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社内FAQの作り方|生成AIで「同じ質問」の問い合わせを半減させる方法

公開 2026.03.03 ・ 最終更新 2026.09.29 ・ 読了目安 約15分

たとえば、総務の窓口担当が月曜の朝に、有給の申請方法、経費精算の締め日、来客用Wi-Fiのつなぎ方を、別々の3人からチャットで聞かれたとします。どの答えも就業規則か手順書に書いてあります。それでも毎週、「またこの質問か」と思いながら、同じ答えを打ち直しています。

社内FAQにAIを使うなら、はじめにやるのは質問の仕分けです。届いた質問を記録し、規程に答えが書いてあって誰が答えても同じになる質問だけをAIに下書きさせ、窓口担当が現行の規程と照らしてから置きます。個人の事情、就業規則の解釈、金額の例外、事故の報告の4種は、AIに渡さず人が答えます。以下、仕分け表と工程表で、今週から記録を始めるものと、AIに渡さない質問の線を整理します。

30-SECOND SUMMARY忙しい方へ|この記事の結論
  1. 同じ質問にかかっている時間は、感覚ではなく1週間の記録表で数えます。答える側と聞く側の分を分けて残します
  2. AIに下書きさせるのは、規程に答えがあり誰が答えても同じになる質問だけ。個人の事情・規則の解釈・金額の例外・事故の報告は人が答えます
  3. チャットボットは、テキストのFAQを3か月回して「FAQを開いても見つからない」質問が記録の上位に来てから検討します

「同じ質問に何度も答える」時間は、どう数えればよいか

数えるのは1週間、月曜から金曜の5日間で足ります。窓口に届いた質問を1件1行で記録表に残し、答えるのにかかった分と、根拠にした文書を書いておく。これだけで、どの質問がFAQに載せる候補かが見えてきます。

1週間の記録表に残す6つの欄

記録はスプレッドシート1枚で始められます。欄は次の6つです。

欄 書くこと 書き方の例
受けた日時 質問が届いた日と時刻 9月1日 9時10分
質問者の部署 氏名ではなく部署名だけ 営業部
質問の要旨 1行で。言い回しは質問者のまま 有給って何日前までに出せばいい?
答えた人 窓口の誰が答えたか 総務 A
かかった分 探す時間も含めて、答え終わるまで 6分
根拠にした文書 規程名と条、手順書のページ 就業規則 第20条

氏名を残さないのは、あとでこの記録をAIに読ませて質問を分類するときに、個人が分かる情報を渡さずに済むからです。質問の要旨を質問者の言い回しのまま書くのにも意味があります。「有給」「年休」「休み」のように、同じ質問が別の言葉で届いていることが、記録を並べるとわかります。

答える側の分と、聞く側の分を分けて数える

窓口の記録に残るのは答える側の時間だけです。聞く側は、誰に聞けばよいかを探し、担当者が席を外していれば戻るまで待ち、別の部署へ回されることもあります。この時間は窓口からは見えません。

聞く側の分は、記録を始めた週に5人ほどに「質問しようと思ってから答えが届くまで何分かかったか」を聞けば目安がつきます。仮に答える側が1件6分、聞く側が1件15分で、同じ質問が週に10件あるなら、合わせて週210分です。この数字は計算の型として置いたもので、実際の値は自社の記録で置き換えてください。

1週間分がそろったら、根拠にした文書の欄で並べ替えます。同じ文書の同じ条を根拠に3回以上答えている質問が、FAQに載せる候補の上位です。

社内FAQとは?生成AIで作ると何が変わるのか

社内FAQとは、社員から繰り返し届く質問と、その答え、答えの根拠になる規程や手順書の箇所をひとまとめにした社内向けの文書です。生成AIで変わるのは、下書きを書く手間と、言い回しの違う質問を同じ答えに寄せる手間です。答えが正しいかを確かめる責任は、窓口担当に残ります。

社内FAQと、AIが答える社内ヘルプデスクの違い

令和8年版情報通信白書(2026年7月公表)では、自社の何らかの仕事で生成AIを利用していると答えた日本企業は86.4%でした。仕事の種類別では、議事録・メール作成補助、営業・販売に続き、社内ヘルプデスクで使っている割合が約5割です。社内の質問対応は、生成AIが入りやすい領域の1つになっています。

ただ、社内ヘルプデスクにAIを入れる形は1つではありません。テキストのFAQを人が書き、その下書きにAIを使う形。FAQを読み込ませたチャットボットがAIで直接答える形。始めるなら前者からです。ボットに読ませる中身は、結局テキストのFAQだからです。

