にムダが無いからではなく、生成AI以外の種類のAIが必要になる場面が増えるからです。導入率は「入れやすさ」の物差し、効果の3項目(83.2%・33.9%・30.6%)は「効きやすさ」の物差しとして、別々に見てください。

比較軸 総務・管理部門 営業・販売・サービス部門 経営・企画部門 製造・生産部門
業務分野別の導入率(AI導入企業のうち) 68.3%(1位) 60.3%(2位) 58.5%(3位) 34.9%(4位・1位と33.4ポイント差)
ChatGPT型が先に触りやすい仕事 社内文書の下書き、案内文・通知文、規程やマニュアルの要約、問い合わせへの一次回答 提案書のたたき台、顧客への返信文、商談メモの整理、よくある質問への回答文 会議資料の骨子、中期計画の論点出し、他社情報の要約、アイデア出し 作業手順書の文章化、日報の要約、発注文の下書き(図面・検査・在庫は別の種類のAI)
先に出やすい効果 業務効率化/作業時間の短縮(効果83.2%) 作業時間の短縮と品質向上(30.6%)の両方 品質向上(30.6%)と付加価値創出(AI22.3%) 人手不足対応(33.9%)は狙えるが、生成AI単独では限定的
使う人の裾野 メール・議事録・資料作成の補助47.3%の中心。使う人が最も広い 顧客対応で日々使うため広いが、外に出す文なので確認が要る 社長・役員など使う人が少なく、個人の道具になりやすい 机に向かう時間が短く、使う場面が限られる
止まりやすい点 効果的な活用方法がわからない(懸念の1位)。使い道が個人任せになり、部門の仕組みにならない 社内情報の漏えい等のセキュリティリスク(懸念の2位)。顧客情報の扱いが決まらないと使えない 使う人が1人に寄り、社内に広がらない。方針が決まらないまま試し続ける 生成AI以外のAI(画像認識11.2%・需要予測8.1%・異常検知4.3%)の投資判断が要る
自前・内製で足りる範囲 個人が試す段階は自前で足りる。部門の仕組みにする段階で外の手が要る 返信文の下書きは自前で足りる。顧客情報の線引きは外の目があると早い 社長本人が試す範囲なら自前が最も速い。外に頼む必要は薄い 文章の部分は自前で足りる。現場の機械や在庫にAIを置く段階は専門の相談が要る
従来のITツールとの違いが出るか 出る。文書の「作る」部分はITでは置き換わらなかった 出る。提案書や返信の質はITでは上がらなかった 出やすい。付加価値創出AI22.3%対IT7.4%の差が現れる場所 ITの延長(集計・管理)で足りる部分が残る
入れる順番の初期値 1番目 2番目 3番目(社長個人は並行して可) 4番目(生成AI以外のAIを別に検討)

ここに挙げた数字はいずれも回答した中小企業全体の傾向を示すものであり、個々の会社の状況や、BoostXを含む特定のサービスの効果を証明するものではありません。表の右側3列(止まりやすい点・自前で足りる範囲・順番の初期値)は、調査の数字と生成AIの性質から私が整理した一般的な見立てで、自社の実情に合わせて書き換えることを前提にしています。

総務・管理が1番目になる根拠:導入率68.3%、効果83.2%、使う人47.3%の3つが重なる

総務・管理を1番目に置く根拠は、3つの数字が同じ部門を指しているからです。1つ目は業務分野別の導入率68.3%で、先に入れた中小企業が最も選んだ部門であること。2つ目は導入効果の1位「業務効率化/作業時間の短縮」83.2%で、総務・管理の仕事の大半が定型の文書とやり取りでできており、この効果が最も早く確認できること。3つ目は総務省の白書で「メールや議事録、資料作成等の補助」に生成AIを使う人が47.3%と、使い道の中心がそもそも総務的な仕事にあること(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認/総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月確認)。入れやすさ、効きやすさ、使う人の裾野の3つが、総務・管理で重なります。

総務・管理から入れるもう1つの利点は、失敗したときの傷が浅いことです。営業で顧客への返信文に誤りが混ざれば取引に響き、経営・企画で会議資料の数字を取り違えれば意思決定に響きます。総務・管理の社内文書や案内文の下書きなら、社内の確認で止められる。最初の1部門で「効果的な活用方法がわからない」という懸念の1位を実際に乗り越え、部門の仕組みとして回る形を1つ作ってから、営業と経営・企画へ横に広げる。この順番なら、2番目以降の部門は総務・管理で作った型を持ち込めるので、1番目より短い期間で立ち上がります。

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営業60.3%と経営・企画58.5%の差は1.8ポイント:2番目と3番目を分けるのは「外に出す文かどうか」

営業・販売・サービス60.3%と経営・企画58.5%の差はわずか1.8ポイントで、導入率だけでは2番目と3番目を決められません。分ける物差しは、生成AIが作った文章が社外に出るかどうかです。営業の提案書や顧客への返信文は社外に出るので、顧客情報をどこまで入力してよいかという線引きと、出す前の確認の役割を先に決めておく必要があります。総務省の白書で、日本企業の懸念の2位が「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」だったのは、まさにこの部門で起きる問題です(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月確認)。線引きさえ決まれば、営業は使う人も場面も広いので、総務・管理の次に置く価値があります。

経営・企画は事情が違います。会議資料の骨子や中期計画の論点出しは、使う人が社長と役員の数人に限られ、文章は社内にとどまるので線引きの問題は小さい。その代わり、個人の道具として社長1人が使い続けるだけで、部門や会社の仕組みにならないまま1年が過ぎる、という止まり方をしやすい。表の「自前・内製で足りる範囲」の欄で、経営・企画だけは「社長本人が試す範囲なら自前が最も速い」と書いたのはそのためです。経営・企画は3番目に置きながら、社長個人は1番目の総務・管理と並行して試してよい。ただし、それを会社の順番と混同しないことが要点です。付加価値創出でAIがITを約3.0倍上回った22.3%対7.4%の差が最も現れやすいのもこの部門ですが、それは総務と営業で作業時間の短縮を確かめたあとに来る話です。

製造・生産34.9%を4番目に置く正直な根拠と、自前が勝つ軸

製造・生産を4番目に置くのは、ムダが少ないからでも、AIが効かないからでもありません。生成AIが得意な文章・資料・会話の仕事が、製造の1日の中で占める時間が短いからです。作業手順書の文章化や日報の要約、発注文の下書きといった部分には生成AIがそのまま使えますが、外観検査や不良品の検出には画像認識AI(導入11.2%)、販売・在庫の最適化には需要予測AI(8.1%)、設備の保全には異常検知AI(4.3%)と、別の種類のAIと別の投資判断が要ります(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。ChatGPTの契約を1つ決めれば入る総務・管理と、機械ごとに判断が要る製造・生産では、入れるという言葉の重さが違います。

正直に書いておくと、表の8つの軸のうち、自前が勝つ軸もあります。経営・企画の「社長本人が試す」段階と、製造・生産の「文章の部分だけ生成AIで補う」段階は、外に頼むより自分たちで始めたほうが速く、費用もかかりません。総務・管理でも、個人が試す段階までは自前で十分です。外の手が意味を持つのは、個人の試しを部門の仕組みに変える段階と、生成AI以外のAIを現場に置く段階の2か所に絞られます。私が順番の議論で伝えているのは、4つの部門すべてを外に頼む必要はなく、自前で進める部門と外と組む部門を、この表の「自前・内製で足りる範囲」の行で先に分けておく、ということです。

止まる会社はどこで壁にぶつかるのか?方針未策定が約半数・事例不足83.3%

順番の初期値が分かっても、実際には止まる会社が出ます。この章では、止まる会社がどこに引っかかっているのかを、総務省「令和7年版 情報通信白書」の数字で確かめます。白書は日本・米国・ドイツ・中国の4か国の企業を比べているので、日本の中小企業の立ち位置が相対的に見える資料です。ここで扱うのは方針の有無、中小企業の方針未策定、導入の懸念の順位、期待している影響の4つで、いずれも「順番を決める前に引っかかる場所」を示しています。