AIで変わるのは下書きと言い換え、変わらないのは確認の責任

記録表の質問の要旨をAIに渡して「同じことを聞いている質問をまとめて」と頼めば、「有給」「年休」「休み」の質問が1つに寄ります。規程の該当箇所を渡して「新入社員にも分かる言葉で、3行以内の答えにして」と頼めば、下書きが返ってきます。ここはAIに任せてよい作業です。

一方、同じ白書では、企業が生成AIに懸念するリスクとして「社内情報の漏洩などのセキュリティリスク」が最も多く、次いで「出力結果の精度に問題がある」が挙がっています。FAQの答えが1か所でも古い規程のままなら、読んだ社員はそのとおりに申請して差し戻されます。下書きを現行の規程と照らす工程は、AIを入れても消えません。むしろ、工程として新しく置く必要があります。

FAQ作りが止まるのは、はじめから全部を書こうとするとき

FAQが作られないまま終わるのは、たいてい作る時間が取れないからです。普段の問い合わせに答えながら、質問を洗い出し、答えを書き、体裁を整える。まとまった時間が要るので後回しになります。

もう1つは、100件の質問を網羅しようとして1件も公開できないことです。1週間の記録で上位に来た10件から20件だけを先に置き、残りは記録が増えるたびに足していく方が、窓口の負担は早く軽くなります。

生成AIで社内FAQを作るとき、AIに渡す工程と人が持つ工程

答えは、①質問を記録する→②仕分ける→③AIが下書きする→④窓口担当が現行の規程と照らす→⑤共有の場所に置く→⑥月1回点検する、の順です。AIが受け持つのは③と⑥の一部だけで、②の仕分けと④の照合は人が持ちます。

今の流れを5つの工程に分けると

FAQが無い窓口では、1件の質問が次の5つの工程を通っています。所要は会社ごとに違うため、1週間の記録で測ります。

工程 担当 入力 出力 判断
1. 質問を受ける 窓口担当 チャット・メール・口頭の質問 受け付け 自分の担当か
2. 根拠を探す 窓口担当 就業規則・経費精算規程・手順書 該当の条やページ どの版が現行か
3. 答えを書く 窓口担当 該当箇所 チャットの返信 どこまで書くか
4. 例外を上に回す 窓口担当→上長 規程に書いていない事情 上長の判断 あり
5. 終わる — — 記録は残らない —

時間が消えているのは2と3です。同じ質問でも毎回規程を開き直し、毎回答えを打ち直しています。そして5で記録が残らないため、翌週も同じ2と3を繰り返します。

AIを入れた後の6つの工程

同じ流れを、AIを入れた後の形に書き直すと次のようになります。消えるのは毎回の「根拠を探す」と「答えを打ち直す」で、増えるのは②の仕分けと④の照合です。

社内FAQの6つの工程のうち、AIが受け持つのは下書きと点検の一部で、仕分けと照合と公開は窓口担当が持ち、個人の事情や金額の例外などの質問はAIに渡さず担当者が答える流れ図
AIが入るのは6つのうち2つだけで、仕分けで人の側に回した質問はFAQの流れに乗せません
工程 AIが受け取るもの AIが返すもの 人が確認すること
①質問を記録 — — 窓口担当が記録表に1件1行を残す
②仕分け 氏名を消した質問の要旨 同じ質問のまとまり AIに下書きさせるか、人が答えるかを窓口担当が決める
③下書き 質問と、規程・手順書の該当箇所だけ 3行以内の答えと根拠の箇所 —
④照合 — — 現行版の規程と照らし、例外の書き漏れを直す
⑤公開 — — 置き場所と、答えの末尾の根拠の箇所を確かめる
⑥点検 FAQ全文と、前回の点検以降に変わった規程 古くなった可能性のある項目の候補 持ち主が候補を1件ずつ確かめ、直すか止めるかを決める

AIに下書きさせてよい質問、人が答える質問

②の仕分けの基準は1つです。規程か手順書に答えが書いてあり、誰が答えても同じ答えになるか。当てはまればAIに下書きさせ、当てはまらなければ人が答えます。表の下の4種が、人に残す質問です。

質問の種類 例 行き先 人に残す根拠
手続きの方法 有給の申請手順、会議室の予約 AIに下書き —
締め日・期限 経費精算の締め日、年末調整の提出日 AIに下書き —
社内ツールの使い方 来客用Wi-Fi、共有フォルダの場所 AIに下書き パスワードそのものはFAQに書かない
個人の事情 自分の休職の扱い、給与や評価の個別事情 担当者が答える 個人情報を含み、本人への説明の責任がある
規則の解釈 この場合は残業になるか 担当者が答える 労務の判断で、答えが分かれると会社の責任になる
金額の例外 上限を超える出張費は通るか 担当者が答える 承認の権限を持つ人が決める
事故の報告 ノートPCをなくした、誤送信した 担当者が答える その場で止める対応が要り、FAQを読ませて待たせない