方針を定めている企業は49.7%。7.0ポイント増えても他の3か国より低い

生成AIの活用方針として「積極的に活用する方針」または「活用する領域を限定して利用する方針」を定めている日本企業は、2024年度の調査で49.7%でした。2023年度の調査の42.7%から7.0ポイント増えています。ただし、他の3か国と比べると引き続き低い傾向にあります(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月確認)。裏返すと、方針を定めていない側が50.3%で、半数は会社としての方針が無いまま、社員個人の利用55.2%が先に進んでいる。ここが1つ目の引っかかりです。

方針が無い状態で「どの部門から入れるか」を議論しても、議論が着地する場所がありません。積極的に使うのか、領域を限定して使うのかが決まっていなければ、総務・管理から入れるという初期値に対しても「営業のほうが困っている」「社長がまず使うべきだ」という声を退ける根拠が無いからです。7.0ポイントの増加は1年で確かに進んだ数字ですが、49.7%という水準は、中小企業の半分が入口の手前で止まっていることを示しています。順番を決める作業は、方針を決める作業と切り離せません。

中小企業では「方針を明確に定めていない」が約半数

企業の規模別に見ると、引っかかりはさらにはっきりします。白書では、日本の中小企業で「方針を明確に定めていない」との回答が多く、約半数を占めるとされています。白書はこれを「日本の中小企業では大企業と比較して生成AIの活用方針の決定が立ち遅れている状況が見て取れる」と記しています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月確認)。全体で49.7%が方針を定めている一方、中小企業に絞ると約半数が明確に定めていない。大企業には方針を決める部署と人がいて、中小企業にはいない、という構造の差がそのまま出ています。

中小企業で方針が決まらないのは、決める人が本業を抱えているからです。総務の責任者は勤怠と備品と社内文書で1週間が埋まり、営業の責任者は顧客対応で埋まり、社長は資金と人と取引先で埋まっている。方針を書く時間は、誰の1週間にも最初から入っていません。だから約半数が明確に定めていないまま、社員個人の利用だけが進む。順番を決めるために必要なのは、ChatGPTの知識より先に、方針を決める時間と、決めた方針を紙にする役割です。この2つが無い会社では、どの部門から入れるかという議論が、月が変わるたびに最初からやり直しになります。

懸念の1位は「効果的な活用方法がわからない」。2位はセキュリティリスク

生成AIの導入に際しての懸念を、日本企業の回答で多い順に見ると、1位が「効果的な活用方法がわからない」、2位が「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」、3位が「ランニングコストがかかる」、4位が「初期コストがかかる」の順でした(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月確認)。費用よりも、使い方と情報の扱いが先に来ている点が特徴です。ChatGPTの契約そのものは費用の見当がつきやすいのに、使い方が分からず、情報の扱いが決まらないために、契約の手前で止まる。この2つの懸念は、比較表の「止まりやすい点」の行に書いた総務・管理と営業の止まり方と、そのまま対応しています。

懸念の1位が「効果的な活用方法がわからない」であることは、順番の問題として読み替えられます。4つの部門すべてで同時に効果的な使い方を見つけようとすると、どの部門も中途半端になって分からないまま終わる。1つの部門、それも作業時間の短縮83.2%という効果が最も早く出る総務・管理に絞れば、効果的な使い方は1つ見つければよい。懸念の1位を乗り越える最も確かな方法は、使い方の知識を増やすことではなく、使い方を探す範囲を1部門に絞ることだと私は考えています。2位のセキュリティリスクも、社内文書が中心の総務・管理から始めれば、顧客情報を扱う営業より線引きが簡単で、最初の1部門で線を引く練習ができます。

期待している影響は「業務効率化や人員不足の解消」。他の3か国はビジネス拡大を挙げる

生成AIの活用を進めることで自社にどんな影響があるかという問いに、日本で最も多く挙げられたのは「業務効率化や人員不足の解消につながる」でした。他の3か国はビジネスの拡大、新たな顧客の獲得、新たなイノベーションを多く挙げる傾向にあり、4か国のいずれもポジティブな面がネガティブな面(セキュリティリスクの拡大など)より注目されています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月確認)。日本企業は、生成AIを新しい売上を作る道具ではなく、いまの仕事を減らす道具として見ている。中小機構の調査で導入目的の87.0%が「業務効率化/作業時間の短縮」だったことと、同じ方向を向いています。

この傾向は、順番を決めるうえでは追い風です。作業時間の短縮と人手不足への対応を期待するなら、その効果が最も早く出る総務・管理から入れるという初期値は、日本企業の期待とぴったり合っています。一方で、他の3か国がビジネスの拡大やイノベーションを挙げていることは、付加価値創出を効果として挙げた中小企業が22.3%にとどまっていることと重なります。総務・管理で作業時間の短縮を確かめ、営業で顧客対応の質を上げ、経営・企画で新しい論点を出す、という順番を最後まで進めた会社だけが、他の3か国が見ている景色に届く。1番目の部門で止まらずに2番目、3番目へ進めるかどうかが、期待の差を埋める分かれ目になります。

自前で進めるとどこで止まるか|足りないのは事例83.3%

方針を決め、総務・管理から入れると順番を決めたとして、そこから自前で進めた場合にどこで止まるのか。中小機構の調査には、社内の理解度と情報の充足度、そして公的支援へのニーズを聞いた設問があり、止まる場所がそのまま数字になっています。この章では、自前で進めること自体を否定するのではなく、自前で足りる範囲と、資料や調べ物では解けない範囲の境目を、数字で確かめます。

不足している情報の1位は「成功事例や活用事例」83.3%、2位は「ベンダーや製品の選定情報」79.8%

中小機構の調査で「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」という問いに、「あまり当てはまらない」または「全く当てはまらない」と答えた中小企業は計83.3%でした(n=1,635)。およそ5社に4社が、事例の情報が足りないと感じています。「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらない企業も計79.8%(n=1,631)で、こちらも83.3%に近い水準です(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。総務省の白書で懸念の1位が「効果的な活用方法がわからない」だったことと、この83.3%は同じことを別の角度から言っています。使い方が分からないのは、参考にできる事例が手元に無いからです。

自前で進める会社が最初に止まるのは、ここです。ChatGPTを契約し、総務・管理の担当者が試し始めたところまでは進む。しかし、同じ規模の会社の総務がどの文書から手をつけ、どこで人が確認し、どこまで任せているのかという事例が無いので、自社の使い方が合っているのか判断できない。事例の情報が足りない83.3%と、製品を選ぶ情報が足りない79.8%の2つが重なると、担当者は「試してはいるが、これでいいのか分からない」という状態に置かれ、そのまま個人の道具にとどまります。総務・管理68.3%という導入率の裏には、そうやって個人の利用のまま部門の仕組みにならなかった会社も含まれていると読むべきです。

社内の理解は45.1%どまり。旗振りが1人に寄る構造

同じ調査で「社内においてIT・AIの必要性への理解がある」という問いに、「とても当てはまる」または「やや当てはまる」と答えた中小企業は45.1%でした(n=1,638)(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。半数に届いていません。事例の情報が足りない83.3%と社内の理解45.1%を並べると、自前で進める会社の姿が浮かびます。外から事例が入ってこず、社内でも必要性が共有されていない。その中で総務・管理から入れると決めた1人が、事例を探し、方針の案を書き、部門の同僚に使い方を教え、効果を測る役をすべて引き受ける。旗振りが1人に寄るのは、その人が熱心だからではなく、理解のある人が社内に半分もいないという構造の結果です。

1人に寄った旗振りは、その1人の1週間が本業で埋まった時点で止まります。総務の責任者が月末の締めと年度の切り替えを抱えた月、営業の責任者が大口の商談を抱えた月に、順番の議論は先送りになり、先送りが2回続くと議論そのものが消える。方針未策定が約半数、社内の理解が45.1%という2つの数字は、自前で進めるときに旗振りが孤立する確率の高さを示しています。順番を決めるとは、どの部門から入れるかを決めるだけでなく、その順番を守り続ける役割を誰と誰が持つかを決めることでもあります。1人に寄せない設計が、順番そのものと同じくらい重要です。