個人の事情が入る質問をAIに渡さないのは、質問の文面そのものが個人情報になるからです。個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認するよう求めています。窓口担当が1人で線を引かず、どの種類の質問をAIに入れないかを管理部門と決めておきます。同じ白書では、不適切な利用を防ぐ取組として全社的な指針やガイドラインを整備していると答えた企業は41.1%でした。社内に指針が無ければ、FAQの前に入力してよい情報の線から決めます。入力してよい情報の決め方は会社の情報を生成AIに入れてよいかを判断するルールの記事にまとめています。

下書きを頼むときにAIへ渡すもの

③で渡すのは、仕分けで「AIに下書き」とした質問と、その答えが書いてある規程・手順書の該当箇所だけです。規程をまるごと渡さないのは、関係のない条から答えを作られるのを防ぐためです。頼み方は次の形で足ります。

次の社内の質問に、下の規程の抜粋だけを根拠にして答えを書いてください。

【答えの形】
・はじめの1文で結論を書く
・手順があるときは3つまでの番号つき
・新入社員にも分かる言葉で、全体を150字以内
・最後に根拠の規程名と条を書く
・抜粋に書いていないことは書かず「担当者に確認」と書く

【質問】(記録表の質問の要旨を貼る)

【規程の抜粋】(該当の条だけを貼る)

抜粋に書いていないことは書かないの1行が効きます。規程に無い答えをAIが補うと、④の照合で見落としたときにそのまま公開されるからです。ChatGPTでもClaudeでもGeminiでも、この形は変わりません。使うツールは、会社が契約していて入力の扱いを確認したものに限ります。

置き場所は、社員が質問する画面の近くに

FAQが読まれるかは、置き場所で決まります。社員が質問を打つ画面から1回で開ける場所に置きます。

置き場所 向いている会社 気をつけること
Googleドキュメント Google Workspaceを使っている 見出しを質問文にしておくと検索で見つかる
Notion すでにNotionで手順書を管理している ページを分けすぎると探せなくなる
Slack・Teamsのピン留め チャットで質問が届く ピンには目次だけ置き、本文は1か所に
Googleスプレッドシート ITツールに慣れていない社員が多い 1行1問にし、根拠の欄を必ず埋める

どこに置いても、本文は1か所にします。同じ答えが2か所にあると、規程が変わったときに片方だけが古いまま残ります。社内の文書が散らばっていて答えの根拠を探すのに時間がかかる場合は、共有ファイルをAIで探しやすくする方法を先に見ておくと、②と③が進めやすくなります。

FAQを「作って終わり」にしない更新の決め方

FAQは置いた日がいちばん新しく、そこから古くなります。更新を続けられるかは、持ち主と点検日、止める条件の3つを先に決めてあるかどうかです。

持ち主を1人決め、点検日を月1回置く

FAQの持ち主は1人にします。2人以上で持つと、誰も直さない項目が出ます。点検は月1回、たとえば毎月第1週の月曜のように日付を決めて置きます。⑥の点検では、FAQ全文と、前回の点検以降に変わった規程や社内ツールをAIに渡し、「古くなった可能性のある項目を挙げて」と頼みます。AIが挙げるのは候補です。直すか止めるかは、持ち主が規程と照らして決めます。

次の社内FAQのうち、下の「前回の点検以降の変更」によって答えが古くなった可能性のある項目を挙げてください。直した文は書かず、項目名と、どの変更に関係するかだけを書いてください。

【前回の点検以降の変更】(例:勤怠の打刻ツールを変えた/出張旅費規程を改定した)

【FAQ全文】(貼る)

直した文をAIに書かせないのは、点検と下書きを1回で済ませると、照合の工程が抜けるからです。候補を挙げるところまでをAIに、直すところは③と④の流れに戻します。

2回聞かれたら追加する

日々の追加は「同じ質問を2回受けたら載せる」と決めておきます。1回なら偶然でも、2回来た質問は次も来ます。記録表の根拠の欄が同じ条で2件そろったら、それが合図です。載せるのは、2件目を受けた日から3日以内を目安にします。

質問が来たときに、FAQの該当項目のリンクで返すことも決めておきます。答えを打ち直さずにリンクを返すことを2〜3週続けると、社員の側に「先にFAQを見る」という手順ができていきます。

就業規則が変わった日は、該当する回答を止める

いちばん危ないのは、規程が改定されたのにFAQが古い答えのまま残っている状態です。規程を改定した日に、その規程を根拠にしているFAQの項目を一覧で出し、照合が終わるまで「改定により確認中・担当者に確認」と表示を切り替えます。照合は改定の施行日より前、遅くとも施行日から5日以内に終えるのが目安です。根拠の欄を必ず埋めておくのは、この一覧をすぐ出すためです。