公的支援へのニーズ5つと、資料では解けない「順番」と「人が判断を持つ範囲」

中小企業が導入を進めるために必要だと答えた公的支援を「必要である」の割合で見ると、導入費用などの助成が77.9%(n=1,628)、導入事例などの情報提供が70.5%(n=1,594)、従業員向けの教育・研修が67.7%(n=1,596)、試行導入などの機会が61.3%(n=1,578)、専門家の派遣や導入相談が59.8%(n=1,591)でした(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月確認)。費用の助成が1位なのは当然として、2位の事例の情報提供70.5%、3位の教育・研修67.7%、4位の試行導入61.3%、5位の専門家の相談59.8%は、いずれも「使い方が分からない」を解くための支援です。5つのうち4つが、お金ではなく、進め方に関わる支援に向いています。

ここで、資料で解けることと解けないことを分けておきます。導入率20.4%、部門別の68.3%から34.9%、効果83.2%、懸念の順位、方針未策定約半数。ここまでの数字は、この記事のような資料を読めば手に入り、順番の初期値も出せます。資料で解けないのは、その初期値を自社の4つの部門に当てはめたときに、どの文書から手をつけ、どこまで生成AIに任せ、どこから人が判断を持つのか、という線引きです。総務・管理の中でも、勤怠の確認と取引先への案内文と社内規程の改定では、任せてよい範囲がまったく違う。この線引きは、業種と社内の体制と扱う情報の種類で変わるため、全体の傾向を示す統計からは導けません。専門家の派遣や導入相談を必要とする企業が59.8%いるのは、この線引きの部分を一緒に決める相手を求めているからだと私は捉えています。順番の初期値を自社に当てはめ、部門ごとの線引きから実装、社内の理解づくりまでを1社で通して進める形は、AIコンサルティングの対象範囲です。資料で初期値をつかんだ先の、自社に固有の線引きを決める段階で、外の目を入れるかどうかを判断してください。

ビフォーアフター:総務・管理の1週間がここまで変わる

ここまでの整理を、少人数のバックオフィスを抱える中小企業の総務・管理の1週間に当てはめて比べます。以下は特定の会社の事例ではなく、公的な調査が示す全体の傾向と、生成AIの性質から組み立てた一般的な比較です。曜日や回数は時間の流れを示すための目安で、効果の大きさや削減の量を示すものではありません。同じ月曜から金曜までを、順番を決める前と決めた後で並べます。

BEFORE

いまの苦しい1週間

月曜の朝、総務の担当者の机には、先週分の勤怠の確認依頼、備品の発注書、取引先への案内文の下書き、社内からの「この書類はどこにありますか」という問い合わせが同時に積み上がります。ChatGPTは以前から担当者が個人で使い始めており、案内文の下書きには使っている。ただし、それを部門の同僚が知っているのは1人だけで、どの文書に使ってよいかの線引きは決まっていません。火曜、営業から提案書のたたき台を頼まれます。顧客名の入った資料をChatGPTに入れてよいのか分からず、結局これまでどおり手で書き始める。懸念の2位「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」が、線引きが無いまま担当者1人の判断に預けられている状態です。

水曜、社長から「うちもAIを入れるべきか。どの部門からがいいか」と聞かれます。担当者は自分が使っている範囲しか知らず、営業や製造でどう効くかは答えられない。事例の情報が足りない83.3%の側に、この会社もいます。木曜、月末の締めが近づき、勤怠の集計と請求のとりまとめで1日が埋まります。ChatGPTを開く時間は無く、開いても何に使えばよいか分からない。懸念の1位「効果的な活用方法がわからない」が、最も忙しい曜日に最も強く出ます。金曜、社長から改めて「来期の会議で方針を出したい。順番を考えておいて」と言われ、担当者は週末に調べる約束をする。ただ、翌週の月曜にはまた同じ机が待っていて、順番の議論は1週間ずつ先送りされます。方針未策定が約半数という数字の中の1社として、この1週間が繰り返されます。

AFTER

順番を決めたあとの1週間

月曜の朝、机の上の仕事の中身は変わっていません。変わったのは、部門として「総務・管理から入れる」と決め、社内文書の下書きと案内文と規程の要約の3つの用途に絞ってChatGPTを使うと方針を紙にしていることです。線引きは、社内にとどまる文書は使ってよく、取引先の名前や取引の条件が入るものは入れない、出す前は担当者ともう1人の2人で確認する、という形で決まっています。担当者は、案内文の下書きをChatGPTに任せ、確認の時間だけを自分で取る。同じ用途を部門の同僚が同じ型で使っているので、聞かれる回数が減っています。

火曜、営業から提案書のたたき台を頼まれます。顧客名の入った資料は入れないという線引きが決まっているので、担当者は顧客名を外した骨子の部分だけをChatGPTで作り、顧客固有の部分は営業が手で足す、という分担で返します。営業は2番目に入れる部門として、総務・管理で作った線引きの型をそのまま持ち込む準備を進めている段階です。水曜、社長から「営業はいつから始めるか」と聞かれ、担当者は比較表の順番と、総務・管理で確かめた作業時間の短縮の実感を根拠に、次の月から営業へ広げると答えられます。事例が社外に無くても、社内に1つ目の事例ができているからです。

木曜、月末の締めは変わらずやってきます。勤怠の集計と請求のとりまとめは人の仕事のままですが、集計後に各部門へ送る確認依頼の文面と、締めの手順の要約はChatGPTの型があるので、担当者は集計そのものに時間を使えます。金曜、社長との短い打ち合わせで、今月使った用途の数と、次の月に営業へ広げる用途を1枚で共有します。方針、線引き、順番、確認の役割が紙になっているので、担当者が休んだ週も、もう1人の確認役が同じ型で回せる。旗振りが1人に寄らない形が、1週間の中に組み込まれています。

違いを生んでいるのはツールではなく入れる順番の設計

BeforeとAfterで、使っているChatGPTも、総務の担当者も、月曜の机の上の仕事も同じです。違うのは、総務・管理から入れると順番を決め、用途を3つに絞り、社内にとどまる文書と外に出る文書の線を引き、確認の役割を2人にした、という設計だけ。Beforeでは担当者の個人の道具だったものが、Afterでは部門の仕組みになり、営業へ持ち込める型になっています。導入率68.3%という数字の中には、Before型のまま個人利用にとどまっている会社と、After型で部門の仕組みにした会社の両方が含まれていて、同じ68.3%の中でも中身は分かれています。順番の設計とは、ChatGPTの使い方を覚えることではなく、どの部門で、どの用途で、どこまで任せ、誰が確認するかを先に決めることです。この設計を1テーマずつ約2〜4週間で実装して定着させ、3ヶ月で3件を積み上げる形で進めるのがAI顧問の進め方で、最初の1テーマを総務・管理の1用途に置くのが順番の初期値と合っています。「うちはまだBefore寄りだ」と感じた方は、次のセクションで、総務・管理の繰り返しの手作業をどこから自動化に置き換えていくかの内容をご覧ください。

よくある質問

Q総務・管理68.3%という数字は、総務の仕事の68.3%がChatGPTで減るという意味ですか?

A違います。68.3%は、AIを導入している中小企業のうち、総務・管理部門で導入していると答えた企業の割合で、業務分野別の導入率です(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月13日確認)。総務の仕事のうち何割が減るかを示す数字ではありません。導入率は「先に入れた中小企業がどの部門を選んだか」を示す物差しで、効果の大きさは別の設問である導入効果(業務効率化/作業時間の短縮83.2%など)で見る必要があります。この2つを混同すると、順番の議論が「総務の7割が消える」という誤った期待から始まってしまうので、社内で数字を共有するときは必ず「部門別の導入率」と添えてください。

Qうちは製造業で、いちばん人手が足りないのは現場です。それでも総務・管理から入れるべきですか?

AChatGPT型の生成AIを最初の1歩にするなら、総務・管理から入れるのが初期値です。製造・生産部門の導入率が34.9%と総務・管理より33.4ポイント低いのは、現場の仕事が図面・検査・在庫のように、画像認識AI(11.2%)や需要予測AI(8.1%)や異常検知AI(4.3%)といった別の種類のAIを必要とする場面が増えるからで、現場にムダが無いからではありません(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月13日確認)。現場の人手不足に対しては、作業手順書の文章化や日報の要約といった文章の部分は生成AIで補いつつ、機械や在庫に置くAIは別の投資判断として切り分けて検討するのが、順番を混乱させない進め方です。総務・管理で確認の型を先に作っておくと、現場に別のAIを入れる段階でも、人が判断を持つ範囲の決め方をそのまま使えます。

Q社長がまず自分でChatGPTを使ってみるのは、順番として間違いですか?