労働基準法第106条は、就業規則を掲示・備え付け・書面の交付などの方法で労働者に周知させることを使用者に求めています。FAQは就業規則を読みやすくするための案内で、就業規則の代わりにはなりません。FAQの答えの末尾には根拠の条を書き、就業規則そのものの置き場所も示しておきます。更新が止まりがちな会社の手当ては社内の手順書やFAQの更新が続かないときの見直し方で扱っています。

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チャットボットに進むのは、どの条件がそろってからか

テキストのFAQを90日ほど回し、記録表で「FAQを開いたが見つからなかった」質問が上位に来るようになったら、ボットを検討する時期です。それまでは、ボットに読ませる中身を育てている段階だと考えます。

テキストのFAQで足りているうちは、ボットは後でよい

FAQの項目がまだ少なく、目次から探せるうちは、ボットを入れても答えの質は上がりません。ボットが答えるもとは、結局テキストのFAQだからです。中身が薄いままボットを入れると、社員は「聞いても答えが出ない」と感じて、窓口へのチャットに戻ります。

ボットを検討してよい3つの条件

条件 記録表のどこで見るか ボットで変わること
言い回しの違う質問が多い 質問の要旨の欄で、同じ根拠に別の言葉の質問が並ぶ 質問の言い方が違っても同じ項目に案内できる
見つからないという質問が増えた 「FAQにあったが見つからなかった」の件数 目次をたどらずに答えに届く
窓口の時間外の質問がある 受けた日時の欄で、夜間や休日の件数 窓口が閉まっている時間も手続きの案内ができる

3つのうち2つ以上が当てはまるなら、ボットの費用と比べてみる価値があります。ボットの費用の見方は社内FAQボットにかかる費用と見落としやすい点の記事にまとめています。

決めきれない点:人事・労務の質問をボットに入れるか

手続きの方法だけなら、人事・労務の質問もボットに入れられます。ただ、有給の申請手順を聞いた社員が、続けて「自分の場合は何日残っているか」を打ち込むことは十分に起こります。その時点で、質問は個人の事情に変わります。人事・労務の項目をボットに入れるか、入れるならどの言葉が来たら担当者へ回すかは、会社の規模と窓口の体制で答えが分かれます。窓口担当だけで決めず、管理部門と一緒に決めるのが現実的だと考えています。

社内だけで進めると止まりやすい境目

社内だけで進めて詰まりやすいのは2つの場面です。記録表の質問が部署ごとにばらばらで、どれから載せるか決まらないとき。個人情報が入る質問の線を、社内で判断できる人がいないとき。どちらかに当たるなら、外部の専門家と一緒に仕分けの基準を決める方が早く進みます。社内の文書をAIで検索できるようにする段階で何が難しくなるかは社内のナレッジ検索をAIで内製するときの限界で扱っています。

ビフォーアフター:質問の記録を始める前と、3か月後の窓口

記録を始める前:答えをその都度打ち直している

  • 同じ質問に何分使っているか、誰も数えていない
  • 答えの根拠を毎回規程から探し直している
  • 規程が変わっても、古い答えを覚えている人がそのまま答えている

3か月後:記録と仕分けと持ち主がある

  • 1週間ごとの記録表で、上位の質問と根拠の条が分かる
  • AIに下書きさせる質問と、人が答える質問の線が決まっている
  • 規程を改定した日に、該当するFAQの項目を止めて確かめている

窓口の手元に残る違いは、AIの答えの上手さではありません。質問の記録と、人に残す線と、止める条件です。新しく入った社員の受け入れにFAQを使う場合は、新人の受け入れで社内の知識をAIで引き継ぐ方法も参考になります。

この記事のまとめ

  • 今週やるのは、窓口に届いた質問を6つの欄の記録表に残し始めることです。1週間後に、根拠の条が3回以上重なった質問から仕分け表に当てはめます
  • 3か月後に見る数字は、FAQのリンクで返せた件数と、「見つからなかった」と言われた件数の2つです。後者が上位に来たら、ボットの検討に進みます

社内の知識をAIで整える全体像は、生成AIで社内のナレッジと情報共有を整える方法にまとめています。

監修者|生成AIの導入から定着まで伴走する専門家が確認しています

吉元大輝(よしもとひろき)

株式会社BoostX 代表取締役社長

AI顧問・FDE型AI伴走支援・AIエージェント開発など、生成AIの相談から構築・現場定着までを一社で支援。業務可視化から効果測定まで、企業のAI活用を実務レベルで前に進めている。

2026年9月

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