A間違いではありません。経営・企画部門の導入率は58.5%で、営業・販売・サービス60.3%との差は1.8ポイントにとどまり、社長個人が試す範囲なら自前で進めるのが最も速い部門です。気をつけたいのは、社長1人が使い続けることを「会社として入れた」と混同しないことです。総務省の白書では、中小企業で「方針を明確に定めていない」との回答が約半数を占め、導入の懸念の1位は「効果的な活用方法がわからない」でした(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月13日確認)。社長個人の利用と並行して、会社の1番目の部門は総務・管理に置き、用途と線引きと確認の役割を紙にする。社長の試しは3番目の経営・企画の準備として位置づけると、個人の道具で止まらずに済みます。

QChatGPTと、いままでのITツール(会計ソフトや勤怠システム)を足すのとでは、何が違うのですか?

A入口の効果は同じで、その先で差が出ます。中小機構の調査では、導入効果として「付加価値創出」を挙げた割合が、AIを導入した場合22.3%、ITを導入した場合7.4%で、AIがITを約15ポイント、倍率にして約3.0倍上回りました(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月13日確認)。会計ソフトや勤怠システムは、数字を集めて管理する部分を置き換えますが、案内文や提案書や会議資料を「作る」部分はこれまで人の手に残っていました。ChatGPT型の生成AIが先に触るのはその「作る」部分で、比較表の「従来のITツールとの違いが出るか」の行で総務・管理と営業と経営・企画に「出る」と書いたのはそのためです。ただし22.3%は83.2%の作業時間の短縮より小さい水準で、最初の1部門で作業時間の短縮を確かめたあとに現れる差だと考えてください。

まとめ

  • AIを導入している中小企業は20.4%(n=1,647)、検討中18.6%を足して39.0%が前向き。導入済み企業の82.6%が生成AI(ChatGPT型)で、2位の音声認識29.8%と52.8ポイント差。何らかの業務で生成AIを使う人は日本55.2%、メール・議事録・資料作成の補助は47.3%(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月公表、2026年9月13日確認/総務省「令和7年版 情報通信白書」2026年9月13日確認)
  • 業務分野別の導入率は総務・管理68.3%、営業・販売・サービス60.3%、経営・企画58.5%、製造・生産34.9%で、総務と製造の差は33.4ポイント。これは先に入れた中小企業が選んだ順番であり、総務の仕事の68.3%が減るという意味ではない
  • 導入目的は「業務効率化/作業時間の短縮」87.0%、効果も同じ項目が83.2%で最多。人手不足対応33.9%、品質向上30.6%が続き、付加価値創出はAI22.3%対IT7.4%で約3.0倍。入れる順番の初期値は総務・管理→営業→経営・企画→製造・生産で、社長個人の試しと製造の文章の部分は自前で足りる
  • 止まる場所は、活用方針を定めている企業49.7%(2023年度42.7%から7.0ポイント増)で中小企業では「方針を明確に定めていない」が約半数、懸念の1位「効果的な活用方法がわからない」、2位「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」。使い方を探す範囲を1部門に絞ることが懸念の1位を越える近道
  • 自前で進めると、事例の情報不足83.3%(5社に4社)・ベンダー選定情報の不足79.8%・社内の理解45.1%の3つで旗振りが1人に寄る。資料で解けるのは順番の初期値まで、解けないのは自社の部門ごとに「どこまで任せ、どこから人が判断を持つか」の線引き。公的支援ニーズは事例の情報提供70.5%、教育・研修67.7%、試行導入61.3%、専門家の相談59.8%

監修者|生成AIの導入から定着まで伴走する専門家が確認しています

吉元大輝(よしもとひろき)

株式会社BoostX 代表取締役社長

AI顧問・FDE型AI伴走支援・AIエージェント開発など、生成AIの相談から構築・現場定着までを一社で支援。業務可視化から効果測定まで、企業のAI活用を実務レベルで前に進めている。

公開日:2026年9月

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  1. 01

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  2. 02

    投資対効果(ROI)のシミュレーション

  3. 03

